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クローズUP

全警協、時間外労働の上限規制で
柔軟運用を政府に要請2017.5.1

全国警備業協会の青山幸恭会長は4月19日、官邸に菅義偉内閣官房長官を訪ね、政府の働き方実現会議が3月末に取りまとめた“時間外労働の上限規制”などを内容とする「働き方改革実行計画」について、警備業に対する柔軟な運用を政府に要請した。

青山会長は、安倍晋三首相宛ての要請書を手に菅官房長官を訪ねた(福島克臣専務理事と小澤祥一朗総務課長が同行)。

同会長は、「実行計画」の柱のひとつである〈罰則付きの時間外労働の上限規制の導入〉が、東京五輪を控えて関連工事の急ピッチな施工が見込まれる建設事業については、適用が5年間猶予されるという特例的な扱いとなったこと受け、建設工事に付随し“不可分一体”である交通誘導警備業務についても、建設事業と同様の扱いとすることを求めた。

また、現行の労働基準法では、突発的な事故や事前に予測できない災害などへの対応について、同第33条で労働時間を延長することが認められている。実行計画では、これに「サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応」などが含まれることを解釈上明確化するとしている。

これに関して青山会長は、大規模なシステム障害時には機械警備対処員が、災害時には雑踏警備員や交通誘導警備員が、大量に長時間で事態に対応することが予想されることから、労基法第33条の運用に際しては警備業に特段の配慮を求めた。

これに対して菅官房長官は、建設工事に警備業が不可欠なことを再認識、要請に一定の理解を示した。

働き方改革実行計画では、長時間労働の是正のための「時間外労働の上限規制」として、週40時間を超えて可能な時間外労働(残業)の限度を原則月45時間・年360時間とし、違反には罰則を課す。特例として労使が協定(36協定)を結ぶ場合でも、上回ることのできない残業時間を年720時間(月平均60時間)とする。また、一時的に業務量が増える場合についても、(1)2〜6か月平均80時間以内(休日労働を含む)(2)単月では100時間未満(休日労働含む)(3)同特例の適用は年半分を上回らないよう6回を上限――の実現へ向け、関連法令の改正作業が進められている。

29年度の課題、重点を発表2017.5.1

中部地区連

中部地区警備業協会連合会(松本圭一会長=愛知警協会長)は4月15日、名古屋市内で「29年度会長等会議」を開催した。6県協会からの報告は、(1)社会保険未加入問題(2)人手不足問題(3)料金問題――の3点に絞られた。特に人手不足対策については、厚生労働省が3月に都道府県労働局に対し警備業への人材確保対策の実施を通知したことを受け、ハローワークとの連携や処遇改善などの取り組みについて意見が交わされた。

会議には6県協会から会長と専務理事、全国警備業協会からは青山幸恭会長と福島克臣専務理事、小澤祥一朗総務課長が出席した。

各県協会は、平成29年度の運営上の課題と重点推進事項を発表した。発言の要旨は次の通り。

【愛知県・松本圭一会長】「ハローワークと連携して人材確保に取り組む。『ハローワーク名古屋中』は4月3日から『人材確保対策コーナー』を設置し、警備・建設・福祉・運輸の4業種に向け人手不足で対策の支援を強化した。具体的には予約制による職業相談・紹介、コンサルティング、各関係団体とのネットワークを活用した面接会・見学会の実施、雇用管理改善に関わる啓発の推進など。5月8日の労務・業務委員会でハローワーク担当者の詳しい説明を聞き、会員へ周知を図る」

【富山県・髙木哲弘会長】「社会保険未加入問題については、警備員単位で加入率90パーセント未満の会員に向けて研修会での意識付け、代表者への個別指導を目標値達成まで継続していく」

【福井県・吉田敏貢会長】「福井国体の開催が来年に予定されていることから、人手不足対策として賃金と福利厚生環境の改善に取り組むことが急務だ」

【石川県・宮野浩会長】「昨年8月に警備業務適正化小委員会を新設し、経営健全化に向けた取り組みを進めている。10月に開催予定の『金沢マラソン』警備では昨年同様企業共同体(JV)を組み、適正料金の確保を図りたい」

【三重県・小森篤会長】「協会組織の一層の体制強化を図るために今年3月、総務地域安全・教育の2委員会から総務・教育・労務・地域安全の4委員会に委員会規程の改正を行った」

【岐阜県・幾田弘文会長】「4月14日に開催した営業担当者研修会については、今後もこの研修会を続け、適正な単価で競争できる環境を県内全域で構築していきたい」

特集ワイド 認定資格制度の進化2017.5.1

多様化する“安全安心”のニーズに応える人材育成を図るため、全国警備業協会(青山幸恭会長)が7年前に新設した認定資格制度、「セキュリティ・プランナー」と「セキュリティ・コンサルタント」。2つの講習内容が現在までにどう進化したか、また直近の講習内容と更新講習について紹介する。

