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単価引き上げ策を報告2022.12.01

九州地区連 大分で秋の理事会

九州地区警備業協会連合会(会長=折田康徳・福岡警協会長)は11月17日、大分市内で秋の理事会を開催した。8県の会長が出席、経営基盤の強化など当面の諸問題と今後の取組みについて意見を交わした。全国警備業協会から中山泰男会長、黒木慶英専務理事、小澤祥一朗総務部次長が参加して議論に加わった。

折田会長は「業界における喫緊の課題は、なんといっても適正料金の確保による経営基盤の強化です。各協会から昨今の活動状況を報告してもらい、形式にとらわれない自由討論で活発な議論を期待したい」と呼び掛けた。

全警協の中山会長は、「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」の改訂に言及、「自主行動計画は警備業が健全に発展し、適正な取引を推進していくために実践することが盛り込まれています。全警協は各地の協会の声を聞きながら、かつてないほどの強い決意で一丸となって取り組んでいきたい」と述べた。

経営基盤の強化、単価引き上げ策についての報告は次のとおり。

[福岡警協]令和元年から適正取引推進特別委員会が中心となって、「適正な入札に向けた警備業務に関する要望書」を福岡県、福岡市、北九州市、久留米市に提出。今後も活動を活発化させたい。

[大分警協]9月末、大分県警備業連盟が「令和5年度国政・県政予算等に関する意見交換会」に初参加。経営基盤の強化、単価引き上げ策の支援を要請した。

[鹿児島警協]今夏、適正取引をテーマに、建設業者など発注者との間で抱える交通誘導の警備料金や人手不足の課題についてのアンケート調査を実施。県建設業協会、県土木部、国交省国道事務所と意見交換したことを報告した。

「行政手続きサイト」に追加2022.12.01

警察庁が対象を拡大

警察庁は11月17日、来年1月4日正午から「警察行政手続サイト」で申請できる対象手続を追加することを明らかにした。

警備業法関係では同法第9条規定の「営業所の届出等」に関し、警備業者が主たる営業所の所在する都道府県以外の都道府県の区域内で警備業務を行おうとするときの届出(警備業法第9条後段業者)を同サイトで行うことを認める。

警察庁は国民の利便性向上のため、都道府県警察に対する一部の手続について、メールでの申請・届出を可能とする「警察行政手続サイト」の試行的運用を2021年6月から開始。現在、警備業法や道路交通法などに規定のある20の手続を対象としている。

警備業法関係では(1)警備業廃止の届出(警備業法第10条第1項)(2)警備員の服装の届出(同第16条第2項)(3)同服装の変更の届出(同第16条第3項)(4)警備員が携帯しようとする護身用具の届出(同第17条第2項)(5)同護身用具の変更の届出(同第17条第2項)――の5手続を同サイトでの申請・届出の対象としている。

特集ワイド 警備業の災害対策2022.12.01

全国警備業協会(中山泰男会長)は9月、「自然災害発生時における警備員の安全確保のためのガイドライン」を作成した。警備員の安全を確保したうえで、警備業の災害支援活動はどのように在るべきなのか。近畿地区警備業協会連合会(宇多雅詩会長=京都警協会長)が開いた災害支援検討会、静岡県警備業協会(立川勝彦会長)による経営者研修会の概要を交えて考察する。

警備員守る指針

「ガイドライン」作成の目的は、自然災害発生時に住民の避難誘導などの災害支援活動に出動した警備員や、通常業務の最中に自然災害に遭遇した警備員を、これら災害(労働災害)から守ることだ。

2018年7月の「西日本豪雨災害」では、交通誘導警備業務に従事していた警備員が濁流にのまれて2人が死亡した。同じ悲劇を繰り返さないために警備員を守るための“指針”としてガイドラインは作成された。

また、ガイドラインは「“自らの命は自らが守る”との意識を持ち、自らの判断で主体的な行動を取ることが必要」と記した内閣府が2021年5月に策定した「避難情報に関するガイドライン」の内容を踏まえた。

全警協ガイドラインは、自然災害から警備員を守るために、警備員と警備業者に次の3つの原則「安全3原則」に従って行動することを求めている。

(1)「警備員」は被災の危険が切迫していると判断した場合、避難など安全確保行動をとる。

(2)「警備業者」は警備員が被災すると判断した場合、避難など安全確保行動をとるよう指示する。

(3)「地方自治体より緊急安全確保が発令された場合」は警備員は避難その他の安全確保行動をとる。警備業者は警備員に対してその旨指示する。

災害発生時には、避難行動の遅れが重大な結果につながる。警備員は、自身に被災の危険が切迫していると判断した場合は、顧客(契約先)の許可や指示を待たずに直ちに避難など安全確保行動をとる。一方、警備業者は、警備員の安全を確保することは労働安全衛生法上の義務でもある(同法第25条)。

予想される危険

ガイドラインは、自然災害を「暴風・大雨」「河川の氾濫」「高潮」など全8種類の自然災害に分け、それぞれの災害ごとに想定される危険を例示した。

例えば「暴風・大雨」では、「強風にあおられて転倒する」「視界不良のために危険な場所に立ち入ってしまう」「視界不良やスリップが原因の車両事故などに巻き込まれる、自身が事故を起こす」――など、警備員が遭遇する可能性のある危険を示し、それぞれの事態や危険への対応を求めている。

