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クローズUP

東北地区連2018.6.21

「特別講習、合同開催を」

東北地区警備業協会連合会(千葉英明会長=宮城警協会長)は6月13日、仙台市内で2018年度の通常総会を開いた。東北6警協の会長と専務理事、全国警備業協会の福島克臣専務理事と小澤祥一朗総務部次長が出席した。

千葉会長はあいさつで、昨年10月の同地区連「会長等会議」で述べた“経営者の質の改善、意識改革なければ全て前に進まない”を再度訴え、「乗り切れば警備業の明るい未来と発展が待っていると信じてほしい」と、課題解決への更なる取り組みを求めた。

総会後、出席者が意見を交わす「協議」が約2時間設けられた。テーマは、東北地方の人口減少で切実な課題となっている「特別講習受講者減少への対応」と「警備員不足」に絞られた。主な発言は次の通り。

▽今春2回の交通誘導警備の特別講習を開いた。集まったのは40人で会場費を考慮すれば“赤字”だ。警備業は教育産業であり、各種教育で警備員の資質向上を図っている。このままでは特別講習が開催できないようになるのではないかと危惧している。特別講習の(近隣県との)“合同開催”を検討する時期に来ている。

▽(特別講習を地元で)1回もできないようであれば合同開催しかない。

▽昨年、貴重品運搬の特別講習を40人に満たずに開催した。4人いた協会講師は、3人が転勤や業務多忙で講師ができなくなり、外部に応援を頼んだ。その結果、大赤字となった。応援講師に対する警備員特別講習事業センターからの費用援助のある受講生40人と、援助のない39人では天と地の開きがある。

▽人口減少県にとって合同開催は一つの救済策だ。しかし、現行の特別講習実施の仕組み(受講生30人以上で事業センターから事務委託=特別講習実施可、40人以上で実施費用を援助など)の抜本的な枠組みの改善が必要。

▽一時は受講生が減ったが、最近は80人を超える。減った時に打った手が、非加盟社への呼び掛けだ。今は約1割が非加盟社。今年になってから多いのが首都圏(県外に本社、県内に営業所を持つ警協加盟社)からの受講だ。

これらの発言を受け、同地区連は特別講習の合同開催を検討していく。

警備員不足については「交通誘導警備の仕事に対するイメージが悪すぎる。原因は警備会社の側にある」、「外国人労働者についてのガイドライン研究をする必要がある」などの意見が寄せられた。

九州地区連2018.6.21

「人手不足に尽きる」

九州地区警備業協会連合会(折田康徳会長=福岡警協会長)は6月11日、2018年度の定時総会を福岡市内で開催した。8県協会の会長と専務理事が出席。全警協から福島克臣専務理事と小澤祥一朗総務部次長が参加した。

折田会長は「警備業が直面する問題は“人手不足”に尽きようかと考えます。警備員の処遇と労働環境の改善のために、〈警備業における適正取引推進等に向けた『自主行動計画』〉を実践していきたい」と決意を語った。

また、同会長は、昨年の九州北部豪雨・一昨年の熊本地震を振り返り、「災害時における警備業の重要さが認識されている。今後も災害に対し、自治体、警察など各方面と連携して警備業の役割を果たしたい」と述べた。

福島専務理事は全警協が取り組む重点項目として、(1)今年3月に策定した自主行動計画の推進(2)警備員不足を補うためのイメージアップ方策(3)オリンピックを含む国際化への対応――を挙げた。とりわけ、多くの時間を掛けたのが〈自主行動計画〉についての発言だった。

福島専務理事は、「警備業者が適正取引推進に向けて自主行動計画を実践し、定着させることは極めて重要であり、必要不可欠です。警察庁においても、その趣旨に賛同してフォローしてくれている。経営者、営業担当者は内容を十分に理解して活用してもらいたい。講習会、セミナーでの周知・啓蒙には、全警協スタッフの派遣を惜しまない」と呼び掛けた。

特集ワイド 巨大地震に備えて2018.6.21

東海から四国、九州地方にかけて甚大な被害が懸念される「南海トラフ巨大地震」。高知県と串本町(和歌山県)は、大阪市で6月に開催された「防犯防災総合展 in KANSAI 2018」でセミナーを開き、地域の減災への取り組みを報告した。揺れや津波、火災から命を守るための具体的な施策を紹介する。

