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クローズUP

労災死者、過去最少続く2021.05.21

20年 警備業は7人増28人

厚生労働省が取りまとめた2020年(1〜12月)に発生した労働災害の発生状況(確定値)によれば、全産業計の死亡者数は前年比43人(5.1%)減の802人と3年連続で過去最少となった。一方、死亡と休業4日以上を合わせた死傷者数は同5545人(4.4%)増の13万1156人と02年以降で最多となったことが分かった。

死亡者802人の業種では、建設業が前年比11人(4.1%)減の258人で最も多かった。

警備業は同7人増の28人。全業種中で最も高い増加率33.3%となった。事故の型別では「交通事故(道路)」が最も多く15人、次いで「激突され」「はさまれ・巻き込まれ」がともに3人、「おぼれ」「有害物との接触」の2人など。

全産業計の死傷者数は13万1156人。うち新型コロナへの罹患による労働災害は6041人で全体の約5%を占めた。警備業のコロナ罹患は3人だった。

死傷者の業種では、製造業が最も多く2万5675人(同1198人、4.5%減)だった。

警備業は同94人(5.5%)増の1792人。型別では「転倒」が最も多く693人、次いで「交通事故(道路)」238人、「墜落・転落」228人、「動作の反動・無理な動作」197人など。前年に比べ「交通事故(道路)」は8人減少したが、「転倒」と「激突」は各47人、「墜落・転落」は32人、それぞれ増加した。

2021年都道府県警協「総会」スタート2021.05.21

コロナ禍2年目の舵取り

都道府県警備業協会の「定時総会」が始まった。コロナ禍は2年目に入り、より感染力の強い変異ウイルスが全国に広がって緊急事態宣言は9都道府県に拡大。そうした中で、警備業は、イベント警備の中止や縮小などで経営環境の悪化が懸念されている。警備業界として課題を乗り越えるために、各協会はどう取り組みを進めていくか――。

新潟警協 =5月11日・新潟市
警備業の総力結集

4期目の舵取りを託された野澤慎吾会長(セコム上信越)は「新型コロナによるイベントの中止や工期延期などの影響により警備業は極めて厳しい状況が続いている」と指摘した。

慢性的な警備員不足、適正な警備料金確保などの課課題を挙げ、克服に向けて「1年間蓄積してきた感染防止対策の知識を活用し“どうすれば可能か”“何をしなければならないのか”を常に考えて前進したい。警備業の総力を結集し危機を乗り越えていく時だ」と一層の協力を呼び掛けた。

新年度の事業計画では、県内各地区で警備員のスキルアップのための技術向上研修会を予定。ハローワークと連携した人材確保対策にも継続して取り組む。

新役員は次の通り(敬称略)。【専務理事】高橋信之

長野警協 =5月12日・長野市
団結し発展図る

4期目に入った竹花長雅会長(長野県パトロール)は「感染防止策を継続しながら会員が団結し、業界発展を図ることが大切になる」と強調した。今後の課題として「警備員のレベルアップ」「適正料金確保による経営基盤強化と待遇改善」などを挙げ、取り組み推進を求めた。

業界の将来の発展を視野に青年部会が正式に発足した。初代部会長には、副会長の中村将臣氏(新日本警備保障)が就任した。

新年度は、資格者配置路線が増えたことで会員の要望に応えるため、4〜6月の毎月、交通誘導警備2級の特別講習を開催する。

新役員は次の通り(敬称略)。【副会長】西原俊雄(綜合警備保障長野支社)【理事】本多弘之(日本通運北関東警送支店長野警送事業所)【監事】北原唯行(県防犯協会連合会)

特集ワイド 「資格」とり有効活用2021.05.21

全国警備業協会(中山泰男会長)の認定資格制度「セキュリティ・プランナー」と「セキュリティ・コンサルタント」は、創設から11年。2つの認定資格は警備業の多様化・複雑化するニーズに応え、社会の安全安心に寄与することを目的としてスタートした。講習内容の見直しを図りながら改善されてきた資格制度の現状と、どのように業務に有効活用されているか、取材した。

