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クローズUP

"バーチャル警備員"が守る2019.5.1

セコム 世界初のシステム開発

“バーチャル警備員”が警備と受付――。セコム(東京都渋谷区、中山泰男社長)は、人工知能(AI)を活用した世界初の「バーチャル警備システム」の試作機を開発した。

ミラーディスプレイに表示した等身大の3Dキャラクター「バーチャル警備員」と常駐警備員とを組み合わせ、新たな警備のあり方を実現させる。

バーチャル警備員は男性が「衛(まもる)」、女性が「愛(あい)」とネーミングされた。契約施設の内部エントランスの入り口などに設置して警戒監視や受付などの業務が提供可能だ。

4月25日、同社と開発に携わった3社がセコム本社で行った共同記者発表会で中山社長は「警備ニーズの高まりと人手不足。この需要と供給のアンマッチに“人と最新技術の融合”で応えていきたい」と開発の意義を語った。今後、2020年の実用化に向け実証実験を進める。

政治団体「警備業連盟」2019.5.1

東北3県で設立へ

東北地区警備業協会連合会(会長=千葉英明・宮城警協会長)は4月22日、仙台市内で「臨時会長等会議」を開いた。テーマは「警備業の政治団体(連盟)」。東北6県の各警協会長と同専務理事、全国警備業協会から青山幸恭会長と橋本満参与、小澤祥一朗総務部次長が出席した。

今年2月、全警協会長の青山・ALSOK社長など全国の警備業関係者11人が「発起人」となり、警備業の政治団体「全国警備業連盟」の設立を表明。以来、全国の警備業関係者に賛同を求め、「都道府県単位の警備業連盟」の設立を働き掛けてきた。“臨時”の会長等会議は、これを受けたもの。東北各県の取り組み状況の報告や設立へ向けた課題への対応について意見が交わされた。

全国連盟の発起人の一人でもある東北地区連の千葉会長は「警備業の未来や発展には政治団体設立が不可欠」と指摘した。

発起人代表の青山会長は、これまで課題解決へ向け全警協会長として首相官邸や関係省庁、自治体などに働き掛けてきたことを説明。その上で「要望だけでは(予算措置など)限界がある。政治家と一緒になって政治活動を行わなければ何も解決しない」と、政治団体設立に理解を求めた。また「政治活動が“選挙運動”と誤解されているのは残念」とも付け加えた。

橋本参与は、地域での実情に応じた取り組みを求めた。各県警協専務理事には「県連盟設立まではバックアップをお願いすることもあるが、設立後は関与は不要」と、協会と連盟との厳格な“線引き”要請した。

東北各県の取り組み状況は次の通り。

▽岩手=3月に協会理事・監事が「発起人」となることを了解。5月の発起人会で規約案などを説明し「設立趣意書」を協会加盟員に送付、賛同者を募る。6月の総会前後に設立予定。

▽宮城=3月の協会理事会で設立を正式決定。県連盟の正副理事長の人選など体制をほぼ固めた。会計補助責任者は協会顧問税理士が担当する。6月に本格的に始動する。

▽福島=4月に8人の理事・監事が発起人となり「設立発起人会」を開催。現在は加盟員募集中。事務局は賛同会社内に置く。

▽秋田は設立に賛同、賛同者の拡大に取り組む。

▽青森は慎重な意見が多く、山形は検討の最中。

今年1月に発足した鹿児島以外で近く県連盟の設立が見込まれるのは、岩手・宮城・福島と、北海道、茨城、富山、石川、愛知、大阪、広島、愛媛、福岡の12道府県。全国連盟は5月中旬に設立届を提出、6月に都内で設立記念パーティーを開催する。

特集ワイド 警備にAI活用2019.5.1

人手不足が深刻化する警備業界では、人と人工知能(AI)が業務を分担することで警備の質の向上と効率化を図る取り組みが進められている。それは来春の第5世代移動通信システム(5G)提供開始で一層加速する。今回は、セコム(東京都渋谷区、中山泰男社長)が4月に発表したAIを活用した「バーチャル警備システム」の内容と、AIが警備業務に導入されている活用例を紹介する。

セコムが発表した「バーチャル警備システム」――先進技術を集結させたこの世界初の取り組みは、4社が各々の強みを持ち寄って実現させた。

セコムは常駐警備の実績・ノウハウと画像処理技術や全国のコントロールセンターの遠隔監視体制。AGC(千代田区、島村琢哉社長)は高反射率ミラーディスプレイとバーチャルロボット技術。ディー・エヌ・エー(渋谷区、守安功社長兼CEO)はキャラクターが語る音声合成技術とキャラクターデザイン。NTTドコモ(千代田区、吉澤和弘社長)は5Gに関する情報・検証環境の提供と来訪者の声を聞く音声認識技術を提供した。

システムは、ミラーディスプレイに常駐警備員の3Dキャラクターを表示する。AIや人感センサー、マイク、画像認識技術、音声認識技術などを搭載し、人が行っている「警戒監視」「受付」「緊急対応」の3機能を提供できる。

「警戒監視」機能は、定められた場所に立ち周囲を監視する。大画面のミラーディスプレイに監視カメラを内蔵しその映像は建物内の監視卓で遠隔確認できる。顔認証機能によりVIP、社員などを見分けて来訪者に応じた対応を行う。

「受付」機能は、AIにより来訪者からの問い合わせに音声認識で対応する。来訪者の背丈を感知し腰をかがめて目線を合わせたり、フルフェイスヘルメットをかぶっている場合は「かぶったまま入館できません」と音声で案内する。

「緊急対応」機能は、急病人などが発生した場合などに建物内にある監視卓に通報し、常駐警備員が駆け付けて適切に対応する。災害発生時にはミラーディスプレイに災害情報を表示する。

バーチャル警備員は必要な場所に複数配置し、監視卓から一元的にバックアップすることが可能だ。監視卓にいる警備員がほかの業務などで席を離れる場合は、タブレット端末やスマートフォンを使って監視卓と同じ画面を常に確認できる。5Gの通信規格が実用化すれば遠隔監視センターからクラウドを使って監視することが可能になる。

システムは今月から年末まで本社1階エントランスに置き、価値検証を行う。同社・上田理(おさむ)執行役員企画担当は「AIに学習をさせて警備員として成長させる。その上で5Gが実用化される来春に販売を開始したい」と計画を語った。

セコムはこれまでもAIを使ったシステムを提供してきた。昨年4月には、SNSや公的機関の情報を集め災害発生時に配信する「リアルタイム災害情報サービス」にAIを導入。情報確認の業務量を10分の1に削減し、災害情報を効率的に配信できるようにした。

また吉野屋、エクサウィザーズと共同でAIと行動心理学を活用した勤務シフト自動作成サービス「セコムかんたんシフトスケジュール」を開発し、昨年9月から販売している。

今年3月の「東京マラソン2019」では、AIを活用した画像解析システムで監視カメラの映像を解析して、群集の混乱や異常の早期発見に努めた。