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クローズUP

「課題解決へ緊密に連携」2019.04.21

中国地区連総会で村本会長

中国地区警備業協会連合会(会長=村本尚之・広島警協会長)は4月15日、広島市内で2019年度の定時総会を開催した。中国5県の各県警協の会長と専務理事、全国警備協会から小澤祥一朗総務部次長が出席した(鳥取警協は山本宏幸副会長)。

村本会長は「警備員不足、これに輪をかける働き方改革。来年開催の東京五輪・パラリンピックへの対応など課題を挙げたらキリがない。解決のためには、中国地区各県警協が、これまで以上に緊密に連携・協力していくことが重要」と述べ、地区連一体となった取り組みを求めた。加えて、「今後、スピード感を持った実効ある成果を出していくためには、政党・政治家の力を借りることも必要だ。警備業界も警備業協会とは切り離した個人組織としての政治連盟をつくる必要がある」と、政治連盟設立の必要性を訴えた。

同地区連の2019年度の事業計画では、新潟県内で昨年発生した女児殺害事件を受け、「子供見守り活動など地域への貢献活動(CSR活動)の活性化」などが盛り込まれた。

各県協会の活動報告では、次の取り組みが報告された。鳥取警協は警察官指導による護身術研修会を開催。島根警協は「自主行動計画」の具体的実践へ向けたプロジェクトチームを編成、検討を開始した。

岡山警協は、人材確保へ向けたラジオでの警備業PR広告放送や路面電車内へのポスター掲出などを、山口警協は、県警本部と連携した「交通誘導警備員受傷事故防止訓練」を、それぞれ実施した。

広島警協は、本来は“有償協定”でありながら運用例がない「災害支援協定」の見直しについて報告した。同協定は1997年に県警本部と結んだが、(予算も確保できる)県知事(危機管理課)との協定を模索。年内の新協定締結へ向け、協議を開始したことを明らかにした。

東京五輪の警備員制服2019.04.21

トッパン・フォームズが製作

東京五輪開会式まであと460日、パラリンピックまであと492日――。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委)はこのほど、大会で警備員が着用する統一制服の製作業者として「トッパン・フォームズ」(東京都港区、坂田甲一代表取締役社長)を選定した。

同社が事務局となってコンソーシアム(共同事業体)を組み、デザインの監修は公益財団法人日本ユニフォームセンター(東京都港区、藤原典理事長)が行う。組織委は5月末までに警備員制服のデザインを固める。

制服の購入は、大会警備に参加する警備会社が個々にトッパン・フォームズに発注する見込みで、費用負担の条件等は関係者間で調整中だ。流出や偽造を防ぐため、制帽、シャツ、ズボン、ワッペン、それぞれにICタグが内蔵され、各社へ納品後も厳重な管理が可能だ。熱中症予防で通気性、速乾性を備えた軽量素材が使用される。

制服製作の事業者公募に応募したのは15社。企画提案書、見積書(立候補ファイルの警備員数に基づき1万4000人分)、素材サンプルを提出した。審査は、(1)デザイン(大会にふさわしく警備員の信頼感を表現しているか、幅広い年齢・体型の人が着こなせるか等)(2)素材と機能性(3)運用管理――などについて書類とプレゼン形式で行われた。

4月12日に開かれた「警備員制服のデザイン・仕様検討会」には組織委警備局の平林新一次長をはじめ組織委関係者、大会警備共同企業体(JV)、スポンサーのセコム、ALSOKの関係者が出席。トッパン・フォームズの担当者がデザイン案などを説明した。

組織委警備局・平林次長の話警備員制服は、歴史的な警備にワンチームで取り組むセコム、ALSOKの両スポンサー、JV参加企業の思いを表すシンボルとなる。酷暑が想定され、酷暑対策と機能性は重要だ。規律や信頼を感じさせるデザインの制服を着た警備員の存在は、観客に安心感をもたらすと考える。

特集ワイド 警備業の「働き方改革」2019.04.21

 

「働き方改革」がスタートした。新労働基準法などにより企業には「年次有給休暇の5日取得義務化」や「時間外労働の上限規制」などが課せられた。業務特性や人手不足など課題を抱える警備業には大きな試練だ。警備の現場で活躍する社会保険労務士の髙木雄太氏(キステム)にインタビュー、警備業としての働き方改革への取り組みを聞いた。

――4月から「働き方改革」がスタートしました。

特に警備業に関わってくる事項として、4月1日施行の時季を指定した「年5日の年次有給休暇の取得義務化」と「時間外労働の上限規制」があります。

年休取得義務化は、企業規模に関係なく、全ての企業に適用されます。対象となる人は、年間10日以上の年休が付与される全ての従業員です。これには管理監督者、有期雇用の人も含まれます。また、パートタイムの人でも対象となる人がいます。

「時季指定」とは、年休10日が発生する「基準日」から1年以内に、年休5日間については会社が時季を指定して従業員に取得させるというものです。4月1日入社の人は、6か月後の10月1日に10日間の年休が発生します。この人については、翌年9月30日までに5日間の年休を与えなければなりません。

――年休の管理は煩雑です。

年休を取得できているかを管理するための「管理簿」が必要です。管理簿には、時季、日数、基準日を一人ひとりごとに明らかにしなければなりません。管理簿は3年間の保存が義務付けられ、賃金台帳や労働者名簿と一緒に調製しても構いません。

――年休取得義務化で特に気をつけることは。

「就業規則」への規定です。休暇に関する事項は、就業規則に必ず明記しなければならない“絶対的記載事項”です。「時季指定対象の従業員の範囲」と「時季指定方法」を就業規則に記載し、労働基準監督署に届け出る必要があります。実際に年5日の時季指定年休を与えても、就業規則を改正、届け出なければ「30万円以下の罰金」が科せられる場合があります。従業員が請求する時季に年休を与えなければ「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」となります。懲役刑となれば、警備会社は警備業法によって「認定取り消し」の行政処分もあり得ます。

――年休を確実に与える、取得させる方法は?

