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愛知警協 県警と協定結ぶ2024.04.01

パトロールや見守り活動

愛知県警備業協会(小塚喜城会長)は3月13日、愛知県警察と「安全・安心なまちづくりの推進に関する協定」を締結した。すでに協定を結んでいた特殊詐欺の被害防止を図る活動から、さらに広く犯罪被害の抑止を図る活動に取り組む。

協定による主な活動は、県警が▽犯罪情報等の提供、連続発生するなど県民が著しく不安を覚える犯罪情報の提供▽協定に定める活動の参考となる情報の提供など。

協会は▽業務を通じた犯罪多発場所におけるパトロール▽通学時間帯の子ども見守り活動▽県民が著しく不安を覚える犯罪に対する集中的なパトロール▽特殊詐欺被害防止として業務を通じたATM・コンビニなどにおける駐留活動、高齢者への積極的な声掛け▽会員業者施設への防犯カメラ設置と業務車両へのドライブレコーダー設置促進、事件事故発生時の画像データ提供などを行う。

同協会は2019年6月4日に県警生活安全部長との間で「特殊詐欺の被害防止に関する協定」を締結、特殊詐欺被害の防止に向けた取り組みに積極的に携わってきた。刑法犯認知件数は長らく減少が続いていたが2022年以降は増加に転じ昨年は70万件を超えたことなどから今回、特殊詐欺以外の各種犯罪の被害防止にも活動内容を拡大した協定を結ぶこととなった。

県警本部内で行われた締結式には後藤安彦生活安全部長、協会からは小塚会長、寺倉利彦専務理事が出席した。

後藤生活安全部長は「警備業協会と会員518業者、警備員数約3万2000人の協力により特殊詐欺の被害防止、防犯パトロールや子供の見守り活動などが可能となり、地域社会による自主防犯力向上の効果も期待される」と述べた。

小塚会長は「この協定を我々の業務と密接に関係する警察との間で締結することにより、警備業界が持つ力を、業務を通じてさらに幅広く提供できるようになり、業界の社会貢献効果を期待している」と語った。

特集ワイド 単価上昇「交通誘導」2024.04.01

「A」2万円に近づく

公共工事に従事する交通誘導警備員の労務単価は上昇の一途をたどっている。3月から適用されている全国平均の単価は、1級・2級検定合格の警備員Aが1万6961円、A以外の警備員Bが1万4909円。人手不足などを背景に、それぞれ前年度比で6.4%、7.7%の引き上げとなった。ただ、主要12職種で交通誘導警備員の単価はAが10番目、Bが12番目の状況にある。

国土交通省が毎年改定を行っている「公共工事設計労務単価」(日額=8時間労働)は、公共工事費の積算に用いる基準賃金。47都道府県別、51職種別に設定している。

新たな労務単価には、同省が昨年10月に実施した労務費調査をはじめ、4月から建設業にも適用される時間外労働の上限規制への対応や、義務化分の年次有給休暇取得に係る費用が反映されている。

労務費調査では、全国の公共工事約9400件を無作為に抽出し、工事従事者約7万8000人の賃金を集計した。調査票に記入された賃金の支払い実態が労務単価算出のもとになっている。

新単価の全国・全職種平均は2万3600円。伸び率は前年度比5.9%で、この10年で最大となった。社会保険への加入徹底の観点から、労働者負担分の保険料を加算するなど算出方法を見直した2013年度以降、労務単価の上昇は12年にわたって続いている。

交通誘導警備員の全国平均の引き上げ額はAが994円、Bが1095円。都道府県別でAは500〜2100円、Bは500〜1700円のアップ。Bの伸び率は主要12職種で最大だ。

新単価を都道府県別でみると、Aの最高額は「2万円」に近づいており、愛知の1万9700円。次いで東京、静岡の1万9000円。引き上げ額も愛知が最大の2100円で、岐阜、静岡、三重の1900円が続いた。

愛知県警備業協会は、労務費調査に適切に対応しているとした上で、さらなる労務単価のアップに関し「警備業は日常の安全安心を守り、やりがいのある仕事。一般の方々、若い人たちに理解していただけるよう、広報の取り組みを強めていきたい」としている。

一方、Bの最高額は東京、神奈川の1万6600円で、茨城の1万6400円が続く。引き上げ額の最大は、Aと同じく愛知で1700円。次いで石川、岐阜、三重の1600円だった。

新単価が最も低いのは、いずれも高知(A=1万4200円、B=1万2000円)で、沖縄(A=1万4600円、B=1万2400円)が続く。

労務単価には、会社負担分の社会保険料や工事現場の安全管理などの「必要経費」が含まれていない。

だが、仕組みへの理解が不十分なことにより、“含まれている”という誤った解釈がなされ、公共工事従事者の賃金が低く抑えられてしまっているとの指摘もある。

このため国交省では、労務単価の41%に当たる必要経費を上乗せした額を公表。これを下請代金に計上しないことや値引きを行うことは不当行為だとしている。

交通誘導警備員の場合、全国平均の必要経費はAが6954円、Bが6112円。装備や送迎、法定教育などに係る費用がそれに当たる。全国平均の下請代金(警備料金)はAが2万3915円、Bが2万1021円となっている。

12職種で下位も「伸びしろはある」

交通誘導警備員A・Bは、公共工事の従事者が多い「主要12職種」に含まれている。労務単価の比較では依然として低い水準となっている。

3月から適用されている新単価の全国平均で12職種をみると、2万8891円の型わく工がトップ。

以下、高い順に▽とび工・2万8461円▽鉄筋工・2万8352円▽大工・2万7721円▽左官・2万7414円▽運転手(特殊)・2万6856円▽特殊作業員・2万5598円▽運転手(一般)・2万3454円▽普通作業員・2万1818円▽交通誘導警備員A・1万6961円▽軽作業員・1万6929円▽交通誘導警備員B・1万4909円――となっている。

国家資格を有する警備員Aより順位が1つ上で労務単価が約4800円高い普通作業員は、資材の積み込み・運搬や標識・境界杭の設置などが作業内容。Aよりわずかに単価が低い軽作業員は清掃、散水や仮設物の設置・撤去などを行う。

12職種における前年度比の単価伸び率は4.9〜7.7%となっており、それほど大きな差はみられなかった。

東京都に本社を置く中小警備会社。営業や採用などの担当者は警備員単価について「伸びしろはある」とみる。

会社は都内と隣県での交通誘導警備が主力。取引先約20社との価格交渉を毎年行っている。力を入れている研修の内容などを資料化して交渉に臨み、希望した値上げを毎年、認めてもらっている。「警備の質や管制業務のスピード感が評価されている」と要因を語り、「今後も付加価値をつけていきたい」と話す。

価格交渉で勝ち取った値上げ分は、警備現場との直行直帰の手当拡充などに充当。処遇改善を図っている。受注した交通誘導の一部では、規制資機材の設置・撤去を引き受けており、警備料金に上乗せしている。社会的地位との関係性があると考え、社内では警備員を「警備士」と呼んでいるという。