警備保障タイムズ下層イメージ画像

クローズUP

静岡警協 指教責研修会2024.03.11

警備員自身の安全確保を

「富士山は、いつ噴火してもおかしくない」――。静岡県警備業協会(立川勝彦会長)が2月29日に静岡市内で開催した警備員指導教育責任者研修会で「富士山噴火における対応要領」と題する講演が行われた。

講師は静岡県警察本部警備部・緊急事態対策課の南川教典担当課長補佐。富士山は過去5600年間で約180回の噴火が確認され、1707年「宝永噴火」では東京ドーム550杯分の噴出物があり「以後300年以上にわたりマグマをためている状態で、いつ噴火してもおかしくない」と指摘。火山災害の特徴や2014年の御嶽山噴火の被害状況、住民避難などの「噴火警戒レベル」5段階について解説した。

改定されたハザードマップを示し、噴火時の避難対象者は静岡・山梨・神奈川で最大80万人、火山灰は雨でセメントのようになり家屋倒壊の恐れがあると説明。昨年改正された「活動火山対策特別措置法」や富士山火山防災対策協議会の取り組み、警察の訓練と対策などについて述べた。

さらに「噴火は南海トラフ地震と連動する可能性が懸念される」として、津波発生時の避難を呼び掛ける県警の標語「さあスタート!(さわがず・あわてず・すぐに・高く・遠くへ)」を紹介し「自主的な避難行動は重要」と強調した。

静岡警協は今回、全警協が策定した「自然災害発生時における警備員の安全確保のためのガイドライン」を踏まえ、警備員が自身の安全確保を図る社内教育の一環となる研修会を企画した。参加者は「防災対策と避難行動を警備員教育に取り入れたい」と感想を話した。

南川氏の講演に先立ち、県警生活安全部・生活保安課許可事務指導管理室の濱本充管理官は、県内警備業の現状、適切な指導教育のポイントを講演した。

安全衛生大会では立川会長が安全標語の入賞者を表彰。一同は安全な職場づくりを誓った。

特集ワイド AI監視カメラ2024.03.11

人手不足の解決に

AIを搭載した監視カメラの活用が広がっている。警備の質と業務効率化を共に向上できることから今後、普及が加速することが予想される。国内監視カメラシェア1位のi―PRO(東京都港区、尾崎祥平社長)を訪問し、警備業務へのAI活用について聞いた。新製品の高性能AI監視カメラ、ウェアラブルカメラについても機能と使用メリットを取材した。

i―PRO・事業戦略ディレクターの横光澄男氏に話を聞いた。

当社は以前、パナソニックのセキュリティー部門でした。2019年に独立し「i―PRO株式会社」という社名で、72か国で事業を行っています。

AI監視カメラとは、カメラ内で高度な映像分析・解析を実現するAIプロセッサー(処理装置)を搭載した監視カメラのことです。

以前はエッジ(ネットワークの末端)でAI処理できるカメラがなく、サーバー側で処理を行っていました。最近はエッジ側の能力が格段に上がっています。サーバーやクラウド側で処理するAIのコストが高価であることから、エッジ側で処理を行う流れとなってきました。

ディープラーニング(深層学習)技術を用いてAI処理をする場合、処理が非常に重くなるため、専用のPCや端末で処理を行っていました。それにはコストがかかり、PCを置くスペースも必要でした。

現在はLSI(大規模集積回路)の中にAIエンジンが入っており、それを監視カメラに組み込むことでエッジ側だけでAI処理ができるようになりました。PCなどが不要のためコストが安く、省スペース、省エネルギーを実現できます。

当社ではさまざまな用途のカメラにAIプロセッサーを搭載し、ラインアップを取り揃えています。その中には“空間調和型”として名刺サイズの「i―PRO mini」というカメラがあります。超小型でデザイン性が高く、威圧感がないため、さまざまな用途に使われています。

AI監視カメラはAIアプリケーションをインストールすることで、検知機能を広げることができます。侵入検知や人数カウント、混雑検知などの基本的なアプリは当社で提供しますが、ユーザーからの要望全てに対応することは難しいため、協業体制をとっています。AIエンジンをオープンにし、各ベンダーが当社のカメラを使ってAIアプリを実装する仕組みを提供しています。