「セキュリティ・プランナー(以下プランナー)」とその上位資格「セキュリティ・コンサルタント(以下コンサルタント)」は、警備員だけでなく管理部門や営業職・技術職、また業界の枠を超えて幅広い分野の人がチャレンジできるよう広く門戸が開かれている。プランナー講習は2010年6月以来70回開催、3490人が資格を取得。一方、コンサルタントは2012年3月以来13回開催して137人が取得した。

両資格講習の21年度の開催予定は左表のとおりで、プランナー6回、コンサルタント1回。昨年度はコロナ禍で6月の「研修センターふじの」(神奈川県相模原市、以下ふじの)と福岡県、9月の北海道のプランナー講習が中止となった。1月の「ふじの」のプランナー講習は3月に延期し2回に分けて開催。2月の「ふじの」のコンサルタント講習も3月に延期した。

今年度は定員数を減らして開催する。6月の「ふじの」のプランナー講習は42人の参加を予定している。

セキュリティ・プランナー
知識を駆使して提案・運用

セキュリティ・プランナーは、各種警備業務の知識を駆使して社会や顧客のニーズに応え、総合的なセキュリティーを提案・運用できる人材の育成を目指している。

最新の講習カリキュラム(表1)は、3日間にわたって学科講義と警備計画に関する設問に回答する技能実習を行い、3日目の最後に技能試験と学科試験がある。合格率は83%となっている。

全警協は2016年、講習をさらに充実させるため、内容の見直しを図った。学科講義は、サイバーセキュリティーやIoT、防災、国際テロなど時事性が高い“旬なテーマ”について専門家が2時限の講義を行うこととした。技能講習は日常のさまざまな業務で活かせるよう、状況設定をそれまでの商業施設のほか建設工事現場、イベント会場などを追加した。

資格を取得する意義を高める目的で、同年に「セキュリティ・プランナーミーティング」をスタート。これは専門性の高いセミナーを受講できるほか、資格者同士が意見交換を行う“交流の場”を提供するもの。直近では19年、大阪会場で東京都立大法学部教授(刑事法)・博士(法学)の星周一郎氏が「防犯カメラ設置・運用の法的根拠と適正運用」のテーマで講演した。

セキュリティ・コンサルタント
広範囲なリスク把握と対策

セキュリティ・コンサルタントは、プランナーよりさらに広い範囲で顧客を取り巻くリスクを把握し、企業経営や生活に関わる対策を他業種の専門家とも連携して策定・実行する能力が求められる。

受講できるのはプランナー資格取得者のみで、講習前の3か月間、まず通信教育を受ける。教本の内容から3回のテストをオンライン上で受け、それらの事前学習を終えた上で講習を受講しなければならない。

コンサルタントの講習カリキュラム(表2)は、創設時から大きな変更はない。外部の有識者による講義のほか、2日目のグループディスカッション、3日目の研究発表と集団討論面接、プレゼンテーションはすべて採点され、発言内容のほかに積極性や協調性なども審査対象となる。最後に学科とコンサルティングの試験、個人面接がある。合格率は23%という“狭き門”だが、その分資格の価値は高い。

更新はeラーニングで

資格取得から5年目に行う「更新講習」は、eラーニング形式で行う。15年に始まったプランナーの1回目の更新は、全警協など3団体が共同研究、まとめた報告書「屋外型イベント安全ノート」の理解を深めるため冊子を読み込み、動画を視聴。20年からの2回目の更新は民法(債権法)改正のポイントについて視聴する。いずれも最後に試験がある。

17年に始まったコンサルタントの更新講習は、テーマを決めて事例研究を行い顧客に向けたプレゼンテーション資料を作成して提出する。

資格取得に向けて、全警協・山本正彦研修センター次長は次のようにアドバイスする。

「プランナー、コンサルタントともに講習前に教本をよく読み込むことが重要です。面接やディスカッションに備え日ごろからセキュリティーに関する問題意識を持ち考える習慣をつけておくことも必要でしょう」。