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災害時に避難所警備2022.04.21

愛知警協 三河支部が市と協定

愛知県警備業協会(小塚喜城会長)の三河支部(藤木厚成支部長=シーマ・ガード)は4月8日、岡崎市(中根康浩市長)と災害時に避難所を警備する協定を締結した。全国警備業協会によれば、警協が都道府県などの自治体や警察本部と各種協定を結ぶ例は多いが、警協支部が自治体と協定を結ぶのは全国でも初めてだという。

三河支部が岡崎市と結んだ「災害時の避難所等における警備業務に関する協定」は、市内で自然災害や大規模事故などが発生して避難所が開設された際、市からの要請に基づき支部が避難所の警備を行うというもの。同支部が窓口となり警備業務を請け負うことのできる支部加盟社を取りまとめる。

三河支部は、岡崎市をはじめ県東部の豊田市や豊橋市、刈谷市など多くの地域がエリア。市内の警備会社だけで対応できない時は、支部所属の近隣地域の警備会社からの応援も可能だ。

避難所の警備業務は有償で、夜勤や宿直などを含む警備員の派遣に要する費用などの警備料金は、通常の警備業務に伴う適正な賃金を基礎とし、市と支部が協議して決定する。また、警備員が携行した資機材などを使用した場合は実費を市が負担する。

万が一、警備業務中に警備員が受傷した際は、各社の労災保険で補償するが、業務が災害救助法や市消防団員公務災害補償条例に規定されるものだった場合は市が補償する。

また、市が行う防災訓練への参加要請があった際は、支部が加盟社の業務に支障のない範囲で参加、協力する。

中根岡崎市長の話 警備業界の団体と協定を結べたことを大変ありがたく思っている。発災直後の避難所は不安感や興奮状態で、住民にとって、そこに制服を着た警備員が居ていただけると大変心強い。

藤木三河支部長の話 県内自治体の中で先駆けて協定を締結できたことを大変誇りに思う。三河支部は110社からなる警備会社で安心安全を社会に提供している。警備業協会は県警との間で災害支援協定を締結しているが、今回の協定でさらに具体的な内容でより専門的な力を発揮できるものと考えている。今後は市と細かな連携を図りながら、緊張感と高い使命感をもって日々の業務を遂行してまいります。

全警協、ガイドライン改定へ2022.04.11

高齢者雇用・活躍推進図る

全国警備業協会(中山泰男会長)は2022年度から2年間をかけて、高齢者の雇用や活躍推進に向けた「ガイドライン」を作成する。厚生労働省所管の独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」(千葉市美浜区、湯浅善樹理事長)が行う「産業別高齢者雇用推進事業」を受託したもので、高齢者が働きやすい警備業の実現に向けた活用が期待される。

全警協は09年度から2年間、同機構の協力を得て10年に「警備業高齢者雇用推進ガイドライン」(旧ガイドライン)を作成した。今回の事業受託は同ガイドラインの改訂を行うのが大きな目的だ。

旧ガイドラインでは、警備業において高齢者が第一線で働き続けられる環境づくりを行う際の人事担当者の手引きとなるよう、(1)中高年者の採用、再雇用時のポイント(2)高齢者の仕事内容、勤務形態(3)高齢者のモチベーションの維持策(4)就労にあたっての留意点――の4つの具体的な対応策を提案した。新ガイドラインでは、旧ガイドライン以降見直された高齢者雇用に関する関係法令や助成制度をはじめ、新たな知見などを反映させるものとみられる。

新しいガイドライン作成に当たり全警協は、同機構紹介の学識経験者・えびすすみ立正大学教授を座長、労務委員会(佐々木誠委員長=東京、セシム)を委員とする「推進委員会」を設置する。また、同事業ではシンクタンクの活用が認められていることから、日本能率協会を母体とする日本能率協会総合研究所(東京都港区、譲原正昭社長)をシンクタンクとして選定する。

