クローズUP
紙面向上委員会 第14回会合2018.7.01
「有識者報告書」で議論
本紙は6月15日、第14回の「紙面向上委員会」を開催した。警察庁の有識者検討会が取りまとめた報告書「人口減少時代における警備業務の在り方」を踏まえて、新技術の導入をめぐる課題点や現場で必要な教育について意見が交わされた。
實川利光氏(アルク)は、労働人口減少を受け、人の業務をAIやロボットが補完する動きは避けられないと指摘した。絵野裕美氏(東洋相互警備保障)は、新技術導入に伴い、警備員がサービス面を一層高めることが大切になると述べた。
齋藤文夫氏(前全国警備業協会)は、中小企業がテクノロジーを積極的に取り入れる必要性を挙げて、「新技術は交通誘導警備の料金交渉のツールとしても活用できる」との見方を示した。
警備員教育について、鈴木伸也氏(日本海警備保障)は、新人隊員が現場に即した知識と技能を身につける時間が重要であり、「教育の内容に自由度を持たせれば各社が必要とする実務を取り入れられる」と述べた。
早川正行氏(元神奈川県警備業協会)は、東京五輪・パラリンピックの「大会警備JV」設立で“警備業のレガシー”に向けた気運の高まりに言及した。
中国地区連2018.7.01
3県会長交代で新体制
中国地区警備業協会連合会(橋本満会長=広島警協会長)は6月19日、広島市内で2018年度の定時総会を開催した。連合会を構成する5県会長のうち、3県(広島、岡山、山口)で新しい会長が先の県総会で就任しており、前会長とともに参加した。全警協から福島克臣専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。
橋本会長は会議の冒頭、「私を含め3県で会長の任期満了に伴う改選がありました」と報告、これまでの連合会の運営の協力に謝辞を述べた。新体制については「業界を取り巻く状況は依然として厳しい。警備員不足問題は、“自家警備”が今後も付随してくるのではないか。警備員の処遇改善、社保未加入など、課題を挙げればキリがない。これまで以上に緊密に連携、協調し対応してもらいたい。皆さんが頑張れば、よい連合会になるでしょう」とエールを送った。
会議に加わった福島専務理事は、全警協が今年3月に策定した<警備業における適正取引等に向けた『自主行動計画』>の重要性を説明。「それぞれの県協会で活用してほしい」と周知・実践を強く要望した。
総会後の「協議・意見交換」では、(1)警備員不足対策(2)警備員規範と警備員心得の周知方策(3)各県副会長交流の活発化――の3テーマで話し合われた。主な発言は次のようなもの。
▽人手不足対策で労働局は協力してくれているが、ハローワークの認識をさらに徹底する必要がある。
▽「自主行動計画」は発注者に対しても周知しなければならない。
▽県警には、現場の建設業者に対して交通警備に正しく検定者が配置されているかの指導を徹底してもらいたい。
▽自主行動計画、規範・心得は、まずは経営者の意識改革に掛っている。
▽地区連における副会長の交流は、経費を考慮しながら実現させる方向で検討する。
四国地区連2018.7.01
4県の融和団結図る
四国地区警備業協会連合会(北川豊彦会長=香川警協会長)は6月21日、2018年度の通常総会を開催した。四国4県警協の会長と専務理事、全国警備業協会から福島克臣専務理事と小澤祥一朗総務部次長も出席した。
北川会長は「“四国はひとつ”の言葉通り、四国4県の融和団結を図りつつ業界発展のため足並みを揃えて課題克服に向けて努力していきたい」と述べた。
福島専務理事は全警協が今年3月に策定した自主行動計画について「有効に活用されるように今後業界内外に周知を図り、適正な取引が行われることで各社の経営基盤強化を支援していきたい」と語った。
意見交換では、南海トラフ地震に備えて2017年度の通常総会より同地区連が検討を始めた「四国地区連防災基本計画」策定について話し合った。00年5月に四国4県警協相互間で締結した「災害時広域支援協定書」をもとに事務局がまとめた計画案について意見を交わした。
