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クローズUP

改正「特措法」を施行2020.3.21

緊急の金融措置も

政府は3月14日、改正「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を施行した。同法は2009年に発生した新型インフルエンザの経験を踏まえて2012年に制定。現在、世界的規模で急速に広がっている新型コロナウイルス感染症を同法に基づく措置の対象に加えた。これにより、同感染症の全国的かつ急速なまん延で、国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあると認められた時に政府は「緊急事態宣言」を行う。同宣言では、外出自粛要請や興行場・催し物などの制限の要請・指示、臨時の医療施設などの設置などが可能となる。

3月10日には、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の“第2弾”を取りまとめた。感染拡大を防止するとともに、財政・金融措置合わせて2兆円規模の対応を行う。事業活動の縮小や雇用への対応では、雇用調整助成金の特例措置を拡大するとともに、一部地域の助成率を上乗せする。また、総額1・6兆円の緊急対策関連の金融措置を行う。具体的には、5000億円規模の「新型コロナウイルス感染症特別貸付制度」を創設。金利の引き下げや中小・小規模事業者への実質的に無利子・無担保の資金繰り支援を行う。このほかにも、日本政策投資銀行や商工中金の危機対応業務などを実施、企業の資金繰りなどを支援する。

厚生年金、適用を拡大2020.3.21

パートや短時間労働者

厚生労働省は、パートなど短時間労働者の厚生年金保険への適用を段階的に拡大する。3月3日に改正法案が閣議決定され、今国会での成立を目指す。

現在、パートやアルバイトなどの短時間労働者で厚生年金への加入が義務付けられているのは(1)勤務時間週20時間以上(2)月額賃金8・8万円以上(年収106万円以上)(3)勤務期間1年以上(4)勤務する会社の従業員数501人以上――の全てを満たす人。2022年10月からは会社の従業員数が101人以上、24年10月からは51人以上の企業で働く人も厚生年金への加入が義務化される。

警備業でも今後、「週3日」などで警備員として働く短時間労働者を厚生年金に加入させる必要があるが、年金保険料は“労使折半”となっており、会社には負担増となる。従業員にとっても保険料支払いで手取りが減るため、その分の賃金アップが必要だ。

特集ワイド 新型コロナ イベント警備 打撃2020.3.21

新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の拡大が止まらない。WHO(世界保健機関)はパンデミック(世界的流行)を宣言。国内の感染者数は18日現在で907人に上る。感染を防ぐためにスポーツ大会や文化行事は軒並み中止。娯楽施設が休館するなど経済に打撃を与えている。警備業にもイベント中止で業務がなくなり経営に深刻なダメージを及ぼしている。業界への影響とその対策を取材した。

新型肺炎は、イベント警備業務を手掛ける企業に打撃を与えている。

政府は2月26日に大規模なスポーツや文化イベントなどを2週間ほど控えるよう要請。中止になったイベントは選抜高校野球大会といった大規模なものから自治体のスポーツ大会、町内行事など規模を問わない。

イベント警備業務を手掛ける多くの企業では、予定していた業務が軒並みキャンセルされている。キャンセル料は「直前で手配が済んでいるものは全額の何割かを請求する」といったものから「事情が事情だけに請求はできない」「請求できる相手とできない相手がいる」などさまざまだ。

しかし3月以降に予定されていた業務については、売上はほとんど見込めない。都内の警備会社の経営企画担当者は「東日本大震災発生時も自粛ムードと電力供給不足によってイベント関連が全て中止となったが、4月半ばからは、ほぼ計画通りに行われた。今回はいつ収束するか分からないため不安だ」と述べる。別の企業の経営者は「当面は内部留保でしのぐしかない。3月中のイベント警備がほとんど中止になったのは打撃だが、それ以上に問題なのは4月以降の見通しが立たないこと。イベント自粛が長期化すれば、非常に厳しい状況といわざるを得ない」と不安を募らせる。

自粛収束後にも不安が残る。コンサートなどを手掛ける芸能イベント主催会社は規模の小さな事業所が多いため、イベントがいくつか中止になれば運転資金がショートして経営破たんする恐れがあるからだ。新型肺炎が収束してもイベントを行う企業がなければ警備業務の需要もなくなる懸念がある。

一方で同じ2号警備でも交通誘導警備は業務中止になったケースは少ない。国土交通省は受注者の意向を受けたうえで全国で約9000ある直轄の公共工事を一時中止にする方針を示していたが、中止となったのは全体の2パーセント(200件)だった。

施設常駐警備でも現時点で売上に与える影響は少ないようだ。セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は「これまでと変わりなく業務をしている」、アール・エス・シー(東京都豊島区、金井宏夫社長)は「警備業務を手掛ける大型ビルの一部施設が休館となったが、巡回ルートが減るだけで警備員の配置数などに変更はない」という。

美術館や博物館などの施設は休館しているが、施設自体は警備する必要があるため人数は減らしているものの警備業務は行っている。営業時間を短縮した商業施設でも同様だ。しかし長期化すれば業績に与える影響は大きくなるという声もある。

孫の面倒見る

文部科学省の通知によって全国の小中学校、高校などが臨時休校したため、従業員が休みを取るケースがある。共栄セキュリティーサービス(東京都千代田区、我妻文男社長)では高齢の警備員から「息子夫婦が孫の面倒を見てほしいと頼んできたので休ませてほしい」と申し出があった。当然許可した。

リライアンス・セキュリティー(広島市、田中敏也社長)の場合は内勤の男性幹部社員が田中社長に「小学生の子供たちの世話をしなければならないが、自身も妻も業務が忙しくて休むことができない」と相談してきた。田中社長は会社の懇親会で利用している焼肉バイキングレストランの店長が、利用客が激減しているので店を休み児童を受け入れることにしたという話を伝えたところ、その社員は子供たちを預けることを決めた。

店長は保育士と幼稚園教諭の資格を持っており、「おやつ代」だけを受け取り、子供たちを引き受けている。

マスクの自作も

警備会社にとって業務量の縮小とともに、警備員の新型肺炎感染も懸念するべき課題である。警備員自身の生命や健康を脅かす危険はもちろん、発注主や警備する施設の利用者などに大きな迷惑が及ぶためだ。多くの警備会社は感染対策として警備員のマスク着用や手洗い奨励などを行っている。業務中のマスク着用は発注主から義務付けられることもある。

近畿警備保障(岡山市、松尾浩三社長)はそれらの取り組みに加えて体温計15本を購入。警備員と内勤社員など全員の体温を毎日、朝礼時に測定し、直行直帰の警備員は自宅で検温して、すべてデータ履歴を残している。基礎体温には個人差があるが、体温が37・2度以上あった場合は報告を義務づけ、37・5度で自宅待機と決めている。データは客先にも公開することで信頼につなげている。

同社ではマスクが市場に品薄なことから、客先から提供してもらえる現場を除いて、社内の備蓄分を少しずつ使用したり、社内講習会を開きキッチンペーパーと輪ゴムを使って自作している。消毒液もエタノールを一斗缶(約18リットル)で購入して、スプレーボトルに入れて使用。社内の各部屋と車両約80台を毎日手分けして拭いている。

セコムは現金輸送警備部門での衛生管理を徹底する。紙幣や硬貨など不特定多数の人が触れるものはウイルスが付着している可能性があるため、警備員に加えて内勤スタッフにも消毒液を使った手洗いを義務づけている。