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交通誘導警備員が不足2020.05.01

確保のための経費計上

国土交通省は4月7日、通達「交通誘導警備員の円滑な確保」を全国の建設業団体と地方整備局、北海道開発局に出した。同様の通達を出すのは2017年6月以来。近年の自然災害の頻発化・激甚化などで、一部地域や時期によって交通誘導警備員の確保が困難となり、工事の円滑な施工を行う上での課題になっていることを受けた。

通達の概要は次の通り。

▽交通誘導警備員を遠隔地から確保する場合、必要な労務管理費や交通費、宿泊費などを設計変更(経費計上)の対象とする。施工場所が山間地にあるなど、現場への移動時間により1日8時間の作業時間確保が困難な場合も、労務費を同様に扱う。これらを入札公告時に明示、見積もりに反映させる。

▽交通量が少なく見通しが良く、交通の安全と円滑が確保される場所には、工事用信号機の活用を検討する。

「自家警備」については、「警備業者が交通誘導警備員不足で交通誘導警備業務を受注できない場合であって、工事の安全上支障がない場合に限るなど“やむを得ない場合”の安全性を確保した運用を想定」を明記。

同通達に合わせて警察庁は、都道府県警察に対して「事務連絡」で、国交省通達の「自家警備を行う場合の条件整理」が、やむを得ない場合の安全性を確保した運用を想定し、自家警備を奨励する趣旨ではないことを改めて示した。

特集ワイド 「熱中症」も大敵だ2020.05.01

厚生労働省は5月1日から「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」を開始した。期間は5月1日から9月30日まで。主唱は同省と中央労働災害防止協会などの災害防止団体などだが、全国警備業協会は業界団体で唯一、主唱者として今年も同キャンペーンに参画する。警備現場では現在、新型コロナへの対応に追われているが、「熱中症多発業種」の警備業にとって、これからの季節は熱中症も大敵、対策は欠かせない。

WBGT値を低減

「暑さ指数」と言われるWBGT値は、人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱」の3つを取り入れた温度の指標だ。熱中症予防対策を行う上で重要な目安となる。

WBGT値の測定は、日本産業規格適合の測定器による随時把握を基本とする。

実測したWBGT値は、作業の程度に応じた熱中症発症の可能性を示した「WBGT基準値」に照らし、熱中症発生リスクを見積もる。基準値を超えるおそれのある場合には、WBGT値の低減対策と、労働衛生管理の基本である「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3つの視点から対策を実施する。

涼しくなる施設と休憩室

WBGT値低減方法には(1)簡易な屋根(2)通風または冷房設備(3)ミストシャワーなどによる散水設備――などの設置がある。しかし、警備業が屋外で業務を行う場合、建設現場やイベント会場など警備会社自らで設備を設けることが困難な場合が多い。事前に発注者や施設管理者と協議を行い、各種設備設置に理解と協力を求める。

また、警備実施場所の近くには、横になれる冷房を備えた休憩場所や日陰の涼しい休場所を確保し、水分と塩分の補給を定期的に容易に行えるよう飲料水・スポーツドリンク・塩飴などを備えておく。

休憩場所についても、警備会社だけで確保が困難な場合が多い。建設現場であれば元請建設会社が、イベント会場であればイベント主催者が、それぞれ設けている休憩施設を警備員が利用できるよう求める。その際、休憩施設を警備員が使用することを建設作業員やイベントスタッフに周知、警備員が気兼ねなく使用できるよう配慮する。

常に水分・塩分を摂取

警備業務に当たっては、夏季の暑熱環境を加味した「作業計画」を策定、熱中症対策に万全を期す。同計画には、新任警備員や休み明け警備員などに対する「熱順化プログラム」、WBGT値に応じた十分な休憩時間の確保、同基準値を大幅に超えた場合の作業中止に関する事項など、さまざまな視点からの対策を盛り込む。

基準値を大幅に超える場所で、やむを得ず作業を行う場合は、単独作業を控えて休憩時間を長めに設定する。その際、現場の責任者や管理者は、警備員の心拍数、体温や尿の回数・色などの身体状況、水分・塩分の摂取状況を頻繁に確認する。

また、熱への順化(慣れ)の有無は、熱中症の発生に大きく影響する。7日以上かけて熱にさらされる時間を次第に長くすることが望ましい。特に、新任警備員は、すぐに炎天下での警備に従事させないよう、計画的な熱順化プログラムを組む。夏季休暇などのため暑熱下での作業が中断すると、4日後には熱順化の顕著な喪失が始まるので注意が必要だ。

一方、警備員には、自覚症状の有無にかかわらず、水分・塩分の作業前後の摂取と業務中の定期的な摂取を行わせる。現場の責任者や管理者は、隊員の水分・塩分の摂取を確認するための表の作成、巡察時の確認などにより、隊員からの申し出にかかわらず、定期的な水分・塩分の摂取の徹底を図る。「尿の回数が少ない」「尿の色が普段より濃い」状態は、体内の水分が不足している可能性があるので留意する。

警備服の工夫も必要だ。熱を吸収・保熱しやすい生地は避け、透湿性と通気性の良い生地を用いたものとする。保冷剤や小型ファンで身体を冷却する機能を持つ服の着用も検討する。直射日光下での作業の場合は、通気性の良い帽子やヘルメットを準備する。

朝食抜き、睡眠不足は危険

熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある(1)糖尿病(2)高血圧症(3)心疾患(4)腎不全(5)精神・神経関係の疾患(6)広範囲の皮膚疾患(7)感冒(8)下痢――などの疾病を持つ人については、医師などの意見を踏まえて配慮する。

警備員には、「当日の朝食の未摂取」「睡眠不足」「前日の多量飲酒」「体調不良」などが熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることを指導する。作業開始前には、これら事項など健康状態を確認し、必要に応じ作業の配置換えを行う。また、熱中症の具体的な症状や発生の仕組みを警備員に教育し、警備員自身が熱中症に早期に気づくことができるようにする。

警備業務中は巡察を頻繁に行い、声掛けなどにより健康状態を確認する。また、複数の警備員による警備では、互いの健康状態について留意する。

異変があればすぐに病院

少しでも本人や周囲が異変を感じた際は、必ず、一旦作業を離れ、病院に搬送するなどの措置を取る。症状によっては救急隊を要請する。

本人に自覚症状がない場合でも、明らかに熱中症の症状が見られる場合は、病院への搬送や救急隊を要請する。病院に搬送するまでの間や救急隊が到着するまでの間は、必要に応じて水分・塩分の摂取、全身をタオルやスプレーなどで濡らして送風・あおぐなどして体表面からの水分蒸発を促し体温を下げる。その際には、一人きりにせずに誰かが様子を観察する。