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警備業ヒューマン・インタビュー2026.01.21

多田大輔さん(アイビックス 敦賀支店)

家出少年と対話、心開く

アイビックス敦賀支店で機械警備業務に従事している多田大輔さんは、2025年5月12日午前0時15分ごろ、福井県内の鉄道駅待合室からの侵入警報を受信した。現場に急行すると、待合室内で寝ている少年を発見。声を掛け話を続けていると、少年から「家出をしてきた」ことを聞き出した。そのまま放置すると犯罪や事故に巻き込まれたり行方不明となる可能性があるため、警察署まで同行して無事に引き渡した。

<<真夜中に駅待合室からの侵入警報を受けました>>

私は鉄道駅に到着後、駅舎の外から待合室を確認し、椅子に座りうずくまって眠っている男性を見つけました。

機械警備業務に従事して約12年になりますが、これまで侵入者と対峙した経験はありません。十分注意を払いながら駅舎に入り男性に声を掛けました。目を覚まして身体を起こしたので顔を確認すると、まだ十代ぐらいの少年でした。私は駅舎の外に彼を連れ出し、話を聞くことにしました。

「どのような手段で駅まで来たのか、自宅は近所なのか」を尋ねると、「ここまで自転車で来ました。家はすぐ近くです」とのこと。少年が「自宅に帰ります」と言うので一旦別れたのですが、距離をとって観察していると、自転車置場には行かずに再び駅構内に戻っていきます。5分ほど経って様子を見に行ったところ、今度はホームのベンチで寝ていました。

<<何か理由がありそうですね>>

私は少年に近づいて、もう一度声掛けしました。心を開いて理由を話してもらえるように、優しい口調を心掛けました。

粘り強く対話を続けると、少年は高校生で、家出してきたことを話してくれました。気持ちが高揚してきたのか家出をした経緯なども語り始めましたが、家族が心配していると思い帰宅させることにしました。

少年は所持金がほとんどないようで、足を引きずっており歩行が困難な様子でした。小さい駅で周囲に街灯もほとんどなく、雨が降ってきたことから、敦賀支店に連絡して自宅まで業務車両で送っていくことにしました。

少年の話では「自宅は近所」とのことでしたが、実は県外の石川県に住んでいることを打ち明けました。自転車を漕いできたが途中で乗り捨て、足が痛くなるほど歩き、疲れて駅舎で休んでいたことがわかりました。話しているうちに少年は長い間不登校であることもわかったのです。

私は警察への引き渡しが必要と判断し、警察を呼ぼうと思いましたが、「パトカーに乗るのは嫌です」と言うので、敦賀支店に連絡してから私が福井県警敦賀警察署に同行し、保護してもらいました。

<<全警協警備員表彰のほかに、敦賀警察署長からも6月に感謝状が贈られました>>

警察署長からは「少年に寄り添った適切な対応を行って警察署まで同行していただき、犯罪や事故に巻き込まれることなく保護することができました。引き続き警察活動への協力をお願いします」と有り難い言葉がありました。6月には当社社長からも表彰いただきました。

このあたりの地域は住人が少なく家出の事案はほとんどないため、両親や職場の仲間からは異口同音に「珍しい事案だね」と言われました。3回も表彰していただきましたが、私は警備員として普通の対処をしただけで、特別のことをしたとは思っていません。

私が気を配ったのは、「どういう接し方をすれば心を開いてくれるか」ということでした。今回の事案での向き合い方や話し掛けがベストだったか、しばらく自問自答を繰り返しました。

<<多田さんが警備の仕事を選んだ理由は何でしょう>>

高校を卒業するにあたり、警備の仕事に漠然とした憧れがありました。「制服の力」も大きかったように思います。

今後の目標として心掛けているのは「お客さまから信頼感を得ること」、私がそうだったように「子供や若い人から格好いいと思われる警備員になること」の2点です。どちらも警備の質はもちろん、所作や外観など警備員として全ての要素が求められます。

<<休日はどのように過ごしていますか>>

緊張感を伴う業務なので、休日はゆっくり過ごすことが多いです。楽しみを強いて挙げれば、気ままなウインドーショッピングでしょうか。