警備保障タイムズ下層イメージ画像

クローズUP

労基署指導で取引改善2018.12.21

中企庁 警備業事例を報告

中小企業庁は12月13日、官邸で「中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキンググループ」を開催した。長時間労働の是正や生産性向上、人材確保の取り組みなどについて省庁横断的に必要な検討を行うもので、今回が6回目となる。

厚生労働省は、警備業での働き方改革を阻害する取引環境を、労働基準監督署の指導で改善した事例を報告した。内容は次の通り。

都内の従業員数350人の警備会社が、防災施設の警備業務に就く警備員14人に対し、36協定を超えて1か月100時間超の残業を行わせていたとして、労働基準法第32条(労働時間)違反として指導された。

指導を受けて同警備会社は、発注元に対して請負代金の値上げを要請するとともに、警備配置数の削減を提案した。また、警備配置数が過大な業務については業務委託契約の解除を申し出た。その結果、業務量の削減と受注単価が改善され、警備員の残業時間が短縮された。

このほか会合では、厚生労働省が全国に設置している「働き方改革支援センター」や、中企庁の「よろず支援拠点」などの経営支援機関などに寄せられた働き方改革に対する中小企業・小規模事業者の“声”と、その対応が報告された。

警備業今年のニュース102018.12.21

2018年は警備業にとって大きな変化のきっかけとなる1年だった。全国警備業協会が適正取引を推進するための「自主行動計画」を策定、働き方改革法が成立して対応を求められることとなった。これらが警備業の発展につながることを期待したい。また叙勲受章や協会法人化30周年などうれしいニュースもあった。

適正取引推進へ「自主行動計画」

発注者による「買いたたき」や「書面不交付」などによる不利益を防ぎ、警備業各社の経営基盤強化を推進――。全国警備業協会(青山幸恭会長)は3月29日、適正取引の推進に向けた行動のあり方を示した「警備業における適正取引推進に向けた自主行動計画」を策定した。適正取引を行う上で問題となる事例を示し、該当する下請法などの法令を参考に挙げながら、不当な行為を防ぐために取り組むべき方策を紹介した。

地方警協が行ったアンケートでは小規模の2号警備業者から「買いたたき」や支払い遅延が横行しているという声が挙っており、一刻も早い状況改善が求められる。

東京五輪警備共同企業体が発足

2020年の東京五輪大会の民間警備を担う「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体」が4月3日、設立された。共同代表にはセコム(東京都渋谷区、中山泰男社長)とALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)が、理事会社には1都3県に本社を置く12社が就任した。

JVは参加企業100社・動員警備員1万4000人の“オールジャパン”による大会警備を行う予定。1都3県だけでなく、全国の警備会社に参加を呼び掛けた。

「7月豪雨」で警備員が死亡

「平成30年7月豪雨」で、岡山県の警備員2人が死亡した。総社市内で、近畿警備保障(岡山市、松尾浩三社長)の警備員10人が通行規制業務をしていたところ、川の水位が急激に上がり氾濫し、2人は流されて亡くなった。

この「7月豪雨」で甚大な被害があった岡山、広島、愛媛の各県警備業協会は被災地で防犯パトロールを行った。このうち岡山では県との災害支援協定に基づいて、災害支援活動を有償で行った。

愛媛県警察本部の山内泰・生活安全部長は10月、愛媛警協にボランティアパトロールをした功績で感謝状を贈った。国土交通省・川﨑茂信中国地方整備局長は11月、災害対応に当たった功績で近畿警備保障と亡くなった2人を含む同社警備員10人に感謝状を贈った。

「人手不足」続く 業界PRに注力

今年も人手不足に悩まされた1年だった。各地の警備業協会では「警備の日」のイベントなどで警備業をアピールしたり、自治体の行事などに参加して周知活動に努めた。全国84か所のハローワークとも連携。「人材確保対策コーナー」が設けられ、警備業協会と会員各社が相談ブースを設置して採用活動に力を入れた。

