クローズUP
課題克服、協会に期待2023.05.21
総会2023 活発な交流3年ぶりに
4月26日から5月12日、栃木、新潟、長野、山形の4県で定時総会が開催された。役員を再任した協会でも理事に若手を起用するなど新しい風が吹きこまれた。相次ぐ強盗事件など国民の体感治安が改善しない中、警備業への関心は高い。DX(デジタルトランスフォーメーション)や警備料金の適正化に向け協会幹部の手腕に期待が寄せられる。新型コロナが感染症分類5類に移行したことに伴い各地では自粛していた意見交換会も再開した。
栃木警協=4月26日・宇都宮市
声上げる必要がある
2期目の青木靖典会長(北関東綜合警備保障)は「県内のある地区では、協会非加盟の県外事業者が低価格で落札し進出しようとしているとの声があります。『とにかく安く仕事をとろう』という姿勢ではいつまでたっても警備員の処遇改善は望めません。協会全体で足並みをそろえ『安価な警備料金では良質な警備業務を提供し続けることができない』と声を上げていく必要があります」と訴えた。
議案審議では、(1)適正料金確保による経営基盤強化(2)協会情報受発信のデジタル化と加盟員のデジタル環境整備の推進(3)異種別合同特別講習の実施――の3項目を2023年度の主な事業計画として決議した。
新潟警協=5月9日・新潟市
青年部会の活躍期待
役員改選で野澤慎吾会長(セコム上信越)が5期目の舵取りを託されたほか、2月に発足した青年部会部会長の阿部和弘氏ら6人が新理事に選出された。
野澤会長は「警備業界の景況は少しずつ改善が進んできていると感じるが、慢性的な人手不足、技術革新やDXへの対応など課題は多い。課題解決には新時代への適応力、柔軟な創造力、迅速な行動力を備えた若い力が必要である」と、青年部会の活躍に期待を寄せた。
長野警協=5月10日・長野市
若者が憧れる業界へ
5期目を託された竹花長雅会長(長野県パトロール)は「人材確保などの諸課題に直面しているが、より多くの若者が憧れる業界へと発展していかなければならない。地域社会から敬意を持たれる警備員の資質向上、会員各社の経営基盤強化など各種取り組みを一致協力して、さらに進めていきたい」と決意を述べた。
議案審議では「警備業経営者のための倫理要綱、警備員処遇改善に向けた『スローガン』」を承認可決。全国警備業協会が昨年改定した同要綱、策定した同スローガンを長野警協として独自に決議した。総会で決議することで、経営者が持つべきモラルを強調して悪質なダンピングの防止、適正取引の推進に向け、改めて会員に周知徹底を図る。
山形警協=5月12日・山形市
物価に見合う賃上げ
役員改選で我妻壽一会長(山形警備保障)が再任し、2期目をスタートさせた。前年度は各種事業がほぼ計画どおり実施したことや青年部会が清掃活動、防災訓練、献血ボランティア活動に取り組んだことについて報告された。本年度は賃金上昇とともに警備員の身分保障の推進、災害協定等の見直しの検討など関係機関との連携強化に取り組むことなどが承認された。
我妻会長は「それぞれの行事でコロナ禍に伴う制約を、知恵を出し跳ね返して活動した」と前年度を総括するとともに「私たちはポストコロナに向けた社会経済活動に舵を切らなければならない。人手不足の解消には物価上昇に見合う賃上げが必須だ。他業種に負けないためにも、さらなる適正な料金の確保を目指したい」と呼び掛けた。
特集ワイド 動画で警備業PR2023.05.21
インターネットで配信される動画(ムービー)は、短い時間で多くの視覚情報を伝えることができる。警備業界の動画活用は、警備業協会による「警備員の仕事内容」広報、警備各社の企業PRはもとより、警協女性部会の活動アピールなどに活用が広がっている。警備業の動画づくりを取材した。
企業の採用活動では、業務内容、職場の雰囲気、経営者のメッセージなどを求職者に伝えるうえで動画の活用は欠かせない。
ある中小警備会社幹部は、動画による自社PRの意義を次のように話した。「警備員は身近に見かける職業だが、実際にどのような業務を行うか、警備会社はどんな所か、一般の人はイメージしにくいのではないか。インターネットを利用した情報発信で、旧来の3K(きつい、厳しい、危険)といった先入観を打ち消し、警備業と当社に目を向けてもらいたい」。
動画は、専門業者に委託しなくても、スマートフォンのカメラや動画編集ソフトを使用して制作できる。情報を分かりやすく伝え、より多くの視聴者から関心を寄せてもらうため、同種のPR動画にはない新たな切り口、硬軟とりまぜるなど、オリジナリティーを打ち出すと印象深いアピールとなるはずだ。
新型コロナが「5類」に移行し経済活動の回復が進む中、人手不足の深刻化が懸念される。警備業界、警備員に興味や好感を持つ人を増やそうとする取り組みは重要だ。業界関係者による情報発信が広がれば、警備業の認知度は一層高まるだろう。
