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国交省、積算方法を見直し2016.3.21

交通誘導警備員の費用

国土交通省は3月14日、4月から同省発注の直轄工事で、交通誘導警備員の費用積算方法を見直すことを明らかにした。これまで同警備員は「共通仮設費」として計上・積算していたが、実態とかい離していることから、他の建設業職種と同様「直接工事費」に計上する。警備会社は今後、ゼネコンに対して社保加入のための法定福利費などを加えた“適正料金”が求めやすくなる。

現行より1割増し

今回の積算基準の見直しは、平成26年6月に公布・施行された改正公共工事品質確保法(品確法)を受けたもの。同法の基本理念や発注者責任を果たすため、受注者が品質確保や担い手の中長期的な育成・確保に必要な適正な利潤が確保できるよう、市場の実態を的確に反映した予定価格を正しく設定するための「土木工事標準積算基準」を改定する中で実現した。

現行の公共工事の工事費積算では、交通誘導警備員に要する費用については、「工事施工に共通的な経費」と見なされ、現場周囲を取り囲む“仮囲い”や“安全標識”などと同じ「共通仮設費」の積み上げ分として計上、積算されてきた。

しかし、以前から実態とのかい離があることが、行政内部やゼネコンなどからも指摘されていた。また、「警備業の更なる発展を応援する議員連盟(警議連)」でも、竹本直一会長や他のメンバーが「警備員がカラーコーンなどと同じ“共通仮設”なのはおかしい」と指摘するなど、同省に見直しを求めていた。

これらの声を受け同省は、交通誘導警備員を大工や左官など建設工事関連職種と同様の扱いである「直接工事費」として計上、積算することとした。

具体的には、現行の警備員への支払い対象額は、交通誘導警備員の人件費(公共工事設計労務単価)に現場管理費を加えた額だった。今後は交通誘導警備員の人件費(公共工事設計労務単価)+共通仮設費+現場管理費の合計が支払い対象額となる。

同省の試算では、約2億円の工事で、交通誘導警備員1人当たりの支払い対象額は、現行額の約1割増しの額となる。

また、同省は近年、社会保険への加入促進を図るため、毎年度の公共工事設計労務単価の公表の際、同単価に法定福利費の事業主負担額などの必要経費を加えた単価を“参考値”として明示してきた。現行の積算方法では、必要経費を単純に現場管理費として加えても、参考値には満たない場合もあった。新たな積算方法では、交通誘導警備員人件費(公共工事設計労務単価)に共通仮設費と現場管理費を単純に加えただけで、参考値と同等か、それ以上の単価となる。

つまり、元請建設会社(ゼネコン)は今後、工事費の中にこれまで積算していた額以上の警備料金の確保が容易になる。これにより、警備会社が社保加入のための法定福利費などを盛り込んだ見積書を提出した際、たびたび言われてきた「予算がない」が通用しなくなる。警備会社にとっても、適正な警備料金の提示や確保が行いやすくなる。

同省は、年度内に地方整備局ごとに発注関係機関や建設業界向けの説明会を実施。同積算基準の見直しを、入札書提出期限日が4月1日以降に設定されている工事から適用する。さらに、同省は県など地方公共団体にも同措置を周知することから、県単位では早ければ7月頃には同様の扱いが行われる見込みだ。

熱中症 厚労省が異例の早期通達2016.3.11

警備業を対策重点業種に

厚生労働省は2月29日、熱中症による死亡者が昨年大幅に増加した警備業と建設業を「熱中症予防対策重点業種」に指定した。同日付けで屋外作業での留意点を全国警備業協会(青山幸恭会長)などに通達した。例年、熱中症対策について同省は、前年の労働災害統計がまとまる5月前後に予防対策を示していたが、今回は異例の2月となった。同通達を受けて今後、全国の労働局や労働基準監督署は、警備業や建設業に対する指導・監督を強化する見込みだ。

労働衛生教育も求める

昨年、全国で仕事中に熱中症を発症し、4日以上の休業や死亡した人は463人(今年1月末時点の速報値)。平成22年の656人をピークに、その後も400~500人台の高止まりで推移している。

死亡者数は22年の47人をピークに減少しているものの、27年は前年の12人から32人に大幅に増加。過去10年間で2番目に多くなった。特に警備業の死傷者が20人から40人、死亡者が0人から7人と急増したことを、同省は重視している。