〝命を守る対策〟加速

【尾﨑正直・高知県知事】

政府の地震調査委員会は今年1月、南海トラフ巨大地震が今後30年以内に発生する確率を70〜80パーセントと公表した。内閣府中央防災会議は最悪の場合、被災死者数は全体で32万3000人、経済被害220兆円と想定している。

高知県は黒潮町で最大34メートルの津波が襲い甚大な被害が予想されることから、2008年に「災害に強い地域社会づくり条例」を策定し“命を守る対策”を加速させている。陣頭指揮をとる尾﨑知事は6月7日、防犯防災総合展で「南海トラフ地震に立ち向かう高知県の挑戦」と題したセミナーを行った。同知事は地震対策計画として(1)命を守る(2)命をつなぐ(3)生活を立ち上げる――の3つを挙げた。

“命を守る”計画は、建築物の耐震化や津波からの避難路整備、火災の消火訓練を実施するほか、避難場所として「津波避難タワー」を県内115か所に建設予定で、109か所はすでに完成した。形状はまちまちだが全て予想される最大浸水深より2〜4メートル高く設計されている。高台避難が困難な高齢者などの安全を確保するため、全国初の「津波シェルター」が室戸市に完成。山の麓に掘ったコンクリート製横穴式で奥行は33メートル、71人の収容が可能だ。

“命をつなぐ”計画については、県内8か所に災害対策支部となる「総合防災拠点」を整備し専任職員を配置。震災発生直後は各地で道路の寸断や情報の錯綜・断絶が発生し、負傷者の救出や支援物資の輸送に支障が出る。早期の道路啓開計画を事前に策定し確認することを目的に総合防災訓練を実施している。そのほか救助・救出被災者の避難所確保・運営体制の充実を図っている。避難所避難者数は最大29万7000人を予想、1日89万リットルの飲料水を確保する必要がある。発災時は医療の需要に対して供給が絶対的に不足することから、後方支援に頼らない医療救護体制の整備を進めている。

セミナーの最後に尾﨑知事は「対策を進める上で自助・共助の意識を持つ“震災に強い人づくり”が重要」と強調した。啓発活動の結果、県民の津波からの早期避難意識率は2010年の約20パーセントから17年には約72パーセントへ上昇。揺れ被害への危機意識は15年度の調査で約80パーセントと高いものの住宅の耐震化や家具固定率はまだ低く、課題となっている。

高知県は、防災関連産業の振興を図っている。「防犯防災総合展」では「高知県産業振興センター」として県内11社が共同出展した。部材を差し込むだけのシンプルな構造で早期に構築でき威力を発揮する「インプラント堤防」など防災関連製品や技術を紹介し注目を集めた。

最速2分で津波到達

【和歌山県串本町役場 総務課副課長 枠谷徳彦氏】

串本町役場の枠谷副課長は6月8日、「和歌山県串本町における防災対策と高台移転計画」と題したセミナーを行った。

内閣府中央防災会議が2012年に公表した被害予測では、本州最南端に位置する串本町は最大津波高18メートル、津波到達時間は最速2分と全国で一番早いことがわかった。建物被害は町内1万3300棟のうち全壊率74パーセント、半壊率15パーセントと9割が半壊以上の被害を受ける。人的被害は人口1万8200人のうち8200人が死亡、重軽傷者が1190人と予想されている。

同町は2015年、住民の命を守る町を目指して「串本町津波防災地域づくり推進計画」を策定し取り組みをスタートさせた。

津波到達時間までに高台への避難が困難であることから津波の第1波を防ぎ避難時間を確保するため、堤防を3.3メートルから5.0メートルへかさ上げし耐震工事を実施。「津波避難タワー」は町内5か所で建設され、備蓄倉庫や耐水性貯水槽も整備された。同町ではこの10年で公共施設の高台への移転や紀伊半島を一周する高速道路の建設を進めている。ホテルやマンションなど民間建物と避難ビル協定を結び、付近住民の避難場所に指定した。

同町は「避難3原則」として(1)想定にとらわれない(2)状況下で最善を尽くす(3)率先避難者になる――をポスターにして掲示。地域集会への“防災出前講座”を昨年度は55回実施するなど、住民へ日頃からの防災意識を啓発している。

各家庭の防災対策に対しては、65歳以上のみの家庭や要介護者がいる世帯には家具転倒防止金具を無料で取り付ける、ライフジャケットやヘルメットなど救命胴衣などの購入費は2分の1(上限3000円)を補助するなどの補助制度を整備した。