クローズUP
富山警協青年部会2024.02.11
被災3市でパトロール
富山県警備業協会(木下勲会長)の青年部会(和田額謹部会長=富山県綜合警備保障)は、「令和6年能登半島地震」により被害を受けた県内の氷見市、高岡市、小矢部市で「被災地パトロール」を1月19日から26日にかけてボランティアで行った。
和田部会長はじめ12人が参加。被災地では空き巣など侵入窃盗や被災者の不安につけ込む犯罪が懸念されることから「協会として地域住民の方々のために安心感の醸成を図る」ことが目的だ。青年部会員は2人1組で、午前10時から正午、午後1時から3時にかけて徒歩と車両で駅前や住宅街を交代で巡回した。
車の側面には「富山県警備業協会安全パトロール車」のマグネット式プレートを貼付。巡回にあたって(1)事件などで警察に通報する場合は、スマホで状況を撮影する「110番映像通報システム」を活用する(2)震災に便乗した詐欺的事案の相談を受けた場合は「能登半島地震関連消費者ホットライン(フリーダイヤル 0120―797―188)を紹介する(3)危険箇所には立ち入らず、緊急地震速報があれば直ちに避難する――ことなどを念頭に活動した。
和田部会長は「暮らしに身近な警備業として地域の皆さまに少しでも安心していただければとの思いから、部会員は一致協力して取り組みました」と述べた。部会員は「家屋が損壊し不在となっている住宅も多く、パトロール活動の重要性を認識した」「大雪警報が発令された日は、家屋が倒壊しないか心配だった」などの感想を話した。
地震による富山県内の負傷者は47人(うち重傷3人)、住宅被害は6000棟以上。一時、1万5000人が避難していた。
全警協 防衛省と「申し合わせ」2024.02.11
自衛隊OB再就職を支援
全国警備業協会(中山泰男会長)と防衛省は、人材確保に係る「申し合わせ」を文書で締結した。退職自衛官の警備会社への再就職支援や自衛官の募集、予備自衛官制度に関する内容を盛り込んだ。全警協は各都道府県警協に通知し、同省地方組織(自衛隊地方協力本部など)との連携強化を依頼した。
申し合わせは昨年12月22日付で締結した。再就職支援では、退職自衛官の採用活動で警備業に従事している自衛官OBを生かすこと、職場体験の機会を設けることや再就職で有用な資格となる「警備員検定」の取得で協力する。
自衛隊では部隊の精強性維持のため、50代で定年退職を迎える「若年定年制」と、20代から30代半ばで退職する「任期制」がある。2021年度では警備業に、若年定年制で約380人、任期制で約70人が再就職した。
申し合わせの締結を受け、全警協は「全国に門戸を広げることができた」としている。
申し合わせでは自衛官の募集に関し、全警協が自衛官志望者の情報を得た際、同省の地方組織に提供することも明記した。
予備自衛官(即応予備自衛官、予備自衛官補を含む)については、全警協が制度の周知・募集活動に協力することや、警備会社で予備自衛官(同)の従業員がいる場合、訓練などに参加しやすい環境整備に努める。
防衛省との人材確保に係る連携強化に当たっては、全国警備業連盟(青山幸恭理事長)が浜田靖一防衛大臣(当時)に働き掛けを行い、同大臣の下で協議が進められた。
全警協は同省人事教育局に22年11月、再就職に関するさらなる支援を要望。同局が23年3月、骨子案を示していた。
特集ワイド 警備業のAI活用2024.02.11
防犯・防災3システム開発
警備業のAI活用が加速している。カメラ映像をもとにAIが不審行動を検知・通報するシステムを開発し、多くの店舗で万引き犯罪の未然防止に貢献するアースアイズ(東京都港区、山内三郎社長)は、幅広い業務で使用できるシステムを新たに開発、提供を始めた。同社が都内で開いた社内展示会で、警備業で活用できるシステムを取材した。山内社長にシステム開発の経緯も聞いた。
アースアイズの社内展示会は2023年12月6〜8日の3日間、同社のAIシステム体験スペース「アースアイズラボ」(東京都港区)内で行われた。防犯・防災を目的としたシステムは次の3点だった。
SSTalk(エスエストーク)
オペレーターの声や動きと連動させた3Dアバター(分身の立体画像)が、施設入場者や店舗客とコミュ二ケーションをとる。遠隔地から対応することが可能で、社員の業務負担を軽減し働き方の柔軟性につながる。
アバターは業務や環境に応じて性別、年齢、服装など独自のキャラクターに設定できる。警備業で活用する例として、オフィスビルや施設受付での案内、店舗の万引き抑止などがある。
