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クローズUP

紙面向上委員会 第10回会合2017.7.1

本紙は6月15日、10回目の「紙面向上委員会」を開いた。“働き方改革”をメインテーマとして、新聞のあり方や紙面に対する要望など、さまざまな意見が交わされた。

田中敏也氏(リライアンス・セキュリティー)は、千葉地裁判決の本紙報道について、これからも労働裁判を積極的に追い、警備業界に問題提起をすることで役立ってほしいと述べた。

實川利光氏(アルク)は、労働裁判の判決について、わかりやすい解説とその後の報道を続けてほしいと要望した。

絵野裕美氏(東洋相互警備保障)は、社員定着の基本は人間関係であり、上司や先輩などの理解と心配りが欠かせないと発言した。

齋藤文夫氏(全国警備業協会)と早川正行氏(前神奈川県警備業協会)は、青年部会や女性部会の活動に注目するなど、多彩な視点からの情報提供に期待した。

これからの時期に注意が必要な熱中症対策については、田中氏と實川氏が自社の予防・対応の取り組みを具体的に報告した。

齋藤氏は警備の将来に言及し、田中氏は今から次世代の警備を視野に入れ考えることが必要と述べた。

各地の総会2017.7.1

中国地区連=6月20日・広島市

各地の定時総会は警備業協会と共に、各地区警備業協会連合会(地区連)でも始まった。各県協会会長と専務理事のほか、来賓として全警協会長、専務理事も出席し開催された。

喫緊の課題である人手不足の対策をめぐって、処遇の改善や社会保険加入促進、それらの原資となる適正な警備料金の確保などについて意見が交わされた。

橋本満・連合会長(広島県警協会長)は、5県の会長、専務理事を前にしての挨拶で「人手不足」を〈憂慮しなければならない問題のトップ項目〉と位置づけ、強い語調で次のように指摘した。

「警備員の不足は、ついに“悪質な引き抜き”という形で表れてきたようだ。従業員を大事にする処遇の改善は待ったなしの状況にあるのです」。

会議に加わった全警協の青山幸恭会長は、5月末に官邸で開かれた〈中小企業の生産性向上、働き方改革の協議会〉に言及、「関連法案が秋の臨時国会に提出される予定と聞いている。これにより労働法制の厳格化が示されるのではないか。動向を注視しなければならない」と語った。

青山会長は続けて、「自らを律して、何が出来るか。解決しなければならない問題を〈今、すぐにでもやるべき課題〉、〈3年後をメド〉、〈5年後〉と区切って、厳しく対応しなければならない」と訴えた。

全警協の福島克臣専務理事は、「現状の人手不足は、一過性ではなく、恒常的なものになっていると思われる。警備業が警備員を奪い合うのではなく、全産業が奪い合っている。人手不足解消のカギは、警備員の給料を上げることに尽きるのではないか」と問題提起した。

福島専務理事はその上で、「“給料アップ”は、人材確保と定着の“投資活動”なのだと認識してほしい。具体的に言えば<給料=労務単価×1.6>と考えてもらいたい。<1.6>は労務単価に一般管理費、法定福利費などを加算した“積算基準”であり、これが広く浸透すれば、次年度からの実体調査を踏まえて全体の業務価格をアップするプラス材料になると考えている」と理解を求めた。

山梨警協に青年部2017.7.1

小学生が憧れる仕事へ

山梨県警備業協会(栗山順司会長)は6月22日、甲府市内で「青年部会設立総会」を開催した。

同青年部会は全国で16番目に発足し、55歳未満の若手経営者13人で構成され、

同警協・栗山会長が特別顧問を務める。

栗山会長は「警備業が魅力ある産業として更に発展するためには、若手経営者の柔軟で斬新な発想、軽快なフットワークが必要だ。協会と情報・意見交換を行いながら、創意工夫を凝らした活動を推進し、業界に関心を持つ若者が一人でも増えるよう長期的なビジョンも踏まえて取り組んでほしい」と挨拶した。

保坂剛志部会長(センティス21)は「警備業への需要があっても、人を出せない状況が続いている。昨年度は長期にわたって取り引きがあるユーザーを優先し、新規契約を逃す状況もあった。業界に良い人材を集め育成していくことが求められていることから、全国の青年部会と積極的に交流を持ち状況を打開していきたい。“小学生が憧れる仕事”にまで警備員の魅力を引き上げることを目指したい」と方針を示した。

今年度の事業計画として、8月に「営業戦略勉強会」開催、11月には「警備の日」のイベント企画や甲府市の防災訓練参加などを予定している。

記念講演として全国警備業協会総務部次長・齋藤文夫氏が「警備業の未来・適正利潤を確保しよう」の演題で講演し、料金設定方法や交渉術について解説した。

特集ワイド 警備業の事故を減らす2017.7.1

今年も7月1〜7日の「全国安全週間」が始まった。全産業で労働災害は減少傾向にあるが、警備業は依然として交通災害をはじめ死傷者数が増加傾向にある。厚生労働省労働基準局安全衛生部の野澤英児・安全課長に、警備業の労働災害防止対策について寄稿してもらった。

「転倒」が大きく増加

労働災害による死亡・休業4日以上の死傷者数は、全産業で長期的に減少傾向にあるのに対し、警備業では増加傾向にあります。平成28年の警備業の死傷者数は1472人で、対前年比5.1パーセント増加しています。全産業では1.4パーセント増加である中で残念な結果です。

死傷災害を事故の型別に分析すると、最も多いのが「転倒」で37パーセント、次いで「交通事故(道路)」15パーセント、「動作の反動・無理な動作」13パーセント、「墜落・転落」11パーセントとなっています。このうち「転倒」が対前年比14パーセント増加したことが、警備業での労働災害が増加した大きな要因となっています。

