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クローズUP

2022年「総会」スタート2022.05.21

都道府県警備業協会の定時総会が始まった。山積する課題の中、「ウィズコロナ」時代の警備業のあり方が問われている。さらなる成長へ向けた全国の取り組みが注目される。

栃木警協、団体警備に全力

2期目の会長就任となった青木靖典会長(北関東綜合警備保障)は、今年10月に「いちご一会とちぎ国体・とちぎ大会」開催を控え、「国体警備業務実行委員会」を昨年立ち上げて会員に説明会を行ったことなど、協会を挙げた協力体制について述べた。

「国体開催は茨城国体以来3年ぶりで全国的に注目度が高まる。開会式には天皇皇后両陛下のご臨席が予定され、多数の警備員を要する極めて重要な大規模警備となる。警備員確保は最重要課題であり、警備業界に期待される役割を十分に果たしていくため警察や関係機関と連携し、会員の皆さまとともに難局を乗り越えてまいりたい」と一層の協力を求めた。

新年度の事業計画では、青年部会が発足に向かう。会則の策定などを進め、全国警備業協会が今秋に開催予定の「全国青年部会長等全国会議」に向けて立ち上げる。DX(デジタルトランスフォーメーション)社会への対応として協会ホームページを刷新する。

新役員は次の通り(敬称略)。【理事】伊原修(大高商事)

鹿児島警協、根源は〝低賃金〟

役員改選で上拾石秀一会長(ガードシステム鹿児島)が10期20年目となる協会運営の舵取りを託された。

上拾石氏はあいさつで、「人手不足、適正な警備料金の確保、働き方改革やデジタル化など、さまざまな課題の根源にあるのは低賃金です。社会経済の秩序を乱す買い叩き、ダンピングが未だに散見されることは、甚だ遺憾、残念です」と厳しく現状を分析した。

その上で、「すべての会員が一致結束して、処遇改善に取り組み、業界イメージの刷新を図っていただきたい」と訴えた。来年に開催される<かごしま国体>を引合いに出し、「警備員としての知識・技能に加え、服装や言葉遣い、倫理観など<キラリと光り輝く警備員>を育てることが肝要です。

経営者、教育担当者、講師の皆さんには一層の連携した取り組みをお願いしたい」と要望した。

総会後の研修会は、全国警備業協会の黒木慶英・専務理事が「警備業における諸課題について」と題して講演した。黒木氏は時間に制約がある中で、経営基盤の強化、危機管理における初動の大切さなどに言及、「全警協として各協会の生の声に応える施策を講じていきたい」と決意を伝えた。

新役員は次の通り(敬称略)。【副会長】荒武貞夫(鹿児島綜合警備保障)【理事】片平乃行(セコム鹿児島統括支社)、西一幸(セノン南九州支社)

特集ワイド 地域の安全活動2022.05.21

東京・新宿労働基準監督署(戸谷和彦署長)管内の警備業とビルメンテナンス業で組織する「新宿ビルメンテナンス・警備業労務研究会」(小林多喜会長=日章警備保障、加盟23社)は、同労基署の協力を得て安全衛生を中心とする労務問題の改善に30年間取り組んでいる。同業種同地域で安全活動に取り組む好事例だ。同会長と署長にこれまでの実績や研究会への期待などを聞いた。

◇1991年発足

同研究会は年に2〜3回会合を開き、新宿労基署長や担当官から法令のレクチャーを受けたり会員各社の安全衛生の取り組み事例を発表し合ったりしている。開催の都度、その日のテーマに合った関連資料が労基署から提供されるため、参加する各社の人事・総務系の担当者の間で好評だ。また、研究会の活動自体が行政とのパイプを太くしており、さまざまな相談を持ち掛けやすくなったという。

昨年会長のバトンを引き継いだ小林会長が代表を務める日章警備保障は、研究会で学んだ成果として「危険箇所マップ」を作成。施設警備が中心の同社の警備員が現場で危険と感じた場所や「ヒヤリハット」箇所を示した地図に印を付け、写真と簡単なコメントを添えて危険を「見える化」した。働く現場の危険な場所を知らないと事故は防げないためだ。

◇警備業の特性を考慮した法整備の可能性

他社の施設が就労場所となる警備業は、不安全な箇所を積極的に見つけないと警備員の安全を確保できない。手すりや階段が錆びて崩れそうでも「巡回時に危険なので修理してもらえませんか」とお願いすることしかできないのが実態だ。小林会長は「働く場所の管理権限者に一定の義務を負わせる法整備ができないか」と話している。

◇テーマ選びは共通項で

警備業も1号から4号まで業務の幅が広く、研究テーマは各社が関心を持てるテーマを選定する。温暖化の影響で近年騒がれるようになった「熱中症」については、交通誘導警備に限らず施設警備の現場も無関係ではないため、これまでにも対策について意見を交わしてきた。「以前は水の入ったペットボトルを現場に携行することなどできなかったが、最近は予防意識が根付き契約先から対策を促されるほど」(同会長)だという。

◇今後

5月17日に開かれた「総会」では開催頻度など基本スタイルを維持する方針を決めた。同会長は「人」がいないと成り立たない警備業にとり警備員の安全と健康確保は最重要事項だと指摘するとともに、そのためにも「労働関連法令は警備業法とともに最優先で遵守すべき法令だ」と訴えた。

都内の一地域における小さな取り組みに見える同研究会だが「当会が発信源となって業界全体の安全衛生活動の向上に向け取り組む」(同会長)としており、その志は大きい。