人材確保策の一つとして注目されるのが、女性警備員の拡大。岐阜県警備業協会(幾田弘文会長)は県内の女性警備員比率を現在の4.1パーセントから10パーセントまで高める数値目標を掲げた。

警察庁が報告書 教育等見直しへ

警察庁の「人口減少時代における警備業務の在り方に関する有識者検討会」は4月、「新しい警備業」の方向を示す報告書をまとめた。これを受けて警察庁は配置基準や大規模イベントでの警備員の業務、警備員教育、検定制度など現行制度見直しに着手した。2020年東京五輪までに運用を始める考え。イベント会場での警備員の業務の明確化さや警備員教育での時間数削減など警備会社の負担軽減を図る。

検討会では人口減少時代でも警備業が生活安全産業として社会に寄与し続けるための施策が話し合われた。

働き方改革法成立 年休不与で罰金

従業員が働きやすい職場づくりに待ったなし――。働き方改革関連法案と呼ぼれる一連の労働改正法が6月29日に国会で成立した。来春から施行され、残業時間の上限規制や、10日以上の年次有給休暇を持つ従業員への5日付与など、長時間労働が常態化し人手不足に苦しむ警備業界には新たな取り組みが求められる。

上限規制については、建設事業での交通誘導警備業務に限り5年間適用が猶予される。年休付与が守られなかった場合は、企業規模に関わらず事業者に対し6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる。

30周年記念式典9警協で開催

9県の警備業協会が法人化30週年を迎え、記念式典・祝賀会を開いた。

▽石川県(宮野浩会長。1月30日・金沢市)

▽群馬県(川﨑弘会長。2月12日・前橋市)

▽鹿児島県(上拾石秀一会長。7月19日・鹿児島市)

▽岐阜県(幾田弘文会長。10月7日・岐阜市)

▽鳥取県(藤田泰央会長。10月12日・鳥取市)

▽岩手県(阿部正喜会長。10月19日・盛岡市)

▽富山県(木下勲会長。10月23日・富山市)

▽青森県(柿﨑忠雄会長。10月24日・青森市)

▽島根県(吉岡健二郎会長。11月6日・松江市)

警備の日4年目各地でイベント

制定4年目となる「警備の日」(11月1日)記念イベントが各地で開かれた。各地の協会は内容に工夫を凝らし、警備業をアピールした。

東京は女性アイドルによる護身術教室や警備ロボット展示、ヨーヨー釣りなどさまざまなイベントを同時開催した。岐阜は3回目となる「子ども絵画・作文、写真コンクール」、広島は幼児や小学生による「キッズ警備員」を組織。敬礼や金属探知機による検査を指導した。

警備ロボット開発、実験続く

人手不足を背景に警備会社による警備ロボット開発や、人工知能を活用したカメラによる警備や実証実験が相次いだ。セコムは3月に自律走行できるロボット「セコムロボットX2」を発表した。

西武鉄道の駅ではアースアイズ(東京都中央区、山内三郎社長)らが自律走行できるロボを使い、不審者検知や対応の実験を行った。このほか羽田空港や都営地下鉄構内などでも、ALSOKなどが参加して実証実験が行われた。

警備業から3人が受章

警備業から3人が叙勲を受章した。春の叙勲で、橋本満氏(広島警協会長=当時)が旭日小綬章を、山口俊和氏(兵庫警協副会長)が旭日双光章をそれぞれ受章した。

3月28日に死去した樋口恵二郎氏(元埼玉警協会長)には、同日付けで旭日小綬章が贈られた。

岐阜発 提言 心は一つ「警備なでしこ倍増」2018.12.21

岐阜県警備業協会 女性部会長
セキュリティー 取締役社長 中西昌美氏

岐阜県警備業協会(幾田弘文会長)では今夏、女性部会が発足し、私は部会長に任命されました。協会の担当理事である森幸恵さん(大警社長)を中心に、会合を重ねるたびに参加者も増えています。現在は、1・2号警備の現場を経験した女性経営者12人のメンバーとなりました。

