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クローズUP

全警協「就職氷河期世代」支援、愛知でスタート2020.11.01

無料で「施設警備2級」取得、9人がチャレンジ

全国警備業協会(中山泰男会長)は10月23日、業界の警備員不足問題に対応するため厚生労働省から委託された「就職氷河期世代向けの短期資格等習得コース事業」を愛知県でスタートさせた。

同事業は1990年以降バブル崩壊など厳しい雇用環境のため希望通り就職できなかった35〜54歳の就職氷河期世代で、無職または警備業や他の業種で働く非正規社員が対象。交通誘導警備業務2級と施設警備業務2級を取得するための講習を無料で受けられるもの。

1回目は施設警備業務2級を取得するコースで、会場となった愛知県警備業協会には35〜54歳の9人の受講者が参加した。受講者は愛知警協会員会社の非正規警備員と専用サイトを閲覧した応募者だった。

開講式で全警協の楯悦男常務理事は「本事業は安定就労を目指す就職氷河期世代の方と人手不足の業界傘下企業とのマッチングを図るもの」と趣旨を述べた。

来賓の愛知労働局職業安定部訓練室の福崎守室長は「雇用環境が厳しい時期に就職活動を行い今も課題に直面している方々を支援したい」と呼び掛けた。

コース1週目の23・24日は「必要な知識の習得」、2週目の28・29・30日は「警備員検定講習」、3週目の11月4・5・6日は「警備員検定講習」と「実技・学科試験」の実施、4週目の12・13日は大型商業施設など県内3か所の「職場見学」で講習を終了。29・30日は会員会社10社による「合同企業説明会」を開く予定だ。

今後の予定は、全警協・研修センターふじの(神奈川県相模原市)で施設2級(10月19日〜11月6日)、埼玉県警備業協会総合センターで交通誘導2級(12月1日〜20日)、北海道警備業協会で施設2級(12月1日〜20日)の開催が決まっている。

全警協が要望書提出2020.11.01

コロナ対策、分離発注 関係省庁へ10項目

全国警備業協会の中山泰男会長と福島克臣専務理事は10月22日、国土交通省を訪問し東川直正大臣官房技術審議官に要望書「予算・税制等に関する要望」を手渡した。

全警協は同要望書を12日に総務省、財務省、厚生労働省、中小企業庁の各省庁に、27日には警察庁に提出した。要望書は新型コロナ感染防止の取り組みの中、適正な警備業務の実施などに向けて配慮を求めたもので10項目にわたる。

その中でコロナ対応については、最前線で警備にあたる警備員の感染防止に向けて業務発注側にも費用や装備負担などの協力を要請し、治療薬が開発された際には警備業が優先接種の対象となるよう検討を求めた。新型コロナも適用されている「新型インフルエンザ等特別措置法」の「指定公共機関」に警備業を追加し、感染対策における警備業の位置づけを明確にするよう要請した。

国や都道府県、市町村の入札に関しては、最低制限価格を導入した適正価格の維持と不適格業者を排除できる仕組みの導入を要求。イベントや大規模な会議等では、警備業務部分のみの分離発注を行うよう求めた。

公共工事など官公庁関係の警備業務の予算編成については、警備員不足の解消と社会保険の加入が図られるよう適正料金の積算を行うことを要望した。

特集ワイド2020.11.01

eラーニング効果

昨年8月の警備業法施行規則の一部改正により、警備員の法定教育に電気通信回線を使用する「eラーニング」が認められた。新型コロナウイルス感染症拡大を契機に、中堅企業はオンライン会議システムを利用した教育を、大手企業は自社開発システムを使った教育を始め、業務効率向上や教育の均一化に効果を上げている。全国警備業協会(中山泰男会長)は今年度中に、新任教育と現任教育に利用できるシステムの提供を始める予定だ。

「eラーニング」にはパソコンなどであらかじめ用意されたシステムを使って行う通信学習方式と、インターネット回線を用いたオンライン会議システムを利用した遠隔講義方式の2つがある。通信学習方式はシステム開発に手間と費用がかかるため資金がなければ難しく、遠隔講義方式はオンライン会議システムが身近なものでなかったため、この春までeラーニングに関心を寄せる警備会社は多くはなかった。

コロナ禍で

事情が変わったのはコロナ禍からだ。一箇所に大人数が集まる教育方式では感染症拡大の恐れがあることから難しくなったため、eラーニングに注目が集まるようになった。テレワークの普及にともなってオンライン会議システムが広く浸透したことも追い風だった。

シンコーハイウェイサービス(東京都八王子市、坂本健造代表取締役)を中核企業とするシンコーグループ4社(同社のほかにプロ・ワークス、シンコー警備保障、シンコーサービス)は、今年5月から合同でオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使った遠隔講義方式による法定新任教育を始めた。教育は2003年の警備業法施行規則改正で認められた、複数の警備業者が教育を共同で行うことができる組合により行うものだ。10月21日時点で約1000人が受講した。

同グループ各社は新任教育を法定下限20時間に対して30時間以上行っており、そのうち20時間でeラーニングを用いている。

グループでは4月初旬まで十分な感染対策を施した上で、従来形式の教育を行ってきたが、政府が4月7日に緊急事態宣言を発令したことから全ての教育を中止。担当者で話し合った結果、eラーニングでの教育を決めた。オンライン会議システムを採用したのは、「Zoom」が使えるパソコンとビデオカメラさえあれば即座に始めることができるからだ。

教育の企画を担当するシンコー警備保障(東京都新宿区、佐藤雅史社長)業務支援部教育研修課の安富恭正課長代理は、eラーニングの効果を感染対策のほかに、講師を務める指導教育責任者の業務効率向上にあると述べる。法定新任教育を行う拠点によっては従業員数が少ないため、これまでは講師はいったん講義を中断して来客や電話に対応することがあった。

高齢者に配慮

講師はグループの「町田研修センター」(東京都町田市)でカメラに向かって講義を行う。受講者は各拠点で、ライブ映像を大型にモニターに映したものを視聴する。安富氏は「受講者は高齢者が多いため、パソコンやタブレットの小さな画面を1日中見続けるのは視覚神経にとって負担が大きいと判断しました」と理由を説明する。

法定新任教育で効果があったため、8月には試験的に法定現任教育の一部をeラーニングで行っている。警備員は自身が所属する営業所に集まり、同じテレビ会議システムを用いた。10月21日時点で約150人が教育を受けた。

ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)も、4月から新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的に、法定新任教育と法定現任教育で通信学習方式のeラーニングを採用している。同社は効果を新型コロナ感染リスク低減に加え、全ての人に同一の内容で教育することにより、均一な知識付与が可能になった点としている。

システムはメーカー製品をALSOK仕様にカスタマイズしたものを使用している。教材は事前に収録した講師による講義や独自に制作した映像だ。各拠点に教育を受ける人が集まり、パソコンやタブレット端末で視聴する。10月半ばまでにそれぞれの教育の7割をeラーニングで実施した。

受講者の本人確認や受講確認は、警備員指導教育責任者が目視により行う。質疑はその場でシステムの機能やEメールを使って行うほか、受講現場で立ち会っている警備員指導教育責任者にすることができる。

セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は、コロナ禍による東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期に伴い、eラーニングを来年1月から法定現任教育で開始する。

受講するのは大会の警備に従事するために選抜された、普段は警備業務についていない事務職や営業職の社員約2000人だ。

10時間の教育時間のうちeラーニングは2時間30分。会社の自席でパソコンを使って受講する方法と、集合研修を行っている研修センターで教官が説明しながら受講する方法の2通りを計画している。