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視点

災害支援2025.09.01

被災地ある警備ニーズ

9月1日は「防災の日」。自然災害が頻発化・激甚化するなか、警備業はどのように災害と向き合い、被災地に安全・安心を提供していけばいいのか――。

今年7月、「災害対策基本法」が改正された。昨年の能登半島地震の教訓を踏まえ、ボランティア団体の登録制度の創設などが盛り込まれた。同法は警備業界とも関わりがある。都道府県警備業協会が自治体や都道府県警察と締結している災害時支援に関する協定では「災害の定義」を「災害対策基本法が定める災害で、甲(警察本部・自治体)が協力を必要とする災害」などと定めている。

ただ、「災害の定義」にある通り、必要とされなければ支援の機会は訪れない。過去、協定に基づく支援活動を行ったことがある都道府県警協は4警協のみ。昨年、地震と豪雨災害に見舞われた石川県でも、県と協定を結んでいる石川警協に要請はなかった。

しかし、協定の相手方の要請はなくとも被災地には発災初期から警備ニーズは存在する。地震発生後、石川警協は七尾市から避難所の夜間パトロールの要請を受けた。中部3警協(愛知・岐阜・三重)の有志が駆け付け、1月6日から7日間、無償で警戒にあたった。

活動を通じ課題も見つかった。有志は車両とともに青色回転灯も持ち込んだが、登録した活動地域以外では法律上、青色防犯パトロール(青パト)活動はできない。避難所前に停車して点灯させることしか認められなかった。

全国から応援に駆け付けた警察も発災初期は人命救助が優先で、広範囲のパトロールに手が回らない状況も想定される。地元の警備会社や青パト団体も被災している恐れもある。他県から駆け付けた警備業者がいち早く被災住民の不安を取り除くことができるかもしれない。

複数の警協では現在、協定の見直しを進めている。相手方を警察のみから自治体を追加または変更、支援内容の明確化や、出動警備員の安全や補償の明記など、実効性を高めていく流れだ。

一方、近い将来発生が懸念される南海トラフ地震に代表される大規模な災害では、広域的な支援は不可欠だ。被災自治体の警備ニーズに応えるため、協定の見直しと併せて、全国の警備業が速やかに活動できるよう、柔軟に運用できるルール整備が進むことを願っている。

【木村啓司】