クローズUP
しめやかに殉職警備員の葬儀2018.7.11
理不尽な凶行、強い憤り
富山市で6月26日に発生した「交番襲撃事件」に巻き込まれて、勤務先の市立小学校で銃撃により犠牲となった北陸綜合警備保障(本社・金沢市、森本昇社長)の富山交通管理センター警備員、中村信一さん(享年68)の葬儀が30日、中村家と同社の合同葬として市内の斎場で営まれた。葬儀委員長は森本社長が務めた。
祭壇には、児童などが事件現場に供えた花が移され飾られた。葬儀には、宮野浩・同社会長(石川県警備業協会会長)、木下勲・富山県警備業協会会長(富山県綜合警備保障)、富山県警察本部から成富則宏・警務部長が列席した。会葬者は150余人だった。
森本社長は「一瞬にして尊い命が奪われ、大変残念でならない。目配り、気配りのできる真面目で活動的な警備員でした」と無念さと、理不尽な凶行に強い憤りをにじませた。
同センター長の為井秀山さんは「中村さんとは年齢が同じということもあり、仕事以外でも親しく話し合える間柄だったのです」と故人を偲んで弔辞を述べた。小学校関係者は「いつも児童に声を掛けてくれ、教職員、PTAの父母からも、良い人柄で親しまれる立派な警備員さんでした」と話していた。
喪主の喜美江夫人は、会葬の人たちへの謝辞の中で「あの忌まわしい瞬間から、我が家の時間は止まってしまいました…」と言葉を詰まらせた。宮野会長は「あの一言には、みんな胸を痛めました。遺族の無念の胸中は察するに余りあるものがありました」と語った。
中村さんは2013年から同センターに勤務。当日は同僚2人と3人体制で交番に近い市立小学校の校門付近で耐震工事の関連車両を誘導していて凶弾に倒れた。
全警協・青山幸恭会長
富山市で警備員が職務中に銃撃され死亡した事件は、誠に残念で痛恨の極みです。故人及びご遺族の皆様方には、謹んで哀悼の意を表します。市民生活の安全と安心を担う警備員の今回のご逝去に接し、無念さとともに、憤りが込み上げてくるのを禁じ得ません。
全警協は、警備業の真の発展を目指し諸対策の推進に取り組んでおり、常に危険と隣り合わせにある警備現場での労働災害事故の防止を目的とした「第21回警備業全国安全衛生大会」を開催しようとした矢先に本事件が発生しました。
我々は、このような未曾有の悲劇に怯むことなく、これからも警察との連携を密にし、警備業の改革に邁進していく決意を強くしているもので、そのためには、皆様の協力が不可欠です。共に手を携えて前進していかなければなりません。
岐阜に女性部会設立2018.7.11
女性警備員、10%めざす
岐阜県警備業協会(幾田弘文会長)は6月28日、岐阜市内で「女性が活躍できる警備業確立のための意見交換会」を開いた。その中で、かねてより幾田会長が提唱していた「岐阜県警備業協会・女性部会」が正式に設立された。女性部会担当理事の森幸恵氏(大警)は中西昌美氏(セキュリティー)を女性部会会長に推薦、満場一致で就任が決定した。
幾田会長は5月の定時総会で、今年度の県協会の重点施策に〈警備なでしこ〉拡充を挙げた。県内の女性警備員の比率を現在の4.2パーセント(225人)から10パーセントまで高め、警備員不足の改善につなげる考え。
同意見交換会には幾田会長と森薫専務理事、森担当理事、中西部会長、宮口香緒里氏(香輝)、神山裕子氏(セキュリティシステムアサヒ)、篭橋真理氏(中部日本警備保障)、安藤久枝氏(東濃建物管理)と6人の女性代表者が参加した。
「女性警備員の制服を県内で統一させ警備員のイメージアップを図る」、「子どもがいる女性が働きやすい職場作りが重要」、「女性警備員を多数雇用している経営者に人材確保の方法を聞きたい」、「女性警備員にとってトイレの完備が勤務上の絶対条件」などの意見が出され、女性警備員の採用拡大、活躍に向けた岐阜警協のチャレンジがスタートした。
岐阜警協は8月24日、岐阜市内で「現場で働く女性警備員から生の声を聞く会」を開く予定だ。
警備員の熱中症対策を支援2018.7.11
スマホに情報、AIでリスク表示
クラボウ(大阪市、藤田晴哉社長)は、同社のシャツ型スマート衣料「Smartfit(スマートフィット)」を使用して警備員の熱中症対策を支援するシステム「Smartfitforwork」を開発、月額制のサービスとして提供中だ。
このシステムはスマートフィットを着用した警備員から得た心拍・温度・加速度(活動量)などの「生体情報」をスマホ経由でクラウドサーバーに送信。そのデータに作業者ごとの熱中症リスクや体調変化に関する独自のアルゴリズムを融合して熱中症リスクをリアルタイムに推定し、警備員の状態を管理者に通知することで熱中症リスクの低減をサポートする。