私たちには大きな目標があります。警備業界にとって最大の課題である「警備員不足」を補うために県下の女性警備員<警備なでしこ>を現在の225人から550人に倍増させるというものです。全警備員構成の割合でいえば、4.1パーセントから10パーセントまで引き上げるという“一大ミッション”なのです。

これは幾田会長が今年の新年互礼会で表明されたもので、達成への道のりは並大抵でないことは会長ご自身も承知されています。それでも、将来を見据えたとき警備業界にとって女性警備員は、なくてはならない存在であることもまた、皆さんが認識されていることではないでしょうか。

私たちは“よちよち歩き”ではありますが、少しでも、一歩でも目標に近づけるように知恵を絞り、心を一つにして、がんばろうと話し合っています。女性部会の初会合で、私はこう呼び掛けました。

「警備業は人手不足の中、警備員の処遇改善が喫緊の課題となっています。私たちは女性が働きやすい警備の職場づくりに取り組み、<警備なでしこ>の仲間を増やしましょう。女性警備員が拡大して女性が気持ちよく働く職場には、自ずと男性警備員も若者警備員も増えることになるのではないかと考えています」

思い返しますと、おおまかな理想を述べたのですが、部会の皆さんには快く賛同していただきました。本当に感謝です。

まず現状を知る

具体的に行ったのは、まず現状を知ることでした。2つのことを実施しました。1つは、実際に警備の現場に従事している女性警備員を部会に招き、「生の声」を聞くこと。2つ目は、警備業以外で働いている女性に対し、彼女たちが警備業を選択肢の一つと考えるようになるには何が必要なのかを問うアンケート調査でした。

「生の声」には、私たちの仲間である女性経営者5人と女性警備員9人が参加してくれました。結果は、ある程度予想していたものの、にわかには信じがたい声も聞かされたのです。次のようなものでした。

「私はシングルマザーの警備員です。日ごろ、子供には、かまってやれず不登校になり、車で現場に連れて行き、車中で待たせました。休憩時間には走って取って返し、少しおしゃべり相手になり、コンビニ弁当を手渡しました。私は昼食抜きでした」

「現場には簡易トイレがないと聞き、もしものために成人用のオムツを用意して業務をこなしています」

アンケートの回答では、処遇に関するものが多くを占めていました。その一つに「きちんと週休があり、月給は手取り20万円以上」というのがあったのです。現状では、要求を満たすことは難しく、乖離の大きさに心がくじけそうになりました。

SNSで励まされる

そんな私を勇気づける出来事がありました。「生の声を聞く会」の模様をつぶさに当社のSNSにアップしたのです。全国の女性警備員から多くの励ましのメッセージを頂きました。それは県内にとどまらず、島根、鳥取、愛知、福岡各県の方々から「私の県でも女性部会を立ち上げたい」「女性警備員の声を聞き、働きやすい環境を整えてほしい」「応援しています」など、心に響く多くのエールを頂いたのです。

今、私たちは協会と協力して、県内の女性警備員が揃って着用する統一の制服づくりに取り組んでいます。着心地の良い、オシャレなユニフォームを目指しています。肩口には所属会社のワッペンを付けます。これも「生の声」を受けてのものです。

デザインは全国の制服会社、警備用品メーカー、デザイン学校に協力を呼び掛け「女性制服デザインコンクール」を経て決めたいと考えています。受注会社も相当数の販売が見込まれ、参加してくれるものと期待しています。

私事になりますが、私は今夏から経営側に立つことになりました。セキュリティー(岐阜市)の幾田会長からは「会社は家族だ。私心を捨て、良心に基づいて決断と行動は素早く、ときに待つことも必要になるかもしれない。要は社員と家族の生活を守り、働きがいのある職場を作ってほしい」と言われました。

私には女性部会のメンバー、社員という素晴らしい仲間がいます。「人は宝」――この言葉を胸に、これからも精いっぱい努力して、会社と女性部会に「宝」を増やしていきたいと気持ちを引き締めているのです。ご協力をよろしくお願いいたします。