このため同省は、警備業(建設現場で行う交通誘導警備業務)を、建設業と同様に熱中症予防対策の“重点業種”に指定、予防対策の徹底を求めた。

予防対策は、同省が平成21年に示した「職場における熱中症の予防について」を基本とするが、屋外作業で特に留意すべき点として次の事項を示した。

▽WBGT値の活用

WBGT値とは湿球黒球温度のことで、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数。通販などで手にできる専用測定器で計測できる。熱中症予防には、この値が基準値(有害な影響を受けないレベル)を超えないようにすることが有効だ。

通達は、同値を測定器以外で求める方法として、予測値や実況値などの情報提供を行う環境省の「熱中症予防情報サイト」を示した。また、直射日光が当たる場所や地面に敷かれた鉄板やコンクリートなどから照り返しのある場所などでは、公表されたWBGT値が実際の値より高くなる恐れがあるため、そのような場所で同値を活用する場合には「安全側に評価する」などの配慮が必要だとした。

さらに、測定器の中には“黒球”が付いていない測定精度の低いものもあることから、黒球付きの適正な測定器使用を求めた。

▽作業の際の留意点

建設現場で元請が整備した休憩場所を借用する場合は、その旨を警備員に明確に伝達し、必要な休憩が確実に取れるよう配慮する。

熱への慣れ(順化)の有無が熱中症の発症に影響するため、高温多湿作業場所での業務に警備員を従事させる場合、同警備員の熱への順化の有無を確認する。

尿の回数が少ない、尿の色が普段より濃い状態は、体内の水分が不足している可能性があることから、水分と塩分の摂取を求め、その状況を確認する。その際、トイレに行きにくいことを理由に水分を控えることがないよう、トイレに行きやすい環境づくりに努める。

▽適正な健康管理

健康診断結果を元に、適正配置を行う。糖尿病など熱中症の発症に影響を与える恐れのある持病を持つ従業員については、産業医などに配慮事項について意見を求める。

帰宅途上や帰宅後に死亡した事例もあることから、作業終了後に体温測定し、必要に応じて水分摂取や濡れタオルで体温を下げる。平熱まで下がるまでは、1人にしない。

▽労働衛生教育

従業員に対して熱中症の危険性などの労働衛生教育が実施されるよう、管理監督者を対象に教育する。同教育を受けた管理監督者は、従業員の雇い入れ時や日々の朝礼時などに繰り返し教育し、従業員と管理監督者双方の自覚を促す。

広島警協も県警と協定2016.3.1

ドラレコ情報を提供

広島県警備業協会(橋本満会長)は2月19日、広島県警(宮園司史本部長)と「犯罪の起きにくい社会づくりの推進に関する協定」を締結した。平成19年に取り交わした「地域の安全を見守る活動の推進に関する覚書」を発展させ、事件や事故の早期解決を図るため、警協会員事業者が保有するドライブ・レコーダー(ドラレコ)のデータの提供などを追加した。

広がる連携 全国で13番目

県警協と県警との協定締結は、全国で13番目となる。

同協会は平成19年の覚書に基づき、安全パトロールや子ども見守り活動などを行ってきた。新たな協定は、事件や事故の早期解決を図るため、同覚書に広島警協会員事業者が保有するドライブ・レコーダーの記録データの提供などを追加した。昨年6月、同協会が県警に提案していた。

この新たな取り組みは、県警の生活安全部はもとより、刑事部や交通部などの複数の部署も関係することから、警協と県警本部長が交わす“協定”に格上げされた。

また、ドラレコのデータの提供に当たっては、個人情報の漏えいや目的外使用の制限など適正かつ円滑な運用を図るために、県警が提供対象罪種の限定や対応窓口を県警本部主管課に一元化することなどを定めた「運用要領」を策定した。

同協会は、昨年6月の県警への提案を受け、9月に開催した理事会では会員業務車両へのドラレコ設置促進を決議した。ドラレコ販売業者などと連携も強化し、安価でのドラレコ設置を実現するなど、協会を挙げて設置促進に取り組んできた。

「ドラレコを設置した会員からは、<自社の交通事故防止にも役立つ。付けてよかった>といった声が寄せられてきている。犯罪抑止、安全運転、交通事故発生時の適正処理など一石二鳥どころか一石三鳥も期待できる」と加藤博時専務理事は指摘する。

今後、同協会は協定に基づき、会員の業務用車両に設置された410台のドラレコで、県内の安全安心を支えていくこととなる。

橋本会長の話

最近の治安情勢を踏まえ、業務を通じてお役に立ちたいとの思いから協定の締結を提案させていただいた。協定締結で、改めて生活安全産業としての重要な役割と使命を担っていることを自覚し、微力ながら犯罪の起こりにくい社会づくりに貢献したい。