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「知」に備えあれば憂いなし

潮田道夫の複眼時評

潮田道夫 プロフィール
東京大学経済学部卒、毎日新聞社に入社。経済部記者、ワシントン特派員、経済部長、論説委員長などを歴任し退社。現在、毎日新聞客員論説委員。内外の諸問題を軽妙な筆致で考察する「名うてのコラムニスト」として知られています。著書に「不機嫌なアメリカ人」(日本評論社刊)、「追いやられる日本」(毎日新聞社刊)など。

ChatGPTと対話してみた
-「世の中が変わる」を実感-2023.03.01

「意識高い系」の人々の間で、いま話題沸騰なのが対話型の人工知能(AI)だ。質問を投げかければ専門家並みの回答が返ってくる「Chat(チャット)GPT」の颯爽たるデビューである。米国のベンチャー、Open(オープン)AIの開発。マイクロ・ソフト社が巨額の資金で傘下に収めた。猛烈な勢いでユーザーが広がっている。

ネット検索の世界ではグーグルがシェア90%と一人勝ちだ。読者も多分、グーグルのユーザーだろう。しかし、このChatGPTを使えばいちいちGoogle検索する必要がなくなる。つまりネット検索におけるグーグルの牙城が揺らぐ可能性が出てきた。

グーグルも座視できず同様の対話型AIサービス「Bard」を2月7日に市場投入した。ただし、これはまだごく一部の人にしか使えない。ネット世界の2大巨人の覇権争いに注目が集まっているわけである。

しかし、この対話型人工知能は実用化がスタートしたばかりだ。それをどう使うか、どんなビジネスが展開できるか、それはこれからだ。ともあれ、読者の皆さんもまだ使っていないなら、試してみてください。非常に面白い。ハマってしまった。

ネット検索すれば始め方はすぐわかる。また、YouTubeでも実演している。ChatGPTと打ち込んでホームページに行き、登録すればすぐ使えるようになる。ホームページは英語で作成されているが、画面下の質問欄に日本語で質問を打ち込めば日本語で答えが返ってくる。

どんな質問がいいだろう。実際にやってみた。

質問「警備業界の将来性は?」

回答「警備業界は、社会の安全・安心を守る重要な役割を果たしているため、今後も需要が高く、安定した発展が見込まれています。特に、高齢化や少子化が進む日本において、人手不足や治安維持など、様々な課題があります。そのため、警備業界は、公共施設や商業施設、イベント会場などでの警備員の需要が高まっています。また、新型コロナウイルスの影響によって、感染対策を含めた警備ニーズの拡大が見込まれています。さらに、近年はAI技術やロボット技術の進化により、警備業務の自動化や効率化が進んでいます。これにより、警備業界はより高度な業務にシフトすることができ、より高い付加価値を提供することが可能になるでしょう。以上のような要因から、警備業界の将来性は高く、今後も発展が期待されています」

おお、前途洋々。警備業界の人材不足への対策も聞いてみた。5項目のもっともな提案があったが、長くなるので省略。自分でどうぞ。

学校教育にも使える。試験問題の作成に使っている先生もいる。逆に学生にとって、ChatGPTを使えば立派なレポートが瞬時に完成する。多くの学校が使用禁止にしているのは当然だ。英語でも理科でも社会でも、疑問点を根掘り葉掘りしつこく質せる。家庭教師はいらない。

マイクロソフトのポータルサイトBingではさらに人間っぽい対話型AIサービスが始まったが、申し込み殺到で私はまだ待機中だ。

しかし、便利だが限界はある。まず、間違いが少なくない。潮田道夫と打ち込んでどういう人物か聞くと「潮田道夫(うしおだ みちお)は、日本の社会学者であり東京大学名誉教授です。1949年に生まれ、東京大学大学院に進学し、社会学を専攻しました。その後(中略)同大学経済学部教授などを歴任しました」

デタラメである。正しいのは名前の読み方だけ。東大の名誉教授リストに潮田道夫は載っていないと文句を言ったら「すみません」と謝ったから、まあいいか。また「私たちAIは、政治的・軍事的問題に関する回答を避けるようにプログラムされています」ということだから限界はある。

そして進歩は危険と隣り合わせ。これを使って巧妙な詐欺を思い付く奴もいるだろう。とは言うものの、これは面白い。部下にやらせておくだけでなく、社長さんも自ら試すべし。