全警協は、警備業への多様化するニーズに応え、新たな領域を開拓できる人材を育成することを目指し、平成22年に2つの認定資格制度を創設した。「セキュリティ・プランナー」は平成22年6月、「セキュリティ・コンサルタント」は24年3月に、それぞれ初講習が行われた。

以降、全国で講習が行われ、異業種の研修会で資格者が講演を行うなど活動の場を広げていった。全警協ではセキュリティ・プランナー講習を更に充実させるため、平成28年1月に「セキュリティ・プランナー内容検討ワーキンググループ」を設置。検討部会や資格者による意見交換会を行い、1年かけて講習内容の見直しを図った。そして、(1)学科講義に専門家による国際テロやサイバー攻撃など“旬なテーマ”を追加(2)技能実習の題材を広範囲に設定(3)技能試験を共通問題・選択問題の2分野に分ける――の3点を変更した。

28年5月から、新カリキュラムの講習を開始。プランナー資格者に最新情報を提供し、資格者同士が情報交換や自己啓発により活動範囲を広げることを目的に「セキュリティ・プランナーミーティング」も初開催した。

その結果、昨年一年間の受講者数は、前年比15パーセント増加となった。2020東京五輪・パラリンピックをはじめとした国際イベントを控え、幅広い知識と高度な能力が必要とされる2つの認定資格に一層関心が高まっている。

今年度の講習スケジュールによるとセキュリティ・プランナー講習は、昨年より1回多い7回開催を予定している。昨年同様、第44回(大阪)と第47回(愛知)では「セキュリティ・プランナーミーティング」を開く予定だ。

セキュリティ・プランナー資格者は、全体の半数以上を営業担当者が占めている。ユーザーから潜在しているニーズを引き出す要素を講習内容に含めていることから、全警協が行う適正料金確保のためのセミナーや各県協会が実施する営業研修会などと併せて受講することで、各社の営業力アップにより効果があると思われる。

講習で新しい試み

2月1〜3日、研修センターふじので開催された「第9回セキュリティ・コンサルタント講習」には、62人が受講した。

3日間の講習カリキュラムは(1)専門家講師による4つの講義(2)個人ワークとグループディスカッションによる事例研究(3)修了考査(試験5科目)――の3項目で構成された。

セキュリティ・コンサルタント資格者に必要な「問題を発見・分析し解決する能力」を高める研修が個人ワークとグループディスカッションから成る「事例研究」だ。今回、新たな試みとして、事例研究の状況設定を明確にした。受講者はコンサルタントチームの一員で、クライアントから事象をもとにした相談を受けるところから始める。具体的には次の手順だ。

(1)個人で制限時間内に課題発見、問題解決への対策を考える

(2)それを元にコンサルチームで協議する(グループワーク)

(3)再度個人で考えクライアント向けのプレゼンを準備する

(4)最終日、各人がクライアントを対象にしたプレゼンを実施する

また新たに「グループワークの進め方」も明確化した。討論ではなく、様々な意見を聞き入れ、自分と違う考えや切り口、参考になるところを探しながらお互いを高め合うことを目的にした協議を行った。意見を書いた付箋紙(ふせんし)をホワイトボードに貼付して様々な意見を組み分けするなどして、チーム内での意見の“構造化”、解決策をたてるプロセスの“見える化”に努めた。

講習を終えて、受講生からは“驚きと達成感”に満ちた感想があった。

▼これまで受けたことがないタイプの講習で、様々な立場の人と意見を交わすことができた。会社や所属の垣根を越えて、同じ目的(資格取得、警備業のイメージアップ、警備業務の質の向上など)を持った同志と意見を交換しあい、セキュリティ・プランナーとしての連帯感が生まれた。

▼日常業務では得られない気づきがあった。いつもと違う目線で警備業を取り巻く状況や問題を認識し考えることで、自分の立ち位置を再確認した。弱みを知るきっかけにもなった。

▼他の受講者との意見交換で、警備業をお互いに良くしていこうという真剣さが感じられた。大きくとらえれば、その同じ考えのもとに資格者が活躍して、意識的に資格を活用していくことが、さらなる相乗効果をもたらすのではないか。

▼主体的な体験が多く、充実した3日間だった。議論の方式を自社の教育に活用する。

7年目を迎えた認定資格制度は今後、ニーズや資格者の声を聞きながら事務局の創意工夫によって一層充実した内容となるだろう。資格者が得た知識・技能は実務で発揮されているが、活躍の場が確立されることで資格の知名度が上がり、取得するメリットも向上していく。