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「自家警備」の検討求める2017.6.21

国交省通知 警備員不足に対応

国土交通省は6月8日、総務省と連名で「交通誘導員の円滑な確保」を自治体や建設業団体などに通知した。一部地域で交通誘導警備員が不足し、公共事業の執行にも支障が出てきていることから、元請け建設会社職員による交通誘導「自家(じか)警備」の検討などを求めている。

通知内容は(1)交通誘導に係る費用の適切な積算(2)適切な工期設定や施工時期などの平準化(3)発注者(自治体)、建設業者、警備業者、警察などが参画した「交通誘導員対策協議会」の設置――の3点。

特に「交通誘導員対策協議会」では、交通誘導員の不足が顕在化または懸念される場合の対策として、建設業者が自ら交通誘導を行う“自家警備”について条件整理を行い、共通仕様書への反映を求めている。

警備業法では、警備業者が都道府県公安委員会が定める「指定路線」で交通誘導警備業務を行う場合、交通誘導警備業務に係る1級または2級の検定合格警備員を、業務を行う場所ごとに1人以上配置しなければならないとされている。しかし、指定路線以外の場所では、検定合格警備員の配置は不要。また、指定、指定外の路線を問わず、元請け建設会社の社員が行う交通誘導「自家警備」は可能となっている。

国交省は、熊本地震を機に自治体や建設業団体に交通誘導員の充足状況についてアンケート調査。多くの自治体で指定路線以外でも検定合格警備員の配置を求めているなどの実態が判明した。このため同省は、自家警備の導入や検定合格警備員配置の適正化で、一部地域で発生している警備員不足による事業執行の遅れを解消したい考えだ。

一方で、同取り組みが進めば、今後の元請け建設会社との警備料金交渉はもとより、交通誘導警備業の存続にも大きな影響を与えかねない。警備業界としては、協議会への積極的な参加で安全確保の観点から交通誘導警備員の有用性を強く訴えていくとともに、早急な人材確保を進め、元請け建設会社の交通誘導警備員派遣への要望に応えていくことが求められよう。

また、同通知では、建設現場での警備員配置についての警備業法の解釈を例示した。

同一の施工現場であっても、各交通誘導警備員が雇用される警備会社ごとに区域などで分担することで、業務の指揮命令系統の独立性が確保されていれば、複数の警備会社に請け負わせても差し支えない――とし、一定要件の下での複数業者による混在警備を容認した。

特集ワイド クールワーク 防ごう「熱中症」2017.6.21

暑さが厳しくなるこれからの季節、警備現場で心配されるのが熱中症。警備業の熱中症は、平成28年には死傷・死亡ともに減少したが、過去5年間の推移をみると毎年増減を繰り返している。このため厚生労働省は全国警備業協会などとともに、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開中だ。

厚生労働省の調査によれば、平成28年に全国の職場で発生した熱中症による死傷者数(死亡と休業4日以上)は462人だった。これは27年よりも2人少なく、うち死亡者は12人で、前年より17人の減少だ。しかし、近年の熱中症による死傷者数は、猛暑と言われた平成22年の656人(うち死亡47人)をピークに、毎年400〜500人台という“高止まり”の状態。

警備業は、28年は死傷者数が対前年比11人減の29人、死亡者数は同7人減の0人となった。

過去5年間の推移では、24年が死傷者数27人(うち死亡2人)、25年53人(同2人)、26年20人(同0人)、27年40人(同7人)で、毎年増減を繰り返している。また、過去5年間の総数は死傷者169人、死亡者数11人で、全産業中で死傷者はワースト5位、死亡者数はワースト3位となっている。

過去5年間(平成24〜28年)に全産業で発生した熱中症による死傷者をみると、月別では約9割が7月と8月に発生。時間帯別では、午後2〜4時台に多く発生し、日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化し、病院へ搬送されるケースもあった。

作業開始日から熱中症発生日までの作業日数別の死亡者数をみると、全体の5割が「高温多湿作業場所」で作業を開始した日から7日以内に発生していた。

キャンペーンを展開

今夏は全国的に気温が平年並みか平年より高くなることが見込まれ、熱中症が多く発生することが懸念されることから、厚労省は今年度から「新たな職場における熱中症予防対策」として、5月1日から9月30日までの5か月間を期間とする「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」を展開中だ。