利用料金は月々9万6000円〜。アバターは、新たにデザイン・製作を受託するほか、既に存在している3Dモデルを利用することもできる。
セルフレジeye(セルフレジアイ)
セルフレジに設置したカメラの映像をAIが分析し、スキャニング漏れを検知・通報する。AIは「商品を持った手」を把握し、POS情報と連動させて商品をスキャンしたかどうか識別する(特許第7039084号)。
商品がスキャンされていない場合はモニターにアラート表示が出る。通知を受けた従業員による声掛けで、商品の不正な持ち去りを未然防止できる。
不正対策で店舗へのセルフレジ導入を促進し、警備員や店舗従業員を最小限の人数にすることで人手不足の課題を改善する。
ファイヤープリベンションAIシステム(F・P・A)
IPカメラにAIサーバーをつなぐことでセンサーを使わずに火や煙を早期に発見する。火災の方向や距離を検出し、リアルタイムに通知。速やかな避難や安全確保、消火活動につなげて被害を最小限にとどめることができる。
AIの検知精度を上げるために状況を再現してAIに学習させることが必要だが、実際に火災を起こせないことが今までの課題だった。F・P・Aは最新のCG技術によるシミュレーション映像を使って検知精度の向上を図った。
F・P・Aを活用し、PTZ(パン・チルト・ズーム)カメラで監視エリアを広範囲にしたシステムの提供も開始した。
次回の同社展示会は3月12〜15日、アースアイズラボ内で予定している。展示会の期間以外でも、公式サイトで予約してシステムの現物を見ることができる。
「ChatGPT」今後、取り入れる
アースアイズは今後、生成AI「ChatGPT」をシステムに使用するとともに、企業の導入支援も行う。ChatGPTは人間のような自然な会話が可能なAIチャットサービスのことだ。
アースアイズの生成AI事業のパートナーとして、生成AIブロガーの菅原拓哉氏が参画、企業向けのChatGPT導入支援サービスを担当する。同サービスはAIに関する情報も無料で提供。同社メールマガジン「サブロー通信」でChatGPTの業務活用法を定期配信、AI活用の個別相談も受け付ける。
「AIガードマン」出発点に
アースアイズが2019年に販売開始した「AIガードマンtheServer」は、同社のAI防犯システムの主力製品であり出発点となった。開発の経緯はこうだ。
同社・山内社長の実父・實氏は神奈川県内で2号警備を主業務とする警備会社を経営していた。山内氏は大学卒業後、システム機器メーカーの営業職を経て父の警備会社に入社。保安警備業務の部署を新設し、自ら私服保安員として現場に立った。
万引き犯を見極め捕捉する日々の中で「万引き犯を捕まえるのではなく、声掛けして犯行を止めさせる」ことが重要で効率的であることに気が付いた。全ての売場に目を配ることは、従業員の業務負担が大きく難しいためシステム化することを考えた。カメラ映像をもとにAIが買い物客の不審行動を検知し店舗従業員に通知する防犯システムだ。
試行錯誤の末、開発した「AIガードマンtheServer」は、人や物の距離など3D空間を把握する特許技術とAI活用で、人の感覚に近い情報処理を行う。「うろうろ」「きょろきょろ」「不自然な座り込み」などの不審行動を検知する。
同社は、システムのラインアップを業種を超えて拡大している。山内社長は次のように話す。
「当初からさまざまなシーンでカメラ画像のAI検知を使ったシステムを開発する構想がありました。コロナ禍で店舗の買い物客が減少したことを機に、万引き防止に限定しないシステムの研究開発を進めました。完成したのはさまざまな業務を支援するシステムで、共通する目的は『事件・事故を未然防止する』です」。
「AI火の見やぐら」
アースアイズは1月9日、俯瞰型のAI搭載カメラで火災・土砂崩れ、河川堤防の決壊などを検知するシステム「火の見櫓カメラ」を販売開始した。
システムは高層マンションやビル、市街地を見渡せる高台などにカメラを設置し24時間体制で市街を見守る。広範囲で災害初期段階の兆候を発見し、迅速な対応につなげる。
市販の監視カメラに後付けのAI―BOXを接続させて映像解析を行う。カメラの性能によるが1台で半径500メートルから1キロメートルの災害を発見可能だ。撮像範囲を十数メートルずつのゾーンに分け自動制御で数秒ごとにゾーン別の見守り巡視を繰り返す。
同システムは既に、自治体や商業施設、木造建築密集地、重要文化財建造物などに順次導入される計画だ。今後、放火や異常な人の流れなども検知可能となる予定で、犯罪や暴動の早期の対応、警戒が可能となる。