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クローズUP

課題克服、舵取り問われる2020.06.11

総会

コロナ禍の中で開催が続く都道府県警備業協会の総会。宮城、大阪などでは新会長が誕生した。感染予防と仕事量の確保など、課題克服へ警協会長の舵取りが問われる。

沖縄警協

活況戻ると確信

宮城正治会長(沖縄管理産業)が退任、池田典夫氏(沖縄綜合警備保障)が新会長に就任した。

宮城会長は新型コロナについて「現場にいる警備員を守りつつ、安全安心を提供しなければならない」と述べた。

池田新会長は「県内ではコロナにより経済が停滞しているが、それ以前は景気拡大が続いていた。この危機を乗り越えた後には、再び警備業界が活況を取り戻すものと確信している」と語った。

宮城警協

ダンピング防止を

9年にわたり会長を務めた千葉英明会長(ゴリラガードギャランティ)が退任、新会長には氏家仁氏(トスネット)が就任した。

千葉会長は「これまで培ってきた原理・原則を見失うようなことがあってはならない」と、コロナ禍を受けて県内で散見され始めた“ダンピング”に言及。「経営者としての正義が警備業の未来を拓く」と防止を訴えた。

氏家新会長は、青年部の活躍できる領域拡大を進めることを表明。「若い人の意見や考えを大切に、聞き入れる柔軟さを持って協会の発展を目指したい」と今後の抱負を述べた。

秋田警協

需要回復に期待

2001年から19年間、協会運営を指揮した内村和人会長(大洋ビル管理)が退任、辻本光雄副会長(ALSOK秋田)が新会長に就任した。

内村会長は「オリンピック景気が期待されたところに新型コロナが流行、経済が悪化した。警備業界にもイベント中止や建設工事中断などに伴う損失が出ている」と懸念を示した。

一方で「少しずつだが経済は上向きつつある」と、今後は警備業の需要が回復すると期待を述べた。

大阪警協

万博警備、早急に検討

2012年から会長を務めた若林清会長(武警)が退任し、寺尾政志氏(ALSOK近畿)が新会長に就任した。

若林会長は「22年前に理事に就任し、副会長10年、会長8年と協会のために尽力してきた。今後は一会員として協会活動に力を注ぎたい」と退任のあいさつを述べた。

寺尾新会長は「協会運営では、理事選出方法や会員活動の活性化など改善点が山積みだ。さらに、大阪・関西万国博覧会への取り組みとして、警備の方向性を早急に検討し提案する社会的義務がある」と課題と抱負を語った。

岩手警協

「恩返し」に尽力

阿部正喜会長(東陵総業)が退任、副会長の及川明彦氏(N・SAS)が新会長に就任した。

阿部会長は「今回役員改選を受けて新たな体制となる。協会と業界の発展を期してほしい」と、会員の協力を呼び掛けた。

及川新会長は「業界に入り30数年経過した。その間、協会講師を務め先輩方にお世話になってここまでやってきた。今の私があるのも諸先輩方のおかげだ。その恩を返すためにも協会を代表して尽力していく」と、決意と抱負を述べた。

高知警協

3課題に取り組む

2018年から会長を務めた篠原正人会長(セコム高知)が退任し、新会長には国安秀昭氏(黒潮警備保障)が就任した。

篠原会長は、新型コロナの感染拡大状況が警備業に与えた影響を述べるとともに、定時総会を大幅に縮小して開催するに至った経緯を説明、協力を求めた。

国安新会長は、今後の課題として(1)全国警備業協会策定の自主行動計画に基づく適正取引の推進(2)適正料金の確保(3)適正な労働環境による雇用の確保――を挙げ、「会員の理解と協力を得ながら、課題克服を実現するために全力で取り組みたい」と決意表明した。

兵庫警協も会費減免2020.06.11

岡山に続く 第2四半期、半額に

兵庫県警備業協会(今西義高会長)は6月1日、神戸市内で開催された定時総会で、協会会費の減免を決議した。新型コロナが加盟社の経営状態に深刻な影響を与えていることに配慮したもので、岡山県警備業協会の減免決議(6月1日号既報)に次ぐ決定となった。

減免の内容は、7月1日現在の全加盟社を対象に、第2四半期(7〜9月)分の会費5万4000円を一律半額にする。

減免により協会の収入は約920万円減収となるが、総会懇親会の中止などさまざまな出費を抑えることで約300万円を捻出し、残りの約600万円は、昨年度の協会利益分を運用する。

同警協は1996年度にも、阪神淡路大震災復興のために第1四半期の会費を全額免除した。

今西会長の話 減免は会社ごとに見れば少額ではあるが、「業界全体でこの難局を乗り越えていこう」という意思の表れと捉えてもらえればと思う。

特集ワイド 労災のない警備業2020.06.11

7月1日から「全国安全週間」が始まる。スローガンは「エイジフレンドリー職場へ! みんなで改善 リスクの低減」。厚生労働省は「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)に基づき、高年齢労働者も安心・安全に働ける職場づくりなどを推進する。警備業の労働災害防止へ向けた取り組みについて同省労働基準局の安達栄・安全課長に寄稿してもらった。

転倒、交通事故が多発

警備業における労働災害による休業4日以上の死傷者数は、ここ数年は前年を上回る状況が続いていましたが、2019年は1698人と、前年と比べ62人(3.5パーセント)の減少となりました。