全警協は今後、年5回程度の頻度で委員会を開催。初年度は加盟社に対して高齢者雇用や活用に関するアンケートやヒアリングなどの実態調査を行う。次年度は実態調査に基づくガイドラインを作成し、12月頃からは普及や啓発のための講演会などを予定している。作成に要する経費は、同機構からの年間最大1000万円(2年間で最大2000万円)の補助金を充てる。

「警備員の監視が不十分」2022.04.01

地裁、市に損害賠償命じる

マラソン大会に出場した女性が「岸壁から海に転落して死亡したのは市の責任」とした3月4日の静岡地裁(増田吉則裁判長)の判決を不服とし、静岡県焼津市(中野弘道市長)は3月18日、東京高裁に控訴した。「警備員の監視が不十分」として市側に損害賠償を命じた判決で、今後の警備業務への影響が懸念される。本紙・紙面向上委員で元神奈川県警備業協会専務理事の早川正行氏は、判決が前提とする「100%の注意力で警備員が岸壁を絶えず注視する義務には無理がある」としている。

死亡した女性が参加したのは、2014年に行われた「第29回焼津みなとマラソン」の約2500人が参加した「女子29歳以下、5キロメートルコース部門」。ゴール後に気分が悪くなって嘔吐(おうと)、知人と近くの漁協事務所脇で休憩していた。しかし、急に立ち上がった女性は知人の声掛けにも答えず、岸壁とは反対のマラソンコースに向けて走り出したまま姿を消した。

その後、参加者から「海に人がいる」と通報を受けた市職員が消防と救急を手配して女性を救助。しかし、女性は低酸素性脳症による意識障害で3年間意識が戻らず、2017年に敗血症で亡くなった。このため女性の遺族は「海に転落したのは警備を怠ったため」と、警備を委託した主催者に損害賠償を求め訴えていた。

大会を主催した市とNPO法人市スポーツ協会でつくる実行委員会が市内の警備会社に委託した業務は交通誘導と岸壁からの転落防止対策。警備会社は30人の警備員を会場に派遣し、そのうち15人が岸壁付近の転落防止対策を含む警備業務に就いた。

一方、当日の会場周辺には参加者と付き添いなど約2万人が集まり、立ち入り禁止区域に進入しようとする人なども多かったため、警備員はこれらの人たちに制止を呼び掛けるなど本来の警備業務以外の対応にも追われていた。

静岡地裁は、女性の移動経路は不明としつつも、ゴール直後に嘔吐(おうと)していた状況を理由に「人気のない岸壁方面に向かい何らかのきっかけで海に転落したと合理的に推認できる」とした。

そのうえで、警備員の配置場所から岸壁まで視界を遮るものはなかったにもかかわらず女性が岸壁に近づくのを発見できずに転落を防げなかったのは「監視が不十分だった」と指摘。警備会社を指揮監督する立場の実行委員会に損害賠償責任があると判断した。

同市は「女性が海に落ちた場面を誰も見ておらず、警察も特定できていない。転落の予見は不可能とした主張が法廷で認められなかった」とし、高裁でも同じ主張を続ける意向だ。

大会の警備を行った警備会社は「女性が転落したとされる漁港付近は大型船が何艘も停泊し、対岸が見えないほど広い。『監視不十分』とした地裁の判断が高裁でも維持された場合、イベント警備などとても請け負えない」とコメントしている。

実行委に過失ない

本紙・紙面向上委 早川正行氏

判決は、実行委員会の過失は岸壁から海への転落防止が不十分であるとしており、その根拠は、警備員の位置から岸壁は視界を遮るものがないため周囲の監視が不十分と認定している。

これは、岸壁を100%の注意力を持って絶えず注視する義務を前提としており無理がある。警備員の実際の業務は会場の交通誘導も兼ねており、岸壁からの転落防止だけではない。

この種の警備は、大会の安全を図るためいくつかの業務を兼ねるのが普通で、大会中は会場の交通誘導を重視する必要がある。

本件は、周囲の人も溺れるまで気づかなかった極めて特異なケースで、気の毒だが死亡者の過失が大きい。実行委員会に過失責任を負わせるべきではない。