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クローズUP

愛知警協 現場見学会を開催2017.8.21

ハローワークと連携

愛知県警備業協会(小塚喜城会長)は7月28日、慢性的な警備員不足の解消に向けた対策として「ハローワーク名古屋中・人材確保対策コーナー」と連携し、名古屋市内で警備現場見学会、警備業務説明会を開催した。

同コーナーは人材が不足している警備・建設・運輸・福祉の4部門に特化し今年4月に設置されたもので、今回見学会を行ったのは、中部相互警備保障(愛知県津島市、竹内一之社長)。今後、同協会では、求職者の業務内容などへの疑問や不安の解消を目的に毎月1回、1業者を対象に、同見学会を実施していく予定だ。

特集ワイド 警備業の障害者雇用2017.8.21

福岡市の警備会社「ATUホールディングス」の岩﨑龍太郎社長は、このほど福岡市内で開かれた社会の課題を考えるイベント「マイコミュニティフォーラム in 福岡」(主催=公益資本主義推進協議会)に参加した。警備業における障害者雇用を実現している同社長は、「障害者の未来形」のテーマでパネルディスカッションを行った。司会者との質疑応答を紹介する。――岩﨑社長が経営するATUホールディングスは、45パーセントという驚異的な障害者雇用率を実現しています。なぜ、取り組みを行うようになったのですか?

鹿児島県内の警備会社に勤務していた平成15年から、障害者を雇用し始めました。平成24年時点では、障害者雇用を促進している営業所で営業業績がよく、促進していない営業所では業績が悪かったのです。私は、警備業における障害者雇用をよく理解している状態で、福岡で当社の経営を開始しました。 

――障害者雇用を始めたきっかけを教えてください。

障害者が当たり前に働くことができる社会が普通だと思いましたし、そのことでお客さまも満足できると思いました。それで10年間、警備業で障害者雇用をやってきました。しかし、残念ながらその広がりはなく、思うような社会の実現はありませんでした。

私の師匠の法政大学大学院・坂本光司教授が乗る車を運転したときに、先生から「警備員は何人いるのか?」「そのうち障害者は何人いるのか?」「人は働かなければ幸せになれないし・寿命も短くなる」と述べられました。先生の鋭い目を見て、私は当事者意識が欠けていたことに気付かされたのです。「これだけの状況を分かっておきながら自らが行動しないことは、障害者を不幸にし寿命を縮めることを是としている張本人だ」「行動しなければ犯罪者も同然だ。私は多くの障害者を見殺しにしている」ということに気付かされました。

――障害者雇用を始めてから変わったことはありますか?

障害者から人の役に立つこととはどういうことか、人の幸せとはどういことか、日々教えてもらっています。

――警備業は人の生命・身体・財産を守るミスが許されない仕事です。障害者に任せられないのではないでしょうか?

健常者の警備員に警備業務をさせたいと思うのは、まず当然の考え方です。私は最初の顧客1件だけは障害者であることを伝えずに警備をさせました。そして1年警備をさせてから「この人は障害者です」と明らかにしました。

次のお客さまは、「あの警備員は、障害者なんですよ。健常者より融通が利かないから、逆に安心なんです」と説明し、お客さまの不安を払拭して契約を増やしていきました。

――仕事の切り出し方はどうしていますか?

仕事を切り出す前に人物を理解することから始めています。障害者は「100のうち1ができない人」つまり「ほぼ健常者と同じことができる人」という認識を持つことが必要です。それから一緒に仕事して、仕事を切り出せばいいと思います。

――現場から居なくなってしまう障害者警備員はいますか?

1か月付き添って現場に立てば、その後で現場から居なくなることはまずありません。健常者はその場所から按配でよく離れていなくなりますけど。

――障害者は健常者以上の仕事ができるようになりますか?

結論から言えば、できるようになる人もいます。警備の仕事は、他の産業と比べ工程が単純です。当たり前のことを馬鹿にしないできちんとやることが警備の品質です。障害者は臨機応変な対応ができませんし、いちいち上司の判断を仰がないと作業が進みません。対応ができないことや作業が進まないことで、警備業の安全性や品質は高まり、価値となります。逆に健常者は現場の判断や按配で報告をすっとばし、安全性や品質が低くなり、長期的な価値になり難いです。

健常者のチームは100点の時もあれば50点の時もあります。「あの人が嫌い」とか「二日酔いだ」とか、障害者チームではなかなか発生しない内容です。障害者は一人ひとりの能力は低いですが、チームだとコンスタントに70点の成果を出すことができます。だから、安定した品質や価値を提供し続けることができるのです。

――岩﨑社長の会社はなぜ高収益なのですか?

価値あることを提供し続ければ、利益はついてきます。また、多様性による職場の対応力の向上が顧客の中でも起こり競争力が上がることで、顧客自身の収益性も向上します。

――障害者を多く雇用することで、健常者の離職率が下がるのはどうしてでしょうか?

障害者と向き合うことで、人として当たり前の接し方が身につきます。いい家族であれば、出来が悪い子がいても即リストラをすることはできないでしょう。大切なのは「社員とその家族の幸せ」です。誰がリストラをされて幸せを実感できるでしょうか。利益や継続させることを目的と勘違いしている会社が、あまりにも多いと思います。

――障害者の面倒が見たくない健常者には、どのように説明すればよいでしょうか?

いい“家族”(会社)なら“姥”(障害者)を捨てることはしません。死せるときは“親”(経営者)がまず死ぬべきです。そのことを健常者である“兄”(社員)に教えます。それでも兄が姥捨てをするならば、兄は家族から離れるしかありません。

――障害者の採用はどうしていますか?

会社と仲良くやっていける人を採用します。

――障害者が働ける場は、もっと増えないのでしょうか?

障害者が作る商品や、人を大切にするいい会社の商品を買えば、障害者が働ける場が広がります。我々市民は傍観者であってはいけません。商品を選ぶ力を持っています。我々はよい世の中を選択することができるのです。

――障害者とのふれあいの場は、作れないのですか?

特別支援学校の技能発表会など、障害者側が積極的にアプローチしていますが、健常者にその関心がありません。また労働局の「障害者を雇用すると大変でしょうから、特定求職者雇用助成金を差し上げます」というアプローチは、健常者に与えるイメージがとても悪い。そういう説明は、よくないと思います。

――障害者雇用で、会社がまずすべきことは何でしょう?

企業はまず実習を受け入れて欲しい。インターンを行政で義務化してもらいたいですね。

――インターン体制が構築できている自治体はありますか?

北海道の芽室町や広島市の例があります。

――パラリンピックに何を期待しますか?

障害者を認知してもらえるチャネルとして、大いに成功してもらいたいと思います。