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特集ワイド 年末年始の事故防ぐ2016.12.11

毎年、交通誘導警備業務の繁忙期である年末から年始にかけて、警備員の交通事故が多く発生する。各県の警備業協会は警察と連携して「交通安全パトロール」を行い、事故防止や適正業務の推進に取り組んでいる。10~11月に3県で実施された安全パトロールの内容と結果を紹介し、事故の要因を検証する。

山口県警備業協会の事例

山口県警備業協会(玉田晃会長)は県警察と連携し、10月25日から11月22日に「交通安全パトロール」を実施した。交通誘導警備業務の現状を点検し、問題点を指摘・指導して警備員に緊張感を持たせ、交通の安全確保と警備員の労災事故防止を図ることが目的。岩国、周南、防府、山口、宇部、下関各市の主要都市部3?4か所で行った。

参加したのは、山口警協から白井節男専務理事と各地区交通誘導警備部会員など、山口県警生活安全課員、関係警察署の生活安全課員など延べ50人。

教育が安全につながる

結果、次の問題点があった。

▼制服・夜行チョッキ・手旗の汚れや色あせが目立った。

▼安全靴ではなく運動靴・長靴の着用が散見された。

▼工事予告板・カラーコーン等の資機材が不十分であり、特に車線規制の現場でエスケープゾーンが十分確保されてない箇所が多かった。

▼有資格者の資格者証の文字が薄れて判読できなかった。

▼通行止め工事現場における歩行者の安全が確保されてない箇所があった。

▼工事業者と警備員の連携不足が見受けられた。

▼請負工事業者が下請け任せで十分な装備資機材の配置がされてない。

▼決められた資機材を業者の方針で設置しているが、現場の警備員がそのことを認識してない(現場の警備員の判断で規制を行うことも重要)。

▼クッションドラムに水の注入がなく、防護柵としての機能を果たしてない。

▼全般的に手旗の振り方が小さく、警笛の使用がない。

総じて教育指導体制がとられてない事業所に問題点が多くみられた。

玉田会長は11月15日、中国自動車道で発生した重傷交通事故を受けて「交通誘導警備業務における受傷事故防止の徹底」を各会員に発出。15日以降のパトロールに参加した会員に対し、白井専務理事が注意喚起を呼び掛けた。

白井節男専務理事の話 各社による指導教育の徹底、警察との連携、この2つが事故防止につながっている。指定路線は1増えて現在14路線。引き続き注意を呼び掛けていく。

福井県警備業協会の事例

福井県警備業協会(吉田敏貢会長)は10月27日、福井・板井・丹南の3地区・13か所の現場に20人のパトロール要員を動員し安全パトロールを実施した。

福井地区 酒井良一交通委員会委員長(日興サーバンス)ほか4人の委員と県警警備業担当課長補佐が新たな指定路線など5か所の工事現場を巡回した。

板井地区 別司克彦班長(ピーエスピー)ほか4人の委員に福井警協・尾崎俊彦専務理事が同行し、国道416号を中心に5か所の工事現場を確認し、新規指定路線における工事の実態を確認した。

丹南地区 竹内裕康班長(アイメル)ほか4人の委員と県警の警備業担当係長が同行し、3か所の工事現場を確認した。

3地区とも警備業法上の違法行為はなかった。

尾崎俊彦専務理事の話 6月から指定路線が8から16に倍増し、警備員の交通事故についてさらなる注意喚起が必要。2年後には福井国体開催も控えており、一層安全で質の高い警備を目指す必要がある。

北海道警備業協会の事例

北海道警備業協会(堤日出男会長)は10月、2号警備委員会と全道7支部が各地で安全パトロールを実施した。

札幌 2号警備委員会は10月7日、市内10現場で安全パトロールを行った。本田義信委員長ほか13人が4班を結成し、各班に労働基準監督署の副署長と所轄警察署の警察官が加わった。日没前後に交通事故が増えることから車両と歩行者の安全な誘導方法を確認した。

苫小牧支部 27日、長谷川昌代副支部長ら8人が市発注の長寿命化対策下水道改良の3現場を抜き打ちで点検。検定資格者の有無や休憩場所・時間などを警備担当者に聞いた。

室蘭支部 25日、4現場で6人が道路使用許可関係を確認し警備員に経験年数や教育について聞き取り、元請け施工者にも対応の様子を確認した。

函館支部 4日、5社13人の警備員から配置や誘導状況を聞き、誘導位置を変える際はカラーコーンも合わせて動かし受傷事故の防止を図るよう伝えた。道路使用許可内容と相違ないか、函館西労基署の担当者は元請けの管理体制や重機の資格免許などを見て回った。

旭川支部 9月29日、10人で土木現場など9現場を巡回した。全体的に安全資機材の活用や設置場所、警備員の服装などいずれも良好で、交通誘導が適切に実施されていた。

帯広支部 10月13日、8人が市内の道路工事場2か所を巡回した。用意した指導確認表をもとに、配置した警備員の経験年数や勤務時間、休憩時間など聞き取りを行った。

釧路支部 18日、6現場で交通誘導状況を点検し、安全意識の高揚と技能向上を図った。釧路警察署生活安全課の巡査部長が同行。警備員に休憩場所・時間など聞き取り調査を行った。

北見支部 6日、8現場で警備員の適正配置や停止看板など保安資機材の配置状況を点検した。一部、資機材や交代要員の少ない現場もあったため、拡充するようアドバイスした。

岡豊彦専務理事の話 北海道では平成19年から27年まで9年連続で警備員の死亡事故が発生した。当協会は寒さが始まり事故が起きやすい11月1日から27日までを「警備業の労働災害防止期間」と独自に定めている。期間終了後、各社の取り組みと成果を報告してもらっている。