出席者からは各県協会でそれぞれ構成している災害支援隊・資機材を活用し地区連が調整を図る案などが提示され、協議した。
特集ワイド 警備業〝ゼロ災〟めざす2018.7.01
7月1日から全国安全週間がスタートした。労働災害は全産業では長期的には減少しているものの、警備業では近年、増加傾向にある。警備業から労働災害を撲滅する取り組みについて、厚生労働省労働基準局安全衛生部の井上仁・安全課長に寄稿してもらった。
今年も「全国安全週間」が7月1日〜7日、「新たな視点でみつめる職場創意と工夫で安全管理惜しまぬ努力で築くゼロ災」をスローガンに実施されます。各職場ではスローガンの掲示をはじめ、職場巡視や安全大会・講習会の開催などさまざまな啓発活動が行われ、これを契機に一層の安全対策の推進が期待されます。警備業の皆さまは、これから述べる労働災害の発生状況等に留意し、安全対策の充実・向上を図っていただくことをお願いします。
■増加する警備業の労災
労働災害による休業4日以上の死傷者数は、全産業では長期的には減少傾向にあるのに対し、警備業の死傷者数は近年増加傾向にあります。2017年の警備業の死傷者数は1603人で、対前年比8.9パーセント増加しました。全産業では2.2パーセント増だった中で残念な結果です。
死傷災害を事故の型別に分析すると、最も多いのが「転倒」で約37パーセント、次いで「交通事故(道路)」約16パーセント、「動作の反動・無理な動作」約12パーセント、「墜落・転落」約12パーセントとなっています。このうち「転倒」と「交通事故(道路)」が警備業での労働災害の過半数を占めていることから、重点的な対策を講じることが必要と言えます。
2017年の死亡者数は33人で、対前年比10人、43.5パーセントの増加となっています。33人の事故の型別の内訳は、「交通事故(道路)」が14人、「激突され」4人、「はさまれ・巻き込まれ」3人、「墜落・転落」2人、「転倒」2人、「おぼれ」2人、「高温・低温物との接触」2人(いずれも熱中症)などとなっています。今年の労働災害の発生状況ですが、5月末現在の速報値で8人(交通事故6人、墜落・転落1人、感電1人)が亡くなっており、対前年同期比で1人(14.3パーセント)増加しています。休業4日以上の死傷者数は570人で、前年同期よりも58人(11.3パーセント)増です。
年齢別の被災状況は、全体の3分の2近くを50歳以上の労働者が占めており、その人数・割合ともに年々増加しているという特徴があります。
こうした労働災害の状況を踏まえ、特に次の事項を重点とした労働災害防止対策の強化が必要です。
■交通労災防止の基本
交通誘導警備と輸送警備での交通事故対策が重要です。
交通誘導警備では、不特定の第三者の運転する車両を対象とするため、警備員の意思が運転者に伝わりにくいなどの問題点があり、わかりやすく確実に合図を伝えることや、安全に配慮した適切な誘導位置の確保、適切な装備品、保安用資機材の装着・使用など、基本的な安全確保の徹底をお願いします。
現金輸送車などの輸送警備では、「交通労働災害防止のためのガイドライン(2018年6月1日改正)」などに沿って、適正な走行計画の作成、乗務開始前の点呼等による運転者の状況の確認、運転者に対する教育の実施、交通ヒヤリマップの作成や交通KYTによる危険感受性の向上、雪や大雨などにおける安全の確保などの取り組みをお願いいたします。
■注意力向上で転倒防止
警備業では、暗い夜間での警備や緊急時の駆けつけ、降雨・積雪のある屋外での警備など他の業種にはない課題もあります。また、警備場所の管理権限が及びにくいこともあるかと思いますが、警備場所のオーナー等の理解・協力を得ながら転倒の原因の除去、改善を図るとともに、警備員に対する危険予知訓練(KYT)などを通じた注意力の向上など、転倒災害防止対策に一層の取り組みをお願いします。
