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クローズUP

「東京2020」閉幕2021.09.11

警備JV 大会支えた

五輪に続き8月24日から始まったパラリンピック競技大会が9月5日、閉幕した。これにより30日間(五輪17日、パラ13日)にわたる「東京2020大会」が全て終了した。警備は、警察とともに史上初めて民間警備会社による共同企業体「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体(警備JV)」加盟553社に所属する警備員など延べ約54万人の警備員が担当。コロナ禍と猛暑の中で大会の安全を支えた。

パラリンピック大会は五輪同様、日本選手のメダル獲得が相次いだ。ゴールボールなどの競技会場となった幕張メッセ(千葉市美浜区)では、車いすの警備員・濱田久仁彦さん(61)=5月21日号=が手荷物検査に従事、警備の分野で活躍した。

機械による顔認証・手荷物開披・金属探知機通過の3検査業務を行うチームの一人として現場入り、手荷物開披専門として開会式翌日の8月25日から最終日9月5日まで勤務した。

関係者によれば、濱田さんの勤務は大会組織委員会と警備JVが「パラリンピック大会警備のレガシー(遺産)」として検討、実現したようだ。

勤務に際し濱田さんは、事前のeラーニングによる教育に加え、会社が行った開披の特別訓練も受講して業務に備えた。勤務時間中は同社社員が「補助員」として付き添うなどの配慮も行われた。

濱田さんは「警備という仕事の広さを感じました」と、新たな発見を得たようだ。

1歳でポリオ(小児麻痺)を発症した濱田さんは、両足に運動障害が残った。学校には車いすで通い、校内では専用ギプスと松葉杖で過ごした。民間企業勤務を経て20歳で埼玉県警に事務職員として採用。40年間、公務員生活を続けた。

今年1月、日本ゴールボール協会と「オフィシャルサポーター契約」を結ぶなど障害者支援やスポーツに積極的に取り組む警備会社・ゼンコー(さいたま市、海野弘幸社長)に警備員として入社した。動機は「(後から来る同じ障害者に)道筋を示すことができれば」だった。

北関東綜警 防災訓練で接種2021.09.11

近隣住民120人にワクチン

獨協医科大が協力

北関東綜合警備保障(宇都宮市、青木靖典社長)は8月28日、「北綜警グループ防災訓練」を本社内で行い、社員100人が参加した。訓練の中で地域社会への貢献として、近隣住民120人に新型コロナウイルスのワクチン接種を行った。

同社は職域接種で近隣住民も対象として3000人分(6000回分)のワクチンを確保。グループ会社を含む社員と家族への接種を7月16日から実施していた。

今回の接種には県内にある獨協医科大学が協力。本社周辺の各自治会を通じて約2000世帯に通知、希望者が接種を受けた。住民への2回目の接種は9月25日に本社内で行う。

住民からは「やっと接種を受けることができて安心しました」などの感想が寄せられている。同社は今後ワクチンの追加分を確保した場合に住民への接種を広げることを検討中だ。

訓練は、宇都宮市中心部で震度6強の直下型地震発生を想定。青木勲会長を統括官とする災害対策本部を設置し、被害・安否情報の収集や各支社での避難所開設などの対応を確認した。

特集ワイド 「超高齢社会」見守る2021.09.11

一人暮らしの高齢者が増えているが、親の様子を簡単に見に行けない人も多い。家族が近くにいない高齢者の健康管理が社会的課題となる中、家族に代わり高齢者の安否を確認したり、異常があれば連絡してくれるのが「高齢者見守りサービス」だ。超高齢社会の到来で同サービスに着手する動きが業種を問わず活発化しているが、最も適しているのは警備会社といえる。

高齢者見守りサービスはさまざまな業種が提供しているが、警備会社は日本が人口減社会に転じ国連の定める超高齢社会(人口に占める高齢化率が21%以上)に入った2010年頃から、同サービスの提供を本格化させた。

警備会社のサービスは安否確認、駆け付けなど多様なメニューをそろえた総合型が主体だ。緊急時の駆け付けを行う拠点の多さや救急救命スキルなどで他業種よりも優れ、制服を着用して行う警備業務の存在も利用者に安心感を与えている。

メニューの一つ(オプション含む)である緊急時の駆け付けサービスは、警備業法第2条第1項第1号に規定する「盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」に該当するため、03年に警察庁が「警備業の認定を受けた者が行う必要がある」との見解を示している。その意味でも、高齢者見守りサービスは警備会社に適している業務である。

他業種の同サービスはセンサーやカメラによる監視、配達員による月1回の訪問など機能限定的なものが多い。料金は安めでプライバシーも保護しやすいが、突発的な異変には対応しにくい。基礎疾患などを持つ高齢者の場合、多くの警備会社が手掛ける総合型の方が緊急対応能力が高く家族も安心できる。

一人暮らしの高齢者増加で同サービスは今後も需要が増えるとみられるが、現状の利用者は高齢者の一部に限られている。どうやってシルバー市場に浸透させていくかが課題で、高齢者の安心・安全に関わる重要なサービスだということを強くアピールしていく必要がある。

セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は、室内に設置したセンサーで安否を確認する「安否見守りサービス」、緊急時に高齢者がペンダントを握るだけで通報信号を送れる「緊急通報サービス」など多彩なメニューをそろえる。契約前にデモ機で機器類の操作を体験できるなどサポート体制も充実している。

ITを使った展開も進め、家族のスマートフォンには外出・帰宅などのセキュリティー情報を通知できる。テレビを使った見守りサービス「まごチャンネルwithSECOM」、腕時計型デバイス「AppleWatch」によるサービスも提供している。

ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)は、高齢者が使いやすいシンプルデザインの通報装置を採用している。大きく「緊急」と書かれたボタンを押すと、24時間いつでも救命講習を修了した警備員が駆けつける。必要な機器類はインターネット環境がなくても電話線と電源があれば設置できる。通報装置内部には温湿度センサーを備え、熱中症の危険を遠隔で見守ることもできる。

料金メニューも豊富で、購入型やレンタル型に加え初期費用ゼロ型も用意した。高齢者の状況や健康状態に合わせて最適なコースを選べる点が特徴だ。

地域密着型の警備会社もそれぞれの特性を生かした高齢者見守りサービスを提供している。地元では知名度がある企業なので地域の信用度が高く、安心してサービスを利用できるという高齢者は多い。地域コミュニティーの特性を生かし受注につなげているようだ。

東亜警備保障(大阪府堺市、井上徹社長)は、地元密着型の高齢者見守りサービス「みまもり隊」を提供する。同社ホームページのサービス案内コーナーで、巡回訪問するスタッフの氏名・顔写真を公開し身元を確認してもらうなど、利用者の親近感を高める工夫を行っている。

富士警備保障(佐賀市、小原龍治社長)は、約30年前に高齢者見守りサービスを開始した。地元の過疎化と高齢化を念頭に置き、警備ノウハウを地域貢献の形で還元したいとの趣旨で同サービスを始めた。緊急通報システム「HOT」の通報装置は、ボタンが「緊急」「相談」「取消」の3つだけで高齢者でも使いやすく、利用者の利便性を意識した内容になっている。