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クローズUP

千葉警協「鳥インフル」出動2021.02.01

消毒ポイントで交通誘導

千葉県警備業協会(加藤智行会長)は、昨年末から県内で相次いで発生した高病原性鳥インフルエンザを受け、県との協定に基づき出動・対応した。

12月23日夜、県畜産課から千葉警協に県東部・いすみ市内の養鶏場で鳥インフル発生の第1報が入った。同協会は加盟社に連絡。翌24日早朝から、発生農場周辺5か所に設置された「消毒ポイント」で24時間体制の関係車両の交通誘導警備業務を開始した。同業務はその後、千葉警協加盟社が組合員の全千葉警備業協同組合(渡邊俊彦理事長=コスモセキュリテイ)が引き継いだ。

鳥インフルが発生した養鶏場では、1か所の養鶏場としては史上最大(発生当時)の約114万羽の殺処分が行われた。

年明け1月10日には、同じいすみ市内の別の養鶏場で新たな鳥インフルが発生。約112万8000羽の殺処分が行われることとなった。消毒ポイント以外にも作業従事車両などの警戒ポイントが増設され、全千葉協同組合の組合員8社が延べ約350人の警備員を配置、対応に当たった。

その後も21日に横芝光町、24日に匝瑳(そうさ)市のアヒル農場で鳥インフルの発生が確認。飼育されていたアヒルやアイガモ計約1万3000羽超の殺処分が開始。千葉警協が県との窓口になり、全千葉協同組合の組合員が対応、消毒ポイントで交通誘導警備を行った。

同協会は、2017年6月に県と「家畜伝染病発生時における防疫対策業務に関する協定」を締結。県内農場で「口蹄疫」や「高病原性鳥インフルエンザ」などが発生、緊急的な防疫業務などが必要となった場合、(1)発生農場での警備と車両誘導(2)消毒ポイントや集合施設などでの車両誘導――などを実施する。

航空法を改正へ2021.02.01

保安検査、確実に

国土交通省は航空法を改正、空港で警備員が行う手荷物検査などの保安検査の法的位置づけを明確にする。3月上旬にも今通常国会に改正法案を提出する。

現行の航空法では、爆発物など航空機内に危険物を持ち込むことは明確に禁止されているものの、そのための手荷物検査などの保安検査については規定していない。そのため旅客が検査を拒否し、検査する警備員に暴言を吐いたり暴力をふるうなどの事例が多発、空港保安警備員の離職原因の一つともなっている。また、空港内の手荷物検査場通過後から航空機までの「クリーンエリア」は多くの旅客・関係者が混在することから、安全の確実な担保が求められている。

国交省は航空法改正を行い保安検査の法的根拠を明確にするとともに、クリーンエリアを「危険物等所持制限区域(仮称)」として空港設置者が指定する制度を創設。旅客や空港関係者が確実に保安検査を受けるようにする。

新人の定着を図る2021.02.01

少子化が進む中で、人材確保を課題とする警備業が新卒社員を採用し育成する取り組みは、極めて重要である。一方で、新社会人には悩みがつきものだ。周囲に相談できないまま孤立し、早期離職してしまう事態を防がなければならない。新人と先輩社員がコミュニケーションを深めることで定着促進を図る警備会社3社の取り組み「メンター制度」を取材した。

メンター制度は、新入社員に対して、直属の上司とは別に年齢の近い先輩社員が業務を指導するほか、メンタル面を気遣って言葉を掛け、気軽に相談に乗るなどしてサポートする仕組みだ。メンターは「助言者」を意味する。

年の近い先輩と良好な人間関係をつくることで、上司には言いにくいことも打ち明けやすくなるという。多くの業種で以前に比べて先輩が新人の面倒を見る雰囲気が希薄になったとされる中、警備会社にもメンター制度の導入が広がっている。

新卒社員は“生え抜き”として自社の企業理念を理解して成長し、長期的に企業の核となることが期待されている。社会人生活1年目で、仕事に慣れることができない、職場の人間関係に溶け込めないといった悩みや不安を抱えている場合に、周囲が早めに気付いて話し合い、問題があれば解決に向けて組織的に対応することで突然の退職を予防することができる。

特に昨年来、コロナ禍によって新入社員歓迎会などの行事が制限される状況にあって、社員同士の親密な関係づくりは、職場環境整備の大切な一環となるものだ。

〝3世代〟で研修し交流

シムックス(群馬県太田市、深澤利弘社長)は今春、大学・高校・専門学校の新卒社員として男性13人、女性5人が入社する。早期離職を防ぐ取り組みとして2017年からメンター制度を開始した。新入社員1人に入社2年目以上の若手社員が1人、メンターとして付いて1年間にわたってサポートする。

メンターと新入社員は、配属される部署が同じとは限らないが、SNSやオンライン面談などで日ごろからコミュニケーションを図っている。SNSを利用して、新入社員全員や先輩との気軽な交流ができる。

新入社員にメンターが付くのは、毎年6月に行う「3世代合同フォローアップ研修」からだ。同研修では、新入社員と前年・前々年に入社した“3世代”の社員が集まる。社長による講話などの座学や、グループごとのディスカッションなどを行って目的意識を共有し結束力を高める。昨年の同研修は、コロナ対策のため本社と7か所の営業拠点をウェブ会議アプリでつなぐオンライン形式で実施された。

同社人事部の大島俊大部長は「新入社員は、慣れない業務や人間関係などで悩んだ時に誰にも相談できずに辞めてしまう場合がある。メンター制度は、新人が周囲とのコミュニケーションを深める環境づくりになります。先輩は自分の経験を踏まえて新人に助言して励まし、悩みごとに対しては必要に応じて社内で共有して状況の改善を図ることで、離職防止の効果が生まれています」と語る。

メンターも若手社員であることから、適切な指導が行えるように「メンター研修会」を定期的に開いている。メンターのリーダーを務める社員が中心となって、悩み相談を受けたときの対応方法などについて意見交換を行っている。

大島部長は「メンターもまた新入社員とともに成長していくことが大切になる。マネジメントの基本から学ぶ経験は、将来的に組織力の向上に結び付くと考えています」と話した。

「ブラザー・シスター・ノート」生かす

企業警備保障(島根県松江市、後長佑社長)の新入社員は、先輩社員とペアを組み、交換日記のように一冊のノートを共有する。名付けて「ブラザー・シスター・ノート」。同社