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大会から暴力団を排除2018.7.21

警備JV、警視庁と覚書

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体(大会警備JV)」は7月11日、警視庁と「暴力団排除対策に関する覚書」を締結した。

 同覚書は、2020大会に関連する全ての事業から暴力団や暴力団関係企業などの反社会的勢力を排除するのが目的。3月29日に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(森喜朗会長)が警察庁や警視庁など全11機関・団体と締結した共同宣言「東京2020大会暴力団排除共同宣言」と、全国警備業協会(青山幸恭会長)の「暴力団等反社会勢力排除宣言」の趣旨に沿い締結した。相互に連携して暴力団などの排除活動を推進することが趣旨で、基本方針は次の通り。

 ▽都暴力団排除活動の基本理念「暴力団と交際しない」、「暴力団を恐れない」、「暴力団に金を出さない」、「暴力団を利用しない」を実践する。

 ▽暴力団などによる不当要求は断固拒否する。

 ▽会社相互の協力体制を確立する。

 ▽警察など関係機関と連携を強化する。

 締結式には、大会警備JVから中山泰男(セコム代表取締役社長)と青山幸恭(ALSOK代表取締役社長)の両共同代表と、理事会社の代表12人が出席。警視庁組織犯罪対策部の森内彰部長と共同代表2人が覚書に署名、互いに取り交わした後、参加者全員で暴力団排除宣言を読み上げた。

 中山共同代表の言葉 4月3日に大会警備JVを設立し、今日まで1都3県で警備員の募集活動を推進してきました。暴力団排除活動を推進するため本日の覚書締結は心より嬉しく思います。

 青山共同代表の言葉 この覚書締結と宣言を機に警視庁や関係機関と連携し加盟する多数の警備会社と一致団結して2年後の東京2020を成功に導くため、一層のご指導ご鞭撻をお願いします。

特集ワイド 「国際テロ要覧」を読む2018.7.21

公安調査庁は6月22日、世界のテロ組織の実態などをまとめた2018年版「国際テロリズム要覧」を公表した。2019年にG20大阪サミット、ラグビーワールドカップ、2020年に東京五輪・パラリンピックを控え、テロ防止が課題の警備業界にとって参考になる内容となっている。元法務省公安調査庁関東調査局長で企業危機管理コンサルタントの岩井克己氏に、要覧のポイントと解説を寄稿してもらった。

公安調査庁は、テロの未然防止を目的に、国際テロ関係情報を収集・分析し、毎年6月末に「国際テロリズム要覧」を公表している。今年度の要覧では、世界の61の国・地域におけるテロ情勢を分析し、300以上の組織について解説している。

要覧によると、「イスラム国」(IS)が標榜した「カリフ国家」は事実上崩壊したが、逆にISに関連したテロは世界各地に拡散し、「依然としてテロの脅威は深刻」と分析している。また、警備の困難なソフトターゲットを狙って、グループでなく単独犯による「ローンウルフ(一匹狼)」型テロ事件が増加傾向にある。

“名指し”された日本

日本は、かねてからイスラム教スンニ派の過激組織ISや、アルカイダなどからテロの対象として名指しされている。来年以降に日本で開催される数々の大規模イベントは、テロ組織にとって格好の宣伝機会ともなり得るため、これまで以上の警戒が必要であると要覧は強調する。

国際的に注目される大規模イベントは、過去にもテロの標的にされてきた。1972年のミュンヘンオリンピック事件では、犯人5人のほか、人質9人全員と警察官2人が死亡し、オリンピックは一時中断した。2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件では、手製爆弾が爆発して3人が死亡、200人以上が負傷した。今年6〜7月に開催されたFIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会では、ISの支持者らがウェブサイトでテロ活動の呼び掛けを活発に行った。

IS支持者はSNSなどを使って、日本を含む「東アジア」でのテロの実行を呼び掛けている。海外で邦人がテロの被害に遭う事案は昨年、アフガニスタン爆弾テロで邦人2人が負傷するなど、ほぼ毎年発生している。中東に限らず、多くの邦人観光客が訪れて日系企業なども多い欧米や東南アジアにおいて、今後も十分な注意が必要であると要覧は指摘する。

ISは生き残りを模索して各地の支持者らにテロ実行の呼び掛けを続ける。今年4月、ISは声明で、昨年の最高指導者声明に続き「ジハード」継続を強く呼び掛けた。さらにシリア、イラクで戦闘に参加した外国人戦闘員(FTF)が母国などに帰国し、テロが拡散することも懸念される。この「帰還FTF」は5600人以上にのぼり、テロの脅威は深刻だ。

欧米諸国ではISの退潮に逆行するように、IS関連のテロが2016年には前年の10件から22件に倍増。2017年は24件に増加した。

テロの類型では、(1)テロ組織の中枢が関与し組織から送り込まれた戦闘員らが実行した「中枢指揮」型(2)組織の戦闘員からの指示に基づいて計画・実行された「遠隔操作」型(3)単独犯の「一匹狼」型――の3種がある。2017年に起きたテロで(1)と(2)は確認されておらず、もっぱら(3)の「一匹狼」型だ。これは、IS中枢の戦闘員が激減しているためとみられる。

車両を使う手口が増加

標的とされた大部分は、市民が多数集まるソフトターゲットだった。警備の厳重な施設を避けて、イベント帰りの市民や目抜き通りの観光客などが狙われた。テロの手口は、爆発物を用いた事例も散見されたが、大半が刃物や車両など身近なものを用いた事件で、特に車両テロの増加が目立つ。ISは機関誌などで、テロの標的の選び方や犯行手口を“指南”しており、警備対策が急がれる。

今年3月、フランス南部カルカソンヌで人質立てこもりテロが、5月にはパリでナイフを用いた襲撃テロなどが相次いだ。

東南アジアでは昨年5月、フィリピンでIS支持組織がミンダナオ島マラウィの警察署、市庁舎などを同時に襲撃し市内中心部を10月まで5か月間にわたり占拠した。

インドネシアでは昨年5月、東ジャカルタで自爆テロが発生したほか、今年5月にスラバヤでのキリスト教会や警察署に対する連続自爆テロが起きた。マレーシアでは昨年2月、首都クアラルンプールでの自動車爆弾テロ計画に関与したIS支持者らが逮捕された。

ソフトターゲットにおけるテロ対策を強化するためには、官民が一体となった対策を推進することが重要だ。全国各地で警察が中心となり、警備業界も含んだ「官民パートナーシップ事業」が推進されている。警察や自治体等の関係機関に加え、電力、ガス、情報通信、鉄道等の重要インフラに関わる事業者や、大規模集客施設を営む事業者等が加入して、テロ対策の研修や訓練に取り組む。

例えば東京では「テロ対策東京パートナーシップ推進会議」が2008年に設置され、警察署レベルで官民挙げての活動を展開する。兵庫県では昨年、「テロ対策兵庫パートナーシップ」が発足し、訓練や研究会などを活発に行っている。