死傷災害を事故の型別に分析すると、「転倒」が最も多く約38パーセント、次いで「交通事故(道路)」約14パーセント、「動作の反動・無理な動作」約13パーセント、「墜落・転落」約12パーセントとなっています。このうち、「転倒」と「交通事故(道路)」が警備業の労働災害の過半数を占め、重点的な対策が必要です。

19年の死亡者数は21人で、前年比10人(32.3パーセント)の減少です。事故の型別の内訳は、「交通事故(道路)」10人、熱中症を含む「高温・低温物との接触」4人、「おぼれ」3人、「激突され」2人などとなっています。20年は、5月現在の速報値で7人(うち交通事故で3人)が亡くなっており、前年同期比で3人増加しています。一方、休業4日以上の死傷者数は381人で、前年同期よりも2人(0.5パーセント)減少しています。

警備業の年齢別被災状況は、60歳以上の労働者の占める割合が48.4パーセントと、全業種平均の26.8パーセントに比べ相当高い水準にあります。50歳以上まで加えると全体の約7割を占め、その人数・割合ともに年々増加しています。

ガイドラインを作成

人は一般に加齢とともに、身体能力・感覚機能が変化します。特に、足の筋力、視力・聴力、バランス感覚、記憶力・判断力などが低下し、若年の頃と比べ、転倒や墜落・転落などの労働災害に遭いやすくなります。警備業は他業種に比べて高年齢労働者の割合が高く、高年齢労働者でも安全で快適に働ける職場づくりに努めていくことが重要です。例えば、床面の段差や凸凹を視認しやすいようにする、表示の字を見やすい大きさ・色にする、適切な照度の確保、取り扱う重量物の重さの制限、作業時間を見直す――などがあります。加えて、注意喚起だけでなく、高年齢労働者の心身機能の変化を踏まえた職場環境の改善を図っていくことが必要です。

厚生労働省は本年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)をとりまとめました。今後、ガイドラインの普及のための周知セミナーや関係機関・団体による中小企業に対する個別コンサルティング、中小企業事業者に対する補助事業(エイジフレンドリー補助金=競争的間接補助金)などの各種支援によって、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりを推進します。警備業でも、これらを積極的に活用してください。

わかりやすい合図

交通誘導警備と輸送警備においては交通事故対策が重要です。

道路工事などでの交通誘導警備では、不特定の第三者が運転する車両を対象とするため、警備員の意思が運転者に伝わりにくいなどの問題点があります。このため、相手にわかりやすく確実に合図を伝える、安全に配慮した適切な誘導位置を確保する、適切な装備品・保安用資機材を装着・使用する――など基本的な安全確保の徹底が欠かせません。

現金輸送車などの輸送警備では、「交通労働災害防止のためのガイドライン」などに基づき(1)適正な走行計画の作成(2)乗務開始前の点呼等による運転者の状況の確認(3)運転者に対する教育の実施(4)交通ヒヤリマップの作成や交通KYTによる危険感受性の向上(5)雪や大雨などにおける安全の確保――などに取り組むことが必要です。

転倒の原因を除去

警備業では、暗い夜間での警備や緊急時の駆けつけ、降雨・積雪のある屋外での警備など他の業種にはない課題もあります。また、警備場所の管理権限が及びにくいこともあると思われますが、警備場所のオーナーなど関係者の理解・協力を得ながら転倒の原因の除去や作業環境の改善を図ってください。同時に、警備員に対する危険予知訓練(KYT)などを通じた注意力の向上など総合的な転倒災害防止対策が欠かせません。厚生労働省でも「STOP!転倒災害プロジェクト」を実施し、事業場での転倒災害防止の取り組みの促進や支援を行っています。

コロナ禍での熱中症対策

2019年、警備業での熱中症での死傷者数は前年よりは減少したものの、依然として高止まりの状況です。

厚生労働省が実施中の「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」では、7月は重点取り組み期間です。警備業の作業現場では(1)黒球付測定器によるWBGT値(暑さ指数)測定と適切な作業計画(2)屋外での作業の場合に冷房や屋根などの休憩を取るための設備の整備(3)健康診断結果や点呼時を活用した当日の健康状態の把握(4)熱中症の早期発見と緊急時の対応についてあらかじめ確認し、救急車の要請など適切な対応――などへの取り組みが必要です。

また、気温が急に上昇した場合や雇い入れ時、休暇明けで身体が暑さに慣れていない時などに、熱中症は特に発生しやすくなります。暑さが本格化する7・8月に向けて、今一度、熱中症対策を再確認してください。

特に今年は、新型コロナウイルス感染症を踏まえて示された「新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式」の下、職場でも十分な感染症予防対策を行いながら、熱中症予防措置を講ずる必要があります。顧客や同僚労働者への感染を防ぐために、職場でも家庭用マスクを着用する機会が増えていますが、こまめな休憩と十分な水分補給を行うなどにより、熱中症を予防しましょう。

厚生労働省は、労働災害防止のために国・事業者・労働者などの関係者が重点的に取り組む事項を定めた中期計画「第13次労働災害防止計画」を策定、それぞれの業種の特性や労働災害の状況に応じた対策を講じることとしています。

19年度は、全国警備業協会の協力の下、警備業向けに雇い入れ時教育に活用できる「安全衛生教育マニュアル」を作成しました。同マニュアルは厚労省ホームページから入手できますので、社内の安全衛生教育に活用してください。