平成28年の死亡者数は23人で、対前年比6人、20.7パーセントの減少となっています。この23人の事故の型別の内訳は、「交通事故(道路)」が13人、「激突され」4人、「墜落・転落」2人、「おぼれ」2人です。熱中症については平成27年が7人でしたが、平成28年には死亡災害は発生しませんでした。今年の労働災害の発生状況ですが、5月末現在の速報値では9人(交通事故4人、はさまれ・巻き込まれ2人、転倒1人など)が亡くなっています。死亡・休業4日以上の死傷者は512人で、前年同期よりも44人(7パーセント)の増加となっています。

また、年齢別の被災状況では、全体の3分の2近くを50歳以上の労働者が占めているという特徴があります。こうした労働災害の状況を踏まえ、特に次の事項を重点とした労働災害防止対策の強化が必要です。

警備業の交通労働災害としては、交通誘導警備と輸送警備における交通事故の対策が重要です。

わかりやすい合図で

交通誘導警備では、不特定の第三者の運転する車両を対象とするため、警備員の意思が運転者に伝わりにくいなどの問題点があり、わかりやすく確実に合図を伝えることや、安全に配慮した適切な誘導位置の確保、適切な装備品、保安用資機材の装着・使用など、基本的な安全確保の徹底が重要です。

現金輸送車などの輸送警備においては、「交通労働災害防止のためのガイドライン」などに沿って、適正な走行計画の作成、運転者に対する教育の実施、交通ヒヤリマップの作成や交通KYTによる危険感受性の向上、雪や大雨などにおける安全の確保などの取り組みをお願いします。

「危険予知力」を向上

警備業では暗い夜間での警備や緊急時の駆け付け、降雨・積雪のある屋外での警備など他の業種にはない課題もあります。また、警備場所の管理権限が及びにくいこともあると思いますが、警備場所のオーナー等の理解、協力を得ながら転倒の原因の除去、改善を図るとともに、警備員に対する危険予知訓練(KYT)などを通じた注意力の向上など、転倒災害防止対策に一層の取り組みが必要です。

厚労省では、一昨年より「STOP! 転倒災害プロジェクト」を展開し、事業場での転倒災害防止の取り組みの促進を図っており、引き続き協力をお願いします。

死亡災害に至る熱中症

夏場の屋外警備作業など警備業は熱中症のリスクが非常に高い業種ですが、前述したように、一昨年は、熱中症による死亡災害が多発しました。厚労省では毎年重点項目を示して熱中症対策に取り組んでいますが、平成29年の職場における熱中症予防対策については、「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」という新たな取り組みを行い、強力に推進しています。事業場における責任体制の確立を含めた熱中症予防対策の徹底を図ることを目的とし、関係団体や業所管省庁と連携して進めています。

本キャンペーンは5月から9月にかけて実施し、7月は重点取り組み期間となっています。この期間に警備業等の作業現場で取り組んでほしい主な事項として(1)WBGT値(暑さ指数)の測定による熱中症危険性の把握(2)屋外での作業の場合に冷房や屋根などの休憩を取るための設備の整備(3)健康診断結果や日々の健康状態の把握による働いている方の健康状態の把握(4)新たに職場に入られた方などに対する熱中症の危険性や予防対策の周知――を呼び掛けています。

労働局や労働基準監督署で配布している「対策に当たってのポイントとなる事項」をまとめたリーフレットを確認して下さい。厚労省ホームページでも閲覧することができます。今年は夏の気温が例年よりも高くなることが予想されており、暑さが本格化する7〜8月に向けて、今一度、熱中症対策の重点的な実施をお願いします。

高齢者に配慮した職場へ

人は一般に加齢とともに、身体能力・感覚機能が変化してきます。特に足の筋力、視力・聴力、バランス感覚、記憶力・判断力などが低下し、若年の頃と比べ、転倒や墜落・転落などの労働災害に遭いやすくなります。警備業では高齢者の割合が高いことから、高齢者でも安全で快適に働ける職場作りに努めていくことが重要です。例えば、床面の段差や凸凹を視認しやすいようにする、表示の字を見やすい大きさ・色にする、適切な照度を確保する、取り扱う重量物の重さを制限する、作業時間を見直すなどがあります。ただ注意喚起だけで終わらせることなく、高齢者の心身機能の変化を踏まえた職場環境の改善を図っていくことが必要です。

最近の労働災害の発生状況から特に考慮してほしい対策について述べてきましたが、警備業における労働災害のリスクはこれらに限られたものではありません。

作業現場にある危険有害性を特定し、それらによる労働災害の重篤度(けがなどの程度)とその災害が発生する可能性を組み合わせてリスクを見積もり、そのリスクの程度に基づいて対策の優先度を決めた上で、リスクの除去、低減措置を検討し、その結果を記録する一連の安全管理手法として「リスクアセスメント」があります。

厚労省ではこの手法に基づいた潜在的な危険有害性を未然に除去・低減させる先取り型の安全管理の導入促進を図っています。警備業の各事業場におかれても、この手法を取り入れることにより、警備業務の中に潜む災害リスクの除去、低減を図ることをぜひ実施していただきたいと思います。

対策を着実に実践

労働災害の減少は一朝一夕には成しえない課題ですが、前述したような対策をコツコツと着実に実践していくことが重要だと考えます。労働者の皆さんが基本的な安全ルールを守って仕事し、また本社が職場と一体になって全社的な安全管理を進めることで、警備の現場がより安全に安心して働ける職場となり、労働災害の減少が図られることを期待しています。