警備員サービス輝 若年層呼び込む
交通誘導警備を手掛ける「警備サービス輝(かがやき)」(山梨県甲府市、林修二代表取締役社長)は、ユーチューブの「かがやきチャンネル」を昨年8月からスタートし、20本以上の動画を配信中だ。
入社後の流れを紹介する動画では、20代男性・千野海斗さんが面接を受け採用され、制服を受け取る様子や、新任教育を受け紅白旗の取り扱い方などを学ぶ姿、交通誘導警備の現場で上司から指導を受けるまでを複数の動画(各10分間前後)に分け、分かりやすく伝える。
男性・女性警備員が日頃の業務の大変な点や魅力について話すインタビュー、林社長が社員の質問に答える形で自社の取り組みなどを語るもの、「警備会社の管制業務」紹介など、動画は多彩だ。
撮影と編集は、甲府市内の映像制作会社が担当。動画の視聴者層を分析したところ、配信本数が増えるにつれて20代の視聴者が増加傾向にあると分かった。「かがやきチャンネル」を見て面接を希望し、入社した警備員は複数名いるという。
制服や給与、勤務形態などについての質問に回答する動画に出演している浅川実常務取締役は「就職活動中に動画を見たという学生から、会社説明会に参加したいと連絡があり、嬉しく思いました。若年層を呼び込むにはインターネットの活用は欠かせません。交通誘導警備は教育を受けて自分を磨き、誇りを持って働くことのできる職場であると伝えていきたい。若い社員のアイデアを取り入れて発信を重ねます」と述べた。
石川警協 1~4号業務を紹介
石川県警備業協会(上田紘詩会長)は、1〜4号の警備業務を紹介する4本の動画「地域の安全を守る〜警備の仕事」を制作し、今年1月から協会ホームページで公開している。会員各社の警備員が出演し、施設・交通誘導・貴重品運搬・身辺警戒の警備について、それぞれ5〜6分ほどの映像で説明するものだ。
1本の動画で全ての業務を紹介するのではなく、1本につき一つの業務に特化し、警備員のインタビューも交えて業務内容を伝える。貴重品運搬警備では珍しい女性警備員も登場、仕事のやりがいについて「職務を安全に完了すると、誇りを感じます」と話している。
厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金・団体推進コース」を活用し県内の映像制作会社に撮影・編集を委託した。青年部会(島本久嗣部会長=日章警備保障)のメンバーが業務の紹介方法についてアイデアを出し合って撮影に立ち会い、制作期間は半年に及んだ。
島本部会長は「業務ごとにさまざまな役割を担う警備員が働いて、日常生活の安全安心を守っていることを伝えました。警備業を広報するうえでインターネットの活用は非常に大切。会員各社がホームページやユーチューブなどで積極的に発信するきっかけになればと思っています」と語った。
会員企業からは「採用面接の時、志望者に動画を見てもらい役立っている」などの感想が寄せられた。同協会ホームページの「事務局のぶろぐ」では、“撮影の裏話”としてメーキング動画も配信、親しみやすさを打ち出している。
福岡警協あやめ会 TikTokでセミナー広報
福岡県警備業協会の女性部会「あやめ会」(池田純子委員長=SRC)は、若者に人気のSNS「TikTok(ティックトック)」で昨年8月から動画を40本以上配信している。
ティックトックは、アプリをダウンロードし、スマートフォンなどで撮影した動画に音楽を付け、色付き文字などの特殊効果も加えて編集し、オリジナルの短編動画(最長3分間)を作成・投稿できる。国内の利用者は1600万人以上といわれる。
あやめ会では、コロナ禍が長期化して部会としての活動が制約された中で、若者や女性に警備業への興味を持ってもらう広報活動の一環としてティックトック活用を思い立ったという。フォロワー(視聴者)は約200人を数える。
3月24日には部会員4人が、ハローワーク福岡中央(福岡市)で求職者向けに「警備業セミナー」を行った。このセミナーを紹介する動画では、警備業界が女性警備員「警備なでしこ」の雇用拡大に取り組んでいることなどを伝えた。さらに「協会加盟会社の皆様も、どうぞハローワークの会社説明会へご参加下さい」と呼び掛ける字幕も付け、業界内外に向けたPR動画となっている。
このほか、部会員によるジェスチャーゲームなどユーモラスな内容の動画も配信、女性部会の和気あいあいとした雰囲気が伝わってくる。
池田委員長は「世間一般に“警備は男性の仕事”というイメージがまだまだ強い中で、女性も活躍していることをアピールしています。子育て中のお母さんが動画を見て『警備業に女性部会がある』と知って親しみを感じ、ともに働く仲間が増えることにつながってくれたら」と期待を寄せる。