クローズUP
紙面向上委員会 第13回会合2018.4.1
「教育」で多様な意見
本紙は3月9日、第13回の「紙面向上委員会」を開催した。警備業法に基づく「法定教育」の充実はもとより、警備員や警備サービスの質向上に不可欠な「法定外教育」の重要性など、特に今回は教育について多くの意見が寄せられた。
齋藤文夫氏(前全国警備業協会)は、「最近、教育への関心が薄れている」と問題提起した。これを受けて早川正行氏(前神奈川県警備業協会)は「緊急立入検査が行われた際、採用や教育について問題が指摘されないのは、ほんの一部の警備会社」と、教育は依然重要なテーマだと応じた。
田中敏也氏(リライアンス・セキュリティー)と鈴木伸也氏(日本海警備保障)の両氏は、最近のテレビ番組やコマーシャルを引き合いに、「正義、正義感」に言及。教育による警備員への正義感の意識醸成が必要だと述べた。
絵野裕美氏(東洋相互警備保障)は、東京五輪・パラリンピックを控えて教育の大切さを指摘するも、「業界は幅広く、均一の質を保つのは難しい」と、“底上げ”の必要性を挙げた。
特集ワイド 警備業法を営業ツールに2018.4.1
営業マンは警備業法を知ってコスト計算をしよう――警備員不足を解消するためには賃金アップを図る必要があり、そのためには原資の確保が絶対条件となる。警備業法は、適正な警備料金を確保するための“営業ツール”として活用するべきだ。前神奈川県警備業協会専務理事で本紙「紙面向上委員会」委員の早川正行氏は、従来と違う視点から警備料金アップの手法を提案した。
寄稿 早川正行氏
賃金を上げるため
警備業は、警備料金、警備員の賃金をとっても、他の業種と比べて市場の評価は低く、産業としての存立の基盤を危うくしている。特に、交通誘導警備業務への評価は低く、国土交通省の公共工事設計労務単価でみても建設現場の軽作業員以下の賃金となっている。それでも、これまで、警備員を雇用できたのは、他産業でのリストラなどを原因とする失業者の増大があり、低賃金でも働くこれら大量の労働者の受け皿として機能したことによる。この意味においては雇用の受け皿として社会に貢献したことも事実だ。しかし今、雇用状態も安定し、失業率も3パーセントを切るようになり、流動する労働者の雇用は困難となった。募集を行えば警備員が集まった時代は終わったのである。
労働者の売り手市場となった場合、労働者は当然の結果として、賃金の高い業種を選択する。この分かり切った理屈に対応するためには、警備員の賃金を上げなければならない。賃金を上げるためには警備料金を適正に評価してもらい、警備料金のアップを図らなければならない。そのための方策として、警備業法を駆使したコスト計算に基づき、適正な警備料金を提示することのできる営業が求められる。営業マンの腕の見せどころである。
業法を説明に使う
ところが、営業マンに係る問題として、警備業法を説明できないだけではなく、警備員一人を採用するために必要なコストを説明できない実態がある。警備業務というサービスを形成する要素は、警備業法によって厳しく定められており、「安全・安心」の提供に伴う規制には必然的にコストが発生する仕組みになっている。
コスト計算に基づく適正な警備料金を説明できない状態で営業を行い、その結果、警備料金のダンピング合戦となり、警備員の賃金を低く抑えることが常態化した。
コストを削減するために、教育懈怠などの業法違反がいまだに指摘されている。いわゆるコストを低く抑えて仕事を取るために、警備業法違反をも厭わないという会社の経営姿勢が根底にある。これは、「安全・安心」を商品とする警備業界にとって極めて由々しき問題である。従来、警備業法は、どちらかというと、業務担当者が業務を適正に行うための拠り所として存在してきたが、営業マンもまた警備業法をよく理解し、適正な警備料金の説明に活用するべきであろう。同時に、警備業法を武器にした営業の手法についても開拓するべきだろう。
「警備業務」というサービスを形作っているのは警備業法である。警備業法は、規制法という側面を有するものの、警備員として採用するための要件、採用された警備員の教育など安全・安心のサービスを担うための警備員について、採用や教育の義務などを細かく規定している。これらは、警備会社の義務として課せられており、警備会社のコストにもなっている。警備員一人を採用するために要する適格者チェックやそのために必要な経費は、他の産業に比較しても極めて厳しいものがある。
「安全・安心」を担う警備員だからこその制約である。この厳しい制約は、警備業務の信頼の基盤であり、サービスの根幹を形成する。このことを押さえながら、警備業法を順守した場合のコストが計算されるのだ。