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警備員A、最大の伸び率2023.03.01

国交省 交通誘導の新労務単価

国土交通省は2月14日、3月から適用する「公共工事設計労務単価」を公表した。47都道府県・全51職種計の加重平均単価は過去最高の2万2227円、単純平均の伸び率は前年度比5.2%増となった。社会保険加入促進のために必要な法定福利費相当額を加算するなどの措置を行った2013年度の改訂から11年連続の引き上げ。公共工事に従事する交通誘導警備員は、1級または2級検定合格者の「警備員A」が1万5967円、伸び率は前年度比7.1%増。A以外の「警備員B」は同6.3%増の1万3814円。Aは全職種中最大の伸び率となった。

「警備員A」の伸び率が7.1%と、公共工事で広く従事するとび工や鉄筋工など「主要12職種」の伸び率5%を上回ったのに加え、全職種中でも最大となった(「警備員B」は6.3%増)。これにより、警備員Aの全国加重平均単価は前年度比1094円増の1万5967円。初めて「軽作業員」の単価(1万5874円)を上回った。警備員Bは同857円増の1万3814円となる。

警備員の全国単純平均の引き上げ額は、警備員A1047円、警備員B796円。Aで平均引き上げ額を超えたのは、宮城・茨城・新潟・岐阜・福井・鳥取など31都府県。引き上げ額の最高は千葉・東京・神奈川・石川の1500円増で、九州・沖縄を除き900円超の大幅増となった(沖縄は前年度同)。警備員Bは、北海道・青森・茨城・新潟・鳥取など23都道県で平均引き上げ額796円を超えた。また、関東、北陸、中国地方では900円超の引き上げとなった。

警備員Aの新単価で最も高いのは東京の1万7900円、次いで神奈川1万7800円、愛知1万7600円など。最も低かったのは高知と沖縄の1万3600円で、東京とは4300円の開きとなった。警備員Bの最高額は東京・神奈川の1万5500円、次いで茨城1万5300円、千葉1万5000円など。最も低いのは高知の1万1500円(前年度比600円増)となる。

新労務単価の決定に当たり国交省は▽最近の労働市場の実勢価格▽必要な法定福利費相当額▽義務化された年5日の年次有給休暇付与に要する費用▽時間外労働時間を短縮するため必要な費用▽建設元請け会社が下請けの専門工事業者の技能者に直接支給している手当――を反映させた。また、単価に労働者雇用に伴う必要経費が含まれていないことを明確にするため「必要経費を付加した新単価」も公表した。

特集ワイド 警備報告書を電子化2023.03.01

警備報告書は、契約業務を履行した証明となり請求書の作成、警備員の給与計算に不可欠なデータだ。警備業向けのITサービスを手掛ける企業・ジャガーノートは、警備報告書の電子化サービス「KOMA(コマ)サイン」を開発し販売している。その機能と活用のメリットについて取材した。

「KOMA(コマ)サイン」は、スマートフォンのアプリで警備報告書を作成してクラウド上に保管するシステムだ。警備現場、管制、経理などの業務効率化を図るデジタルツールとして活用できる。

警備員は通常、業務の完了後にユーザーの現場監督などに報告書を手渡し、確認のサインをもらった上で自社へ提出する必要がある。FAXや郵送の場合は通信費が、会社へ持参する際は交通費が発生していた。

内勤社員は報告書を回収してデータ入力する作業に追われ、破損や紛失の場合は再度作成しなければならない。税務調査などの関係で長期間保存し、報告書が詰まった段ボールの保管場所は悩みの種となっていた。

こうした課題を改善するのがコマサインだ。報告書作成・保存はスマホの操作で完結。警備員は報告書を会社に届ける必要がなく、現場から自宅へ直帰できる。ペーパーレス化、紙代や交通費の削減にも結び付くものだ。

警備員は事前に、顧客や場所などの項目を入力しておくことで報告書を作成しやすく、記入に要していた時間が短縮される。手書きにつきものの誤字・脱字も防ぐことができる。

現場でユーザーが行う「確認」の検印は、スマホ画面に指やタッチペンでサインしてもらえば完了する。

自動的に作成日時や位置情報が記録されるため紙の報告書よりも正確で、紛失のリスクもない。必要に応じ印刷、PDF化が可能だ。

さらに、ユーザーから過去の報告書について問い合わせがあった場合、検索機能を使えば特定のデータを即座に呼び出すことができる。従来のように大量の書類をめくって帳票を探し出さなくて済むのだ。

デジタルツールを積極的に導入することで、コストを減らし業務の効率化を進め、警備員と内勤社員の負担を軽減することは、職場環境の改善につながる大切な一歩になっている。

開発会社のジャガーノートは「エッセンシャルワーカーである警備業を、より魅力ある場所に」との理念を掲げ、警備業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた新サービス創出に取り組んでいる。管制業務の負担を軽減するクラウド管理システム「KOMAINU(コマイヌ)」を開発・提供している実績がある。

現在、コマサイン導入支援のキャンペーンを行っており、今なら30日間無料トライアルを体験できる。

▽問い合わせ先 ジャガーノート Eメール jin.hir@djuggernaut.com ☎03―6822―8594

利便性を実感

コトナ(京都市、大島伸二代表取締役社長)は、DX対応の一環としてイベント警備でのAI機器活用、社内ペーパーレス化などに取り組む。昨年11月からは施設警備業務、交通誘導警備業務の一部の現場にコマサインを導入している。

同社の水上太一事業部長は、コマサイン導入についての感想を次のように話した。

「スマホを使う警備報告書の作成は、スムーズに行われています。現場の隊員も内勤社員も、これまで報告書のために費やしていた時間を別のことに使えるようになりました。デジタル化の利便性を実感しています」。

警備報告書を会社に持参することは、管理職と隊員が対面する機会となり、良好なコミュニケーションにつながる面もあるとされる。この点について水上事業部長は「持参の機会がなくなったぶん、隊員とは電話やメール、LINEなどで、まめに連絡を取り合うよう心掛けています。むしろ今まで以上に円滑なコミュニケーションにつながっていると感じます」と述べた。

同社はコマサインの導入を順次、広げていくとしている。

ジャガーノート・平井社長に聞く
「現場の目線」で開発

――京都府警備業協会青年部会がコマサインの開発に協力しています。

2022年1月に京都府警備業協会青年部会の勉強会に招かれ「クラウドを活用した管制業務」について説明させていただく機会がありました。

その後、部会員の永岩創氏(エムアイディ専務取締役)から「警備報告書が電子化されれば、より働きやすい職場づくりにつながる。報告書に記入する情報を警備現場から本社に送信する仕組みは可能だろうか」との提案を受けました。永岩氏はじめ部会員の皆さんからヒアリングして「現場の目線」を取り入れようと研究を重ねました。

――どのように進めたのでしょうか。

建設工事などの警備現場に張り付いて、警備員が現場監督からサインをもらう様子を何十回と観察させてもらいました。スマホを使ってテストを重ね「高齢の警備員も使いこなせる操作しやすいデザインにしてほしい」「自社で使用中の報告書と同じ形式の報告書をスマホで使えるようにできないか」などの要望を実現できました。

――DX対応は、警備業の新たな課題となっています。

警備報告書を一律に電子化するのではなく、社内で紙の報告書と電子報告書を共存させ、3年から5年かけてデジタルに移行していく第一歩として、コマサインを導入していただければと考えています。

私の親族は警備会社の経営に携わっており、人材の確保と定着をめぐる苦労は身近に知っています。ITサービスの活用によって職場環境の改善を進めることで警備業の発展に少しでも寄与できればという思いを込めて開発に取り組んでいます。