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クローズUP

警備技能デモンストレーション2017.10.11

東京警協が初開催

東京都警備業協会(中山泰男会長)は10月3日、初めての「警備技能デモンストレーション」を台東区内で開催した。中山会長と協会役員、警視庁、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会警備局の関係者、会員の総計230人が参加した。

「東京2020」に向けて人材確保とともに、国際テロの未然防止や外国人対応などが課題となる中、“警備員の更なるスキルアップ”を打ち出す取り組みだ。

混雑する競技会場付近を想定してメガホン型の翻訳機を使った3か国語(英・中・韓)による警備広報や車いす利用者への適切な対応などを実演した。手荷物検査(スクリーニング)では、刃物を持った暴漢に対し、警備員が刺股を使って身柄を確保する実技を披露した。

警備技能デモンストレーション実行委員会(委員長・中田文彦常任理事)は、東京五輪の安全な開催に向けて真剣に取り組む警備業界の姿を、業界内だけでなく、より多くの人々に知ってほしいとの思いを込めて準備を進めた。協会事務局が警視庁記者クラブを通じて呼び掛けたところNHKと民放テレビ各局が取材に訪れた。

「交通誘導、適切な積算費用を」2017.10.11

全警協「対策協への対応を通知」

全国警備業協会(青山幸恭会長)は9月28日、「交通誘導員の円滑な確保に向けた交通誘導員対策協議会への対応について」の“第三報”を都道府県協会に通知した。6月に国土交通省が出した通知「交通誘導員の円滑な確保について」に関する“補足通知”を、同省と警察庁が9月22日に出したのを受けたもの。

全警協は補足通知を踏まえ、「交通誘導員対策協議会」への参画を都道府県警備業協会が求められた場合、次の事項に配意して対応するよう求めた。

交通誘導員対策協議会では、交通誘導に係る費用の適切な積算、適切な工期設定、施工時期などの標準化が検討すべき重要なテーマ。協議会への参画に当たっては、費用の適切な積算の検討を積極的に働きかけ、適正警備料金の確保と労働条件の改善に取り組むことが前提となる。

自家警備は警備業法の趣旨に反し、軽々に容認できない。配置路線の指定の有無に関わらず、工事現場などの安全確保の観点から、可能な限り高度で専門的知識と技能を有した警備員を配置することが原則。やむを得ず自家警備員を配置する場合であっても、その措置はあくまでも交通誘導員ひっ迫に対応するための例外的・臨時的なものであることを明確にする。

交通誘導警備員ひっ迫の認定判断は、都道府県警備業協会が判断するなど厳格に行う。

特集ワイド2017.10.11

APSA基調講演から

「21世紀の治安と民間警備業の役割」 元警察庁長官 米田壮氏

9月13〜15日に広島市で開催された「APSA(アジア太平洋警備業協会)国際会議広島大会」では、2つの基調講演が行われた。講師の元警察庁長官・米田壮氏と元総務省消防庁長官・久保信保氏は、それぞれの立場から安全安心に向けた提案と報告を行った。講演の内容を抜粋して紹介する。

我が国の刑法犯認知件数は、平成14年に戦後最多となったが、政府の犯罪対策閣僚会議を中心に官民あげて対策を推進した結果、犯罪は14年連続で減少し平成28年には戦後最少となった。成果を上げた犯罪抑止策は2つある。まず「犯罪への防御力の強化」で、安全安心街づくりの推進や住宅の防犯性能向上、犯罪情報の共有促進などにより犯罪への防御力を強めた。

もうひとつは「犯罪の追跡可能性(トレーサビリティ)の向上」で、防犯カメラの設置など犯罪の事後追跡しやすくして、犯罪を行えば捕まる可能性を高める「検挙の威嚇力」による心理的な抑止力の強化を図った。 しかし思うように効果が上がらない犯罪もあり、それが現在の治安上の課題となっている。“強い犯罪者”と呼ばれる捕まることを恐れない犯罪者による3つの犯罪が挙げられる。

「ストーカー殺人」は極めて強い殺意を持ち大胆な犯行に及ぶ。危険人物を拘束する制度を作る議論があるが、人権と安全の兼ね合いとなり合意に至ることは難しい。社会への復讐が動機となる「アベンジャー型犯罪」も増えている。秋葉原で2008年に2トントラックを群集に突入させた殺傷事件があったが、事件を起こすこと自体が目的なので、犯人は犯行後、捕まることを恐れない。