キャンペーンの主唱者は同省と中央労働災害防止協会(中災防)をはじめとする災害防止団体などで、業界団体として唯一、全国警備業協会(青山幸恭会長)も主唱者としてキャンペーンに参画。政府全体の取り組みである「熱中症予防強化月間」の7月は“重点取り組み期間”と位置づけ、各種対策を実施する。

キャンペーン期間中に同省は▽熱中症予防のための周知啓発資料の作成と配布▽同省ホームページ上での熱中症予防のための“特設サイト”の開設(災害事例や効果的な対策、好事例、チェックリストなどを紹介)▽各種団体などへの協力要請と連携の促進▽都道府県労働局、労働基準監督署による事業場への啓発・指導――などを行う。

一方、全警協は都道府県警備業協会の求めに応じて、熱中症対策セミナーの開催、経営者研修会や指導教育責任者研修会などで「熱中症予防」をテーマとした講演を行う。

症状と対策を知ろう

熱中症とは高温多湿な環境下で、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称。症状には、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・けいれん・手足の運動障害、高体温などがあり、適切な処置が講じられないと死亡に至るケースもある。

熱中症を予防するには、(1)WBGT値(暑さ指数)の測定と同値低減などの「作業環境管理」(2)作業時間の短縮などの「作業管理」(3)健康診断結果などに基づく「健康管理」――の“労働衛生の3管理”が原則となる。これに、作業者や管理監督者に対する労働衛生教育、救急処置を加えることで、その実効性がより高まる。

WBGT値測定で環境を管理

熱中症の発生状況をみると、熱中症発症の評価指数「WBGT値(暑さ指数)」の測定を怠り、適切な措置を講じなかったことによる発生が多い。今年3月には、簡易にWBGT値を測定できる電子式の同測定器の日本工業規格が「JISB7922」として制定・公示され、JIS規格に準拠した「簡易WBGT測定器」の普及が進んでいる。同測定器を用いたWBGT値の測定を行い、基準値を超えた場合や超えるおそれがある場合には、冷房・冷風機の活用や簡易な屋根などの設置によるWBGT値の低減が必要だ。

また、冷房や日陰などがある涼しい休憩場所を設け、氷や冷たいおしぼりなど身体を適度に冷やすことのできる物品・設備、水分や塩分の補給のためにスポーツドリンク、塩飴、飲料水などを備え付ける。建設現場やイベント会場のように、これら物品を備えた休憩場所を独自に設置できない場合には、元請け建設会社やイベント主催者などと協議して、既存の休憩場所の借用に理解を求め、使用が可能な場合には、事前に警備員に周知する。

適度な休憩と作業配慮

作業の休止時間や休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮する。また、熱への順化(熱への慣れ)の有無が、熱中症の発生リスクに大きく影響することから、計画的な熱への順化期間を設ける(いきなり高温多湿の現場に配置しない)。

さらに、自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあることから、自覚症状の有無にかかわらず、水分や塩分を作業前後、作業中に定期的に摂取させる。また、摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視・巡察での確認などで、水分や塩分の摂取の徹底を図る。特に尿の回数が少ない、尿の色が普段より濃い状態は、体内の水分が不足している可能性があるので留意する。

服装は、熱を吸収して保熱しやすい服装は避け、透湿性や通気性の良い服装を着用させるとともに、これらの機能を持つ身体を冷却する服(クールベストなど)を着用する。

日常の健康管理が大事

熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある(1)糖尿病(2)高血圧症(3)心疾患(4)腎不全(5)精神・神経関係の疾患――などの病気を持つ人には、医師の意見を踏まえて配慮する。

また、作業開始前に健康状態を確認し、朝食抜き、前日の深酒、睡眠不足、体調不良の人は休養させるか必要に応じて配置換えする。作業中は巡視を頻繁に行って声掛けするなど、健康状態を常に確認する。