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「知」に備えあれば憂いなし

河内 孝の複眼時評

河内 孝 プロフィール
慶応大法学部卒。毎日新聞社に入社、政治部、ワシントン特派員、外信部長、社長室長、常務取締役などを経て退社。現在、東京福祉大学特任教授、国際厚生事業団理事。著書に「血の政治―青嵐会という物語」、「新聞社、破たんしたビジネスモデル」、「自衛する老後」(いずれも新潮社)など。

野党党首、真夏の夜の夢
-与野党逆転のためすべきこと-2021.08.21

寝苦しい熱帯夜が続く。しかし野党には朗報が続く。党首、幹部は夏の夜の夢を楽しんでいるかもしれない。例年8月、各週刊誌は夏休み対策で合併増刊号を出し3回発行になる。この時期、各編集長は「日持ちして、読み応えのある材料」をどうさばくかが腕の見せ所となる。今年は、近づく衆議院選挙予測となったようだ。結果、野党が元気づけられる数字が並んだ。

「自民200議席、過半数割れ」(週刊現代7月31日号)。「衆議院選全選挙区調査、自公過半数割れの78議席減」(週刊文春8月12〜19日号)。「菅“コロナ自滅”、63議席減、全289選挙区予測」(週刊朝日8月20〜27日号)。衆議院の定数は465議席、自民党の現有議席は276だから70議席前後失えば公明党を加えても過半数維持は難しくなる。

菅政権に追い打ちをかけるのが報道各社の世論調査の数字だ。「内閣支持率9年ぶりの低さ34%に。不支持率前回比7ポイント増の57%」(日経7月26日)。「内閣支持率、初めて30%割り込む」(時事8月8日調査)。「内閣支持率29%(前月比マイナス4)不支持率52%(プラス4.6)」(NHK8月9日調査)。「菅内閣支持28%、(過去)最低」(朝日8月8日調査)。

注目すべきは時事、朝日新聞調査時点が、東京五輪閉会日と重なり、NHK調査が閉幕直後に行われたことだ。朝日調査で「オリンピック開催は良かった」と回答している人は56%。「良くなかった」と答えた32%を20%以上、上回っている。にもかかわらず内閣支持率が発足以来最低を記録した。五輪開催イコール政権浮揚という官邸の腹積もりが逆目に出たということだ。

国民の不満は「菅首相のコロナ対策に取り組む姿勢を信頼できますか?」への回答に現れている。66%が「評価せず」。「菅首相に続投して欲しいですか?」への回答も、「欲しくない」が66%。自民党支持層でも、「続けて欲しい」を上回った。

いま野党がすべきこと

無論、野党党首たちは、この結果を手放しに受け止めてはいないだろう。特に週刊現代調査では自民党支持票が野党支持票に変わる「離反率」を5、10、12%の3ケースに想定、「12%の場合、与野党逆転が起きる」としているが、これは無理がある。本欄7月21日号でも指摘したように、「反自民、非自民票」は単純に既成野党に回らない。投票率が低下の一途をたどる近年の選挙では、政党支持層間の移動よりも、「支持政党なし」の動向が結果を左右するからだ。

では、野党が真に政権交代を目指すとすれば、今、何に取り組むべきか。最低、2つ提案したい。まず立憲民主党の枝野代表は、直ちに国民民主党の玉木代表に合併協議再開を申し入れるべきだ。ポイントはただ一つ。新党党首の座を玉木氏に譲ること。かつて自民党は、政権党復帰を目指し社会党と連立を組み、首班候補の座を村山社会党委員長に譲った。大きな譲歩で局面転換を図り、自民党、維新の会などへ去って行ったかつての仲間を再糾合しなくてはならない。

第二は、選挙共闘を組む日本共産党に党綱領(2020年1月決定)の修正、最悪でも凍結を求めるべきだ。この中で共産党は「共産党と統一戦線による民主連合政権樹立後、次の段階として、生産手段の社会化などを目指す、資本主義を乗り越え、社会主義、共産主義への前進」をうたっている。この内容では政治的に中立な「支持政党なし」層を取り込むことは不可能だろう。これらが実現できれば、週刊誌予測は現実味を増すことになる。