会社は常に従業員に声掛けし、年休取得への意識付けを行うことが必要です。配置担当者と警備員が一緒になって年休取得の計画をつくる、現任教育で「年休を取ることは会社を守ることであり、従業員の生活を充実させること」だと周知する――など、年休取得への理解を図ることです。

――年休を与えても、従業員が休まない場合は?

会社が時季を指定したにもかかわらず、従業員が自らの判断で出勤してきた場合、会社がこれを受け入れてしまう(受領する)と法違反に問われます。

従業員を休ませるには、会社全体の人員を増やし、現場の負担を軽減するようにすることです。警備会社の場合、年休を取って休む警備員の代わりに出勤する専門の要員を用意する、余裕を持った警備計画や人員配置計画を作成するなどの方法があります。

また、警備現場間で人の行き来ができるように教育しておくことも一案です。例えばA現場のXさんが年休を取る際には、B現場のYさんがA現場で勤務するなど現場間で人の融通ができるよう教育を行うと、会社も運用がしやすくなります。

――年休取得のために会社に必要なことは?

警備料金を値上げして必要な原資を確保することが不可欠です。例えば日給1万円の警備員が5日間の年休を取得する。100人では500万円の支払いが必要です。従業員の年休に対する理解が進み、20日間の年休を持つ人が「残りの15日の年休も取る」と申し出る。100人いれば1500万円の支払いが必要になります。さらに、年休の請求権は毎年発生します。

――法律で時間外労働に上限が設けられました。

法で定められた労働時間は、1日8時間・週40時間、休日は毎週少なくとも1回――です。これを超えて従業員に仕事をさせるには、労基法第36条に基づく労使による協定(36協定)と労基署への届出が必要です。

これまでも時間外労働の限度に関する基準はありましたが、法律ではなく大臣告示で示された「行政指導」のみでした。今回の法改正により法律で時間外労働の上限が定められました。

上限時間は原則月45時間・年360時間。「臨時的な特別な事情」がある場合に労使が合意すれば年720時間以内・複数月の平均80時間以内(休日労働を含む)・単月では100時間未満(休日労働含む)――となりました。違反すれば「6月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。懲役刑となれば警備業は年休の場合と同じように「認定取り消し」という事態も考えられます。既に大企業には4月1日から、中小企業には2020年4月1日から適用されます。

建設現場での交通誘導警備業務については、5年間適用が猶予されますが、施設警備などでは上限規制が適用されます。交通誘導警備業務についても、“主たる業務”が駐車場の交通誘導警備など建設現場と関連がなければ適用猶予とはなりません。

法違反とならないためには、1日・1月・1年の単位それぞれの時間外労働が、36協定で定めた時間を超えないことです。休日労働についても回数と時間を定めますが、この定めた回数・時間を超えないことです。臨時的・特別な事情で労使が合意した「特別条項」を発動させる場合でも、その回数が36協定で定めた回数を超えないことが必要です。特に注意しなければならないのは、時間外労働が月45時間以内に収まっている場合でも、休日労働との合計が100時間を超えれば法違反となります。会社としては、特別条項の有無に関わらず1年を通じて常に時間外労働と休日労働の合計を「月100時間未満」「2〜6月の平均が80時間以内」にしなければなりません。

――上限を超えないためには何が必要ですか?

警備会社としては、配置する人員を増やして一人ひとりの残業時間を減らしていくことです。施設警備であれば警備計画の人員配置の見直し、交通誘導警備であれば会社全体の配置できる人数の増員――などです。

一方で、配置人員を増やすと1人当たりの残業代が減ってしまうという問題が生じます。残業代が減少して賃金が下がると警備員の退職にもつながりかねません。会社には、給与制度の見直しや所定内給与額のアップによる残業代減少のカバーが求められます。それには年休の場合と同様、警備料金の値上げによる原資確保が必要です。

経営層の強い決意と行動を

――コストが伴います。料金値上げは不可欠です。

働き方改革への対応は、「警備料金の値上げ」に尽きます。そのためには、当日の警備業務キャンセルには100パーセントの「キャンセル料」を請求していくなど、警備業界の商慣行見直しも不可欠です。

現在、料金値上げや商慣行を改めるために活用できるツールはたくさんあります。一つは全国警備業協会が作成した「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」です。もう一つは国土交通省が公表した「建築保全業務労務単価」や「公共工事設計労務単価」です。必要な費用を計上して見積額を出す場合に参考資料として活用できます。特に交通誘導警備については、国交省が雇用に伴う必要な経費を加えた金額を“参考値”として公表しています。これを使わない手はありません。

活用できるものは多々ありますが、最後は「適正な警備料金を確保するんだ」「もう安売りはしない」という経営層の強い決意と行動が必要です。待っているだけでは料金は上がりません。

「料金を上げる」「警備業の商慣行を改める」ことは、不当に高い料金を得ようとするものではありません。適正な料金を求めていこうというものです。

「値上げできるのだろうか」「値上げしたら仕事を失うのではないか」という心配の声を耳にしますが、私は全く気にすることはないと思っています。

今後は、適正な料金が得られないのであれば、その契約先とは取引を辞めるというのも一つの選択肢です。そういった気持ちで値上げ交渉や入札に臨んでください。