これにより管理者は遠隔からパソコン画面でスマートフィットを着用した全警備員の一括管理が可能だ。画面上にはリスクの高い警備員順に表示したり、リスクレベルに応じてアイコンを使った警告の表示ができる。リスクが高い時はアラート通知(表示・音・振動)により、迅速な対応が可能。
通知するリスク情報は、熱中症リスクと、体調管理、転倒転落(8月頃提供予定)の3項目。自動学習(AI)機能を持ち、警備員の過去のデータを踏まえた熱中症リスクや体調変化を把握する。同社では昨年5月から9月にかけて警備員を含む延べ約7000人のモニター調査を実施し、その結果を解析してアルゴリズムを作成した。環境温度など外的要素に体調など内的要素を併せることで、一人ひとりに合わせたより精度の高い作業管理を実現させている。
警備員はスマホ画面から自身のリスク情報や体調変化、消費カロリーを確認できる。IDカードにあるバーコードなどをスマホに読み込ませるだけでシステムを使用できるため、担当する人員の交代や人数の増減に対し柔軟に対応可能だ。
警備員の熱ストレスや作業強度、熱中症リスクを出力し、レポートとして“見える化”することで、熱中症対策に向けた環境改善の取り組みに活用できる。
スマートフィットは、導電性繊維と生体センサを用いて着用者の生体情報を取得・送信する。伸縮性や速乾性に優れ、着心地の良さと高精度な生体情報の取得を両立。ファン付き警備服と併用でき、生体センサを取り外せば洗濯できる。
サービス料金の参考価格は、初期設定費用(1ユーザー)3万円、月額費用(同)6000円。「スマートフィットシャツ」は別売りで1枚4000円(サイズは5段階)。すべて税抜き。
▽問い合わせ先「Smartfitforwork特設サイト」http://smartfit.jp/
特集ワイド 空港保安、スキル向上2018.7.11
2019年のラグビーワールドカップ、G20大阪サミット、2020年の東京五輪・パラリンピックなど国際的な大型イベントを控えて外国人旅行者も急増する中、空港の警備強化は重要課題だ。テロをはじめ事件事故を未然に防ぐため、ボディスキャナーなど最新機器の導入が進むとともに、旅客に対し保安検査を行って「空の旅の安全」を守る警備員は、より一層のスキル向上が求められている。
15空港の検査員が出場
各地の空港で保安検査を行う警備会社14社が参加した初となる「保安検査コンテスト」(主催=国内定期航空保安協議会、後援=国土交通省、全国警備業協会)が6月13日、羽田空港国際線旅客ターミナル内で開かれた。全国の65空港から直近1年間の利用客アンケートの結果などにより選出された、北は旭川から南は石垣まで15空港の保安検査員30人がスキルを競った。優勝を飾ったのは、羽田空港第2ビルから出場した全日警(東京都中央区、片岡由文社長)だった。
昨年まではJAL(日本航空)、ANA(全日本空輸)が、社内で保安検査コンテストを開催してきた。こうした中でJAL、ANAなど航空会社14社が加盟する同協議会は、2020大会に向けて空港保安の強化、検査技術の向上のため出場者が互いに技能を高め合うことを目的に会社横断の取り組みとして開催し、約250人が参加した。
近年、ベルギーやトルコの空港でテロ事件が発生し、これを受けて国土交通省は「テロに強い空港」を目指して検査機器の導入促進や警備体制の強化を打ち出している。
また、訪日外国人客数は昨年、2869万人(前年比19.3パーセント増)で過去最高を記録するなど増加が続き、検査の厳格化と合わせて、よりスムーズに検査を行う上でも保安検査員のスキルアップは重要なテーマだ。
確実・迅速・丁寧を審査
実技はステージに模擬の保安検査場を設置。警備各社の「案内担当者」と「接触検査担当者」が2人1組で登場した。スタッフが扮する男性客が門型の金属探知機をくぐると、金属反応が出た。接触検査担当者は、携帯型の金属探知機で入念に検査。男性客のポケットにはカッターナイフがあった。「機内で作業に使いたい、見逃してもらえないか」と頼む男性客に対し、刃物は禁止品であることを説明し、その場で「放棄箱」に入れることに同意してもらう。このほか、日本語も英語も通じないタイ人、フランス人の旅客に、案内担当者はボディランゲージを交えて搭乗券の提示を求め、手荷物に禁止品がないか確認した。制限時間は10分で5人の客に対応し、決められた検査手順を守った上で「確実・迅速・丁寧」などのポイントが審査された。
優勝した全日警警務本部の塚田良昭執行役員空港保安部長は「確実な安全安心を提供するために教育と各種訓練の充実を図ることに加えて、接遇マニュアルを作成して言葉遣いや気配りなど接客面のスキルアップにも力を入れている」と取り組みを語った。