「テロ」は主義主張を伴う殺傷行為であり、特にOECD加盟国で多く34か国中21か国で発生している。国内で生まれ育った者が国外の過激派組織の主義主張に共鳴し、自国で起こす「ホームグローンテロリスト」も増えている。イスラム過激思想に影響を受けた者による、欧米など先進国でのテロ事案が2014年以降、相次いで発生した。テロを未然防止するには事前情報を得る必要があるが、最近は情報収集が困難になってきた。ネットで爆発物の知識を得て、組織の支援がないローンウルフ(単独犯)型テロも多い。ニースで起きたトラック突入テロと秋葉原事件を比べると、テロとアベンジャー型犯罪には共通する要素があることに気付かされる。

「検挙が非常に困難な犯罪」も増えている。その筆頭が「特殊詐欺」だ。詐欺グループの中核まで捜査が及ぶことは極めて少ない。また「サイバー攻撃」も急増している。サイバー空間では攻撃側が圧倒的に有利であり検挙できる確率は少ない。

21世紀の治安課題への解決策として、マンパワーの積極的投入がある。幅広くきめ細かな対応が一層求められ、民間警備業へのニーズは今後更に高まる。テロリストは捕まることや死ぬことは恐れないが、犯行前に見つかることを嫌がるため人の目が牽制になる。「事前旅客情報システム」や「生体情報認証システム」など制度整備によるテロ対策も進んでいる。「画像認証システム」など科学技術の活用はソフトターゲットのテロ防止に効果的だ。ネット上の情報をAIを使い解析する先端技術も進んでいる。

2020東京五輪・パラリンピック警備が課題といわれているが、前年の2019年も警戒が必要だ。ラグビーW杯が全国12の会場で行われるほか、G20が日本で初開催される。また天皇陛下生前退位による新天皇即位に伴い行事が行われる可能性がある。この2年間は官民連携による最大限の治安リソースを導入して、テロ、サイバー攻撃を未然に防がなければならない。

「東日本大震災と日本の消防」 元総務省消防庁長官 久保信保氏

現在、フルタイムの「常備消防」は全国に約16万人、「非常備消防」として他に仕事を持ちながら、有事の際に消防活動に加わる「消防団員」は全国に約86万人いる。いずれも地方公共団体である市町村の組織であり、消防実動部隊の管理者は市町村長である。消防の業務は消火のほかに救助、救急搬送があるが、これらは典型的な業務であり、消防組織法には「災害を最小限度に食い止めること」が消防の任務と定めてある。

1995年1月17日の阪神淡路大震災発生時には各地から常備消防員が駆け付けたが、全国的な応援システムがまだなかったため指揮系統がわからず、大混乱が生じた。そこで同年6月に「緊急消防援助隊」のシステムが作られた。平成15年の消防法改正により緊急消防援助隊は法制化され大規模災害発生時の消防庁長官の指示権が創設された。この指示権が初めて使われたのが東日本大震災だった。

私は、2011年3月11日に東日本大震災が発生した当時の総務省消防庁長官を務めた。そのときは、全国の消防職員のうち5人に1人に被災地に応援出動していただいた。また震災に併せて起きた東京電力福島第1原子力発電所の事故についても、東京消防庁をはじめとする大都市の常備消防員の出動をアレンジさせてもらった。

東日本大震災では消防団の死者・行方不明者は254人、重傷者198人だった。一方、消防職員は死者・行方不明者27人、重傷者24人で、桁が違う程、消防団に被害が多かった。これは地域密着の消防団が最初に消火活動に入るためだ。6月6日までの88日間における消防機関の派遣人員総数は約3万人。航空部隊は人命救助、空中消火および情報収集などに、陸上部隊は消火、救助、救急活動などに従事し、現在までに把握している救助者数は5064人にのぼる。

「自主防災組織」は、地域住民が「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識に基づき自主的に結成し、自発的な防災活動を行っている組織だ。主に町内会・自治体の規模で設置・運営されており、組織の隊員はその地域に住んでいる住民で、平成28年4月1日時点で組織数16万1847団体、世帯数は4657万世帯ある。大規模災害時に行政機関による救助が困難な場合、自主防災組織による自助・共助が非常に重要になる。

阪神・淡路大震災における生き埋めや閉じ込められた際の救助は、通行人・隣人・家族・自力によるものが約98パーセントを占めた。救助者数は、警察・消防・自衛隊によって掘り出された人が約8000人だったのに対し、市民によって掘り出された人は約2万7000人もあった。