自然災害に対する「平時」と「災害発生時」それぞれにおける警備員の安全確保のための取り組みも示した。

「平時」の取り組みでは、災害によって発生する危険について事前に情報を収集・分析する「災害によるリスクの把握」を実施する。次に把握したリスクの発生に備えた「対応マニュアル」を作成し社内に周知する。

対応マニュアルには(1)安否確認や現場警備員との連絡方法(2)事業所から安全な場所への避難経路・避難場所、避難誘導の担当者(3)ヘルメットや懐中電灯などの防災用具の保管方法(4)警備業務の中止を決定する責任者(5)警備業務を中止する際の現場警備員や契約先への連絡方法――など必要な項目を記載する。

顧客に対しては、災害発生時の警備員の安全確保についての自社の対処方針を伝えて理解を求めるとともに、警備契約を結ぶ際や警備計画を作成する際には、安衛法上の事業者の義務にも留意しつつ、警備員の安全確保という観点から契約書や警備計画の内容を確認、必要に応じて修正を申し入れる。

特に、警備員の生命・身体に危険が生じる状況では一時的に警備業務を停止できること、警備業務を停止した場合に「免責」されることを、顧客との契約条項に盛り込むよう努める。

「災害発生時」の取り組みは、安全3原則を念頭に、対応マニュアルに従って行動する。特に警備員の生命に危険が生じていると判断した場合は、警備業者が契約先に業務中止の旨を連絡し、直ちに警備員に避難など安全確保行動をとらせる。

一方で、現場警備員が契約先関係者や現場に居合わせた一般の人の避難誘導などを行うことが想定される場合、警備員が被災する危険が切迫した時は、警備員は直ちに安全確保行動をとるとともに、警備業者は漫然と警備員を現場に留め置かないなど、警備員、警備業者双方の取り組みを示している。

災害時の広域支援 近畿地区連が検討会開く

近畿地区警備業協会連合会は11月22日、大阪府警備業協会内で「災害広域支援対策検討会」を開催した。近畿地区連の宇多雅詩会長、豊田正継副会長(大阪警協会長)、中尾忠善副会長(兵庫警協会長)、2府4県の専務理事と災害支援委員長らが出席。全国警備業協会警備業務適正化小委員会から松尾浩三(岡山警協会長)、梶岡繁樹(兵庫警協副会長)の両委員が参加した。

同検討会は各府県内では対応しきれない大規模災害による被害が発生した際に協力体制がとれるよう、平時から情報共有を行うことが目的。2003年に設置され、2年に1回の頻度で開いてきた。

各府県協会は災害対策活動の現状を報告した。

大阪警協は1996年に府と締結した災害支援協定の改訂に向けて府危機管理室・府警本部と協議を進めており、進捗状況を報告。警備員出動時の警備料金、安全の確保、損害保険の3点に関して交渉中で年度内に新たに締結する計画だ。

兵庫警協も県と災害支援協定の見直しを進めており、特に警備員の安全確保に関して強く申し入れを行っている。

他府県からも、自治体との災害時における交通誘導に関する協定締結、災害支援活動の実施要綱策定、災害対策積立金の現状、災害訓練の実施、などの活動報告があった。

宇多会長は「各府県協会で協定見直しを進め、地区連でも情報共有しながら広域支援協定の改訂について提案していきたい」と総括した。

台風被害受け「有償出動」 静岡警協の研修会で講演

静岡警協は、県との間で締結した災害時協定について、より実効性を高めるための見直しを進めている。11月21日の「経営者・経営幹部研修会」では、警備業の災害支援をテーマに講演が行われた。

講師を務めたのは全日警サービス長野(長野市)の浅妻豊代表取締役社長だ。2019年10月、台風19号で千曲川の堤防が決壊し長野市内で甚大な浸水被害が発生、長野県警備業協会(竹花豊会長)は長野市との災害業務協定に基づき「有償出動」を行い、同社は協定実施事務局を務めた。当時の経緯を浅妻氏は次のように語った。

「長野警協は、県・長野市など6市と協定を結んでいる。18年の西日本豪雨で岡山警協が岡山県との協定に基づき有償出動を行っており、警備料金について岡山警協に聞き取りを行い出動要請に備えた。堤防決壊9日後の10月21日、長野市から災害ゴミ集積場の警備を要請され、見積書を提出し合意に達した」。

会員各社の警備員延べ800人以上が出動、午前9時から午後5時半までは3か所の集積場で災害ゴミを搬入する一般車両の誘導を、午後7時から翌日午前4時までは別の集積場3か所で自衛隊による作業時の交通誘導警備を約3か月行ったことを説明した。

不衛生な場所で従事する警備員の安全確保として、防塵マスク・ゴーグルを支給。「指揮命令系統」については警備業法に抵触しないよう県警と打ち合わせ、市の担当者・自衛隊担当者からの指示としたことなどを語った。

浅妻氏は「防犯パトロールなど、被災者に寄り添って安全安心を守ることは警備業の地位向上に結び付くと考えます」と強調した。