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熱中症 死傷者数が大幅増2023.06.11

厚生労働省は5月29日、2022年中に全国の職場で発生した熱中症の状況(確定値)を公表した。

全産業計の死傷者数(死亡者数と休業4日以上の合計)は前年比266人増の827人と大幅増となった。うち死亡者数は10人増の30人だった。

警備業は、死亡者数が同5人増の6人、死傷者数は同23人増の91人。死亡者数は建設業の14人に次いで、死傷者数は建設業179人、製造業145人、運送業129人に次いで多かった。警備業の発生状況を2018年からの過去5年間でみると、死亡は19年の4人から20・21年は各1人に減少。死傷は18年の110人から減少基調だった。

警備業の死亡は、6人中4人が60歳代。30歳代と40歳代が各1人だった。業務内容は、巡回警備が1人、他は建設工事で交通誘導警備業務に従事していた。

特集ワイド 寄稿 警備業の労災防止2023.06.11

厚生労働省は4月、今後5年間の労働災害止施策の基本方針「第14次労働災害防止計画」をスタートさせた。死亡労働災害は減少傾向にあるものの休業4日以上の死傷災害の大幅増など警備業でも対策は急務だ。厚労省労働基準局安全衛生部安全課・釜石英雄課長に警備業の労災防止対策について寄稿してもらった。

2022年に警備業で発生した労働災害の年齢別被災状況は、60歳以上の占める割合が約51%と、全産業平均の約29%に比べ相当高い水準にあります。50歳以上にまで対象を広げると約73%となり、特に転倒は60歳以上の占める割合が約64%、50歳以上約83%となります。熱中症による死亡者のうち60歳代は4人、全体の約67%です。

高年齢労働者は、身体機能の低下や感覚機能の変化などにより転倒・墜落・転落などをしやすくなります。また、暑さに対する感覚機能や体の調節機能が低下、熱中症を発症する危険性が高くなります。

高年齢者が安全で快適に働けるよう、事業者は安全衛生管理体制に高齢者労働災害防止対策を組み込むことが必要です。また、高年齢者の健康や体力を把握し、その保持増進に取り組んでいくことも重要です。

厚労省は20年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を策定、普及を図っており、23年度も中小企業事業者に対する補助事業(エイジフレンドリー補助金、日本労働安全衛生コンサルタント会が補助事業者)を実施します。

体力向上で転倒防止

転倒災害の主な原因は、濡れた滑りやすい床での「滑り」、床の段差や置いてある物への「つまずき」、階段などでの「踏み外し」、さらに、何もないところで足がもつれて転倒することもあります。警備業では、夜間の警備、降雨・積雪のある屋外での警備などもあり、警備場所の環境改善が難しい場合もありますが、転倒の原因を除去し、作業環境の改善を図ることが重要です。また、警備員の高齢化が進む中にあっても、平素から体力の向上に取り組むことにより転倒しにくく、転倒しても大きなけがに至らないようにしていくとともに、安全衛生教育による意識向上も重要です。

熱中症対策にはWBGT

警備業の作業現場では、(1)JIS規格に適合した暑さ指数計による暑さ指数(WBGT)の測定とそれに応じた設備や作業時間短縮など適切な対策の実施(2)作業管理者や労働者へ事前に水分や塩分の摂取方法・服装・暑熱順化などの労働衛生教育の実施(3)屋外での作業の場合は、冷房や屋根付きの休憩用設備の整備(4)健康診断結果や点呼などを活用した当日の健康状態の把握(5)熱中症の早期発見と緊急時対応の事前の確認・周知、発生した場合は救急車を呼び、到着までの間に周囲の者が必要に応じて衣服を脱がせ水をかけて全身を急速冷却するなどの措置を講ずること――などの取り組みが必要です。

厚労省は「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しており、7月が重点取り組み期間です。この機会に熱中症対策を再確認してください。労働衛生教育には「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」(https://neccyusho.mhlw.go.jp/)が活用できます。

ストレッチで腰痛予防

警備業における腰痛は、長時間立ったままでの交通誘導警備、運搬警備での荷の運搬など、さまざまな要因により発生していると考えられます。(1)体に合った靴、伸縮性のある作業服の着用(2)重量物は正しい姿勢で取り扱う(3)適宜休憩して姿勢を変える(4)普段からストレッチをして筋肉を柔軟にしておくとともに、腹筋や背筋など腰部を支える筋肉を補強する――などの対策を講ずることが重要です。13年6月改正の「職場における腰痛予防対策指針」を参考に取り組みを進めてください。「腰痛を防ぐ職場の好事例集(https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001087637.pdf)」が活用できます。

確実な合図で交通誘導

道路工事などでの交通誘導警備で多い交通事故は、誘導の際に、不特定の第三者が運転する車両を誘導するため、警備員の意思が運転者に伝わりにくく、また、運転者が警備員を十分視認できない場合もあると考えられます。相手に分かりやすい合図で確実に意思を伝える、安全に配慮した適切な誘導位置に立つ、夜間でも視認しやすい衣服などを着用し適切な装備品を装着して、保安用機材を使用する――ことが必要です。

交通労災防止し運搬警備

現金輸送車などの運搬警備では、運転時の交通事故による労働災害が多いことから、「交通労働災害防止のためのガイドライン」などに基づき、(1)適正な走行計画の策定(2)乗務前の点呼などによる運転者の状況の確認(3)運転者に対する教育の実施(4)交通安全情報マップによる運転者の注意喚起(5)異常気象などの際の安全確保――などに取り組んでください。

安全週間と労災防止計画

労働災害を少しでも減らし、労働者一人ひとりが安全に働ける職場環境を築くためには、本年3月策定の「第14次労働災害防止計画」に基づく施策を着実に推進するための不断の努力が必要であり、特に初年度となる23年度は、労使一丸となった取り組みが求められます。

このようなことから、今年度の全国安全週間のスローガンは「高める意識と安全行動 築こうみんなのゼロ災職場」としました。また、第14次労災防止計画では、従来からの対策に加え、安全衛生対策に取り組むことが事業者にとっても経営や人材確保・育成の観点からもプラスになることを周知することにより、同対策に取り組む事業者が社会的に評価される環境の整備を進めることとしています。警備業の各事業場でも、ゼロ災害を目指して積極的に安全衛生対策に取り組んでください。