AIアプリの一例として、人物検索と車両検索、属性検索などの機能があります。AI監視カメラの中では常に人物や車両をメタデータ(データに関するデータ)を収集しています。これは後で特定の人や車を検索に使うためのものです。人物だと髪型や服の色など、車だとセダンかトラックかなどの形、色や方向などで検索することで、該当する映像を確認できます。AIアプリを活用することで、人手不足の状況でも効率的に監視業務ができるのです。これからは自社と他社との連携によるアプリの両輪で、AIの普及拡大を図っていきます。

今後の取り組みとして進めたいのは「AIの現場学習機能」です。監視カメラ設置場所の環境条件で精度が出ない場合や、元からある検出対象では対応できないことがあるからです。例えば工場でフォークリフトを検出したい、あるいはイノシシなどの害獣を検知したいなど、個別の要望があってもすぐには対応できませんでした。そこでAI自体の進化を進めることは当然ですが、現場ごとの学習も重要になると考えています。

2月に発売したフルモデルチェンジのXシリーズは、設置現場で環境に応じたAI学習を可能とするAIプロセッサーを搭載しています。あらかじめ学習させてある人・車・二輪車以外の対象物を検知対象として追加したり、誤報や失報のフィードバックにより検知率の向上を図ることができます。

警備業の皆さまには、今後さらに進化するAI監視カメラを活用していただき、人手不足などの課題解決に役立ててもらえれば、と思います。

ウェアラブルカメラ

i―PROは身体に装着して現場の状況を記録するウェアラブルカメラ「WV―BWC4000UX(以下BWC)」を2024年4月から国内で販売開始する。

BWCは北米の警察で多数の導入実績があり、警備現場など過酷な環境での運用に耐えられるよう堅牢に設計されている。IP67防水防塵性能と、米国国防総省の調達規格MIL―STD―810Hをクリアした耐衝撃性能を持つ。

手袋で操作可能な大きな録画ボタンを押すことで、最長3分前からの映像を記録できる。水平137度、垂直79度の広角レンズで周辺映像まで撮影可能で、専用ビューアで歪み・揺れを補正して再生。GPSを内蔵し撮影場所の経度・緯度を記録できる。専用のドックチャージャー(充電器)はシングルとマルチの2タイプあり、挿すことによりPCに自動で録画データを保存する。大容量バッテリーで最長12時間の連続運用が可能。予備バッテリーに交換すれば24時間運用できる。

4つのマイクで現場の音声をクリアに記録し、ミュートボタンで音声記録だけ止めることもできる。録画されたデータはパスワードでロックされており、分解してメディアを取り出されても再生できない。

i―PROは23年に行った国内向けモニター販売で得た反応や意見をBWCに反映させ、今回の正式販売に至った。

新Xシリーズ9機種

i―PROの監視カメラ・ラインアップのうち、スタンダードモデル「Sシリーズ」と、ハイエンドモデル「Xシリーズ」がAIプロセッサーを標準装備する。カメラ内で人物や顔、車、二輪車を自動で識別可能で、人の叫び声やガラスの破損音、クラクション、銃声などのAI音識別機能も備えている。

同社はハイエンドモデル「Xシリーズ」をフルモデルチェンジして販売開始した。“新”Xシリーズは、屋外用ボックスカメラ、屋内用ドームカメラ、それぞれ2メガピクセル、5メガピクセル、8メガピクセルのセンサーを搭載した計9機種。2メガピクセルと8メガピクセルは2月、5メガピクセルは4月に発売予定だ。いずれも従来モデルと比較して約4倍のAI性能・CPU性能を実現している。

カメラの特長は大きく4点ある。

1点目は、AI現場学習アプリで検知対象や検知精度の改善を図ることができること。

2点目は、最大9つのAIアプリの搭載、最大5つのAIアプリの同時使用が可能なこと。切り替えの手間なく必要なAIアプリを1台のカメラで運用できる。

3点目は、AIプロセッサーを搭載していない同一ネットワーク上のカメラ最大3台の映像を取り込みAIによる解析が可能だ。

4点目として、照射距離50メートルのIR(赤外線)―LEDと光学3.1倍ズーム(8メガピクセルは2.0倍)、AIプロセッサーによる画質自動最適化により、夜間でも対象物を明確に撮影できる。