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クローズUP

〝コロナ禍〟に苦しむ声2020.12.01

九州地区連「自主行動計画」推進を申し合わせ

九州地区警備業協会連合会(会長=折田康徳・福岡警協会長)は11月19日、8県の警協会長が鹿児島市内のホテルに参集して「秋の理事会」を開催した。会議は事前に報告書を提出した「コロナ禍の現状と対応」「処遇改善と適正価格」「自家警備のあり方」を主議題に議論した。全国警備業協会から中山泰男会長、福島克臣専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。 【六車 護】

コロナ禍で九州8県に共通しているのは、各種イベント警備の中止に加え、観光関連警備の減少を憂える声だった。観光地の雑踏警備、ホテルなどの施設警備は軒並み縮小を迫られた。観光客の足となる航空機の国内線の減便、国際線の運休は全県で空港保安警備の大幅な減収となった。

とりわけ観光立県の沖縄は、国内外から多くの観光客を運ぶ空路だけでなく、クルーズ船の寄港も全てが中止になったという。「(各社は)給付金などによって、どうにか警備員を解雇することなく凌いでいる」と苦しい現状を報告した。

この他、コロナ禍による影響は「警備会社の売り上げは、例年に比べ各社とも4割程度の減少ではないか」(大分県)、「今のところ、廃業は報告されていない。しかし、来年度に大きな反動が出るのではないかと危惧している」(福岡県)などの声があった。

「警備員の処遇改善と適正価格」は、経営者に課せられた喫緊の要事であるとの認識で一致、「自主行動計画」をさらに推進することを申し合わせた。長崎が発生県となった自家警備、鹿児島県警協が提起した分離発注の必要性については、今後も連携して共有できる対処策を見出していくことになった。

全警協の中山会長は、今春に発足した「成長戦略を検討する委員会」の進捗状況を説明した。同会長はその中で「5部会と全体会議は、来年度の全警協総会までを目途に鋭意、議論を重ねている。ポイントを簡潔に言えば、経営基盤の強化と労働条件を改善することで、将来を見据えた警備業の持続的な発展を目指したい」と述べた。

警議総連が総会2020.12.01

「警備業の要望」聞く

「警備業の更なる発展を応援する議員連盟(警議連)」(会長=竹本直一衆院議員)は11月18日、千代田区永田町の議員会館内で総会を開催した。メンバーの自民党衆参議員約80人のうち議員本人28人、代理35人の計63人が出席。「コロナ禍の警備業の現状と課題」「警備業界による要望事項」に耳を傾けた。説明は警察庁の檜垣重臣長官官房審議官(生活安全局担当)、全国警備業協会の中山泰男会長と福島克臣専務理事、全国警備業連盟の青山幸恭理事長(ALSOK、全警協前会長)が行った。

全警協・中山会長と全警連・青山理事長は、2021年度政府予算編成を前に、コロナ禍を受けた警備業への支援策を盛り込み関係省庁に提出した「予算・税制等に関する要望」について説明。雇用調整助成金など各種助成金の拡充や期間延長などを求めた。

広げよう女性活躍2020.12.01

仕事と子育て、両立支援

東洋テック(大阪市、池田博之社長)は、現在警備に従事している警備員792人のうち、女性警備員は102人だ。採用する女性警備員の数は、増加傾向にある。2018年度は17人、19年度は34人、今年度は35人を数える。

入社すると同社の教育機関「TEC(テック)アカデミー」で教育・訓練を受け、現場に配属される。同社人事部の松田三保子課長は「銀行や病院の警備に従事する女性隊員が、お年寄りなどにソフトな物腰、細やかな気遣いで対応することは顧客満足につながっています」と話す。

今春、これまで女性が配属されていなかった機械警備部門に、初めて女性がパトロール警備隊員として配属された。これは同社が女性の職域拡大を図る一環で、貴重品運搬警備にも昨年から女性隊員が2人配属されている。

こうした職域拡大は、2017年に社内に立ち上げた「女性活躍推進委員会」(委員長・斉藤達郎管理本部長)の取り組みの一つだ。同委員会は、男女ともに仕事と子育てを両立できるよう支援する職場環境づくりを進めている。委員は、施設警備、監視センター、営業、事務など各職種の女性社員で交代制をとる。意見交換を重ねる中、「女性は結婚や子育てによって、本人が働き続けたくてもできない場合がある」ことがクローズアップされた。これを受けて同社は、次のような労働環境の整備を行った。

▽就学前の子供がいる場合は、勤務時間を30分単位で2時間の短縮が、小学1年〜3年生の子育て中は1時間の短縮が可能▽同社が契約する託児所を利用できる▽結婚や出産、介護などで退職して3年以内に本人の希望で再雇用されるジョブ・リターン制度を導入――などだ。これらの制度は男女とも利用できる。

松田課長は「女性の委員会を設けて働きやすさにつながる取り組みを進めていることは、女性の採用活動を行う上で大きなアピール効果があり、近年の採用増に結びついていると実感します」と話している。

チームの制服リニューアル

東宝総合警備保障(東京都渋谷区、龍原正会長兼CEO)の女性だけの警備チーム「SSレディース」(以下、SSL)は、制服2種(春秋冬用、夏用)をこのほどリニューアルした。

SSはセーフティー(SAFETY)、セキュリティー(SECURITY)の頭文字で“安心安全”を意味する。同社の女性警備員は施設警備、交通誘導警備などに100人が従事しているが、SSLは15人で、社内選抜でなく独自の採用枠で入社試験を受ける。警備員教育や訓練に加え、国際線の元CAから英会話や接遇マナーの指導を受け、2019年ラグビーW杯会場の手荷物検査、大手企業の受付業務などに携わってきた。

今回の新制服は、同社グループの映画製作会社「キグー」の取引先で、AKB48など人気タレントの衣装デザインや学校制服を手掛ける企業「オサレカンパニー」(東京都千代田区、内村和樹代表)からの提案で製作した。SSLを担当する同社レディース事業部・竹内美佐子部長代理は「警備員としての威厳、制服の機能性を維持し、スタイリッシュな制服ができました」と話す。新制服の画像は、同社ホームページでSSLについての紹介とともに公開中だ。

同社は「女性向けの警備業説明会」を毎月数回開き、ホームページで告知する。今年度は120人の女性が説明会に参加。選考を経てSSL候補が10人、一般の女性警備員が30人採用されている。

竹内部長代理は「応募者はホームページで新制服や女性説明会を知って“女性が活躍している警備会社”という親近感を持って面接に来てくれる効果があると思います」と述べた。

「管理職になるのは自然」

三沢警備保障(青森県三沢市、佐々木仁社長)は「女性管理職を増やす」ことを目標に掲げている。管理職に女性が増えることで、女性の人材確保につなげ、男女とも働きやすい環境を整える一環だ。

同社の社員は140人。うち女性は11人で、8人が施設警備、交通誘導警備、機械警備の監視センターに従事し、3人が事務職を務める。

同社の仙台営業所では、交通誘導警備に従事する40代の女性警備員が指導教育責任者の資格を取得し、社内で初となる女性の「主任」を今春から務めている。本社でも今春から、事務職の女性が主任に昇格した。

5年後をめどに警備職と一般職で女性の管理職を増やすために、昨年から女性社員が参加して、職場環境の整備などについての研修会、意見交換会を随時開いている。

佐々木文仁副社長は「警備業は今まで以上に女性が活躍できる職業だと思う。男性の多い職場であっても“管理職になるのは特別なことでなく自然なこと”という意識を女性が持って、より積極的にスキルアップなどに取り組む心構えが大切になると考えています」と語った。