厚労省では2015年より、「STOP!転倒災害プロジェクト」を実施し、事業場での転倒災害防止の取り組みを促進しています。各社でも引き続きご協力をお願いします。
■熱中症リスク高い業種
夏場の屋外警備作業など警備業は熱中症のリスクが非常に高い業種となっています。
厚労省では本年、「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」を実施し、職場における熱中症予防対策を強力に推進しています。本キャンペーンでは、事業場における責任体制の確立を含めた熱中症予防対策の徹底を図ることを目的としており、関係団体や業所管省庁と連携して進めています。7月は重点取り組み期間となっており、同期間に警備業等の作業現場で取り組んでいただきたい主な事項として、(1)WBGT値(暑さ指数)の測定による熱中症危険性の把握(2)屋外での作業の場合に冷房や屋根などの休憩を取るための設備の整備(3)健康診断結果や日々の健康状態の把握による働いている方の健康状態の把握(4)非常時の対応についてあらかじめ確認し、救急車の要請等の適切な対応――等を呼びかけています。労働局や労働基準監督署で配布している、ポイントとなる事項をまとめたリーフレットをご覧下さい。厚労省ホームページでも閲覧できます。
本年は夏の気温が例年よりも高くなることが予想されており、暑さが本格化する7・8月に向けて、今一度、前述の熱中症対策の重点的な実施をお願いします(※WBGT値=WetBulbGlobeTemperature:湿球黒球温度)。
■高齢者に配慮した職場
人は一般に加齢とともに、身体能力・感覚機能が変化してきます。特に、足の筋力、視力・聴力、バランス感覚、記憶力・判断力などが低下し、若年の頃と比べ、転倒や墜落・転落などの労働災害に遭いやすくなります。特に、警備業では高年齢労働者の割合が高いことから、高年齢労働者でも安全で快適に働ける職場作りに努めていくことが重要です。
例えば、床面の段差や凸凹を視認しやすいようにする、表示の字を見やすい大きさ・色にする、適切な照度を確保する、取り扱う重量物の重さを制限する、作業時間を見直すなどがあります。ただ注意喚起だけで終わることなく、高年齢労働者の心身機能の変化を踏まえた職場環境の改善を図っていくことが必要です。
中央労働災害防止協会では、高年齢労働者の安全と健康確保のための取り組みはもとより、高齢期に健康で安全に働くことができるようにするための若年時からの準備としての取り組みを盛り込んだチェックリスト(エイジアクション100)を公表していますので、参考にしてください。
■リスクアセスメント
作業現場にある危険有害性を特定し、それらによる労働災害の重篤度(けがなどの程度)とその災害が発生する可能性を組み合わせてリスクを見積もり、そのリスクの程度に基づいて対策の優先度を決めた上で、リスクの除去・低減措置を検討し、その結果を記録する一連の安全管理手法として「リスクアセスメント」があります。
厚労省ではこの手法に基づいた潜在的な危険有害性を未然に除去・低減させる先取り型の安全管理の導入を促進しています。警備業の各事業場でも、この手法を取り入れることにより、警備業務の中に潜む災害リスクの除去・低減を実施してください。
労働災害の撲滅は一朝一夕には成しえない課題ですが、前述したような対策をこつこつと着実に実践していくことが重要です。厚労省では、労働災害を防止するために国や事業者、労働者等の関係者が重点的に取り組む事項を定めた中期計画である「第13次労働災害防止計画」においてそれぞれの業種の特性や労働災害の状況に応じた対策を講じることとしています。特に今年度は同計画の初年度であり、今回の全国安全週間を契機として今一度新たな視点で職場を見つめなおしていただくとともに、労働者の皆さんに基本的な安全ルールを守って仕事をし、また、本社が職場と一体になって全社的な安全管理を進めていただくことで、警備の現場が、より安全に安心して働ける職場となり、労働災害の減少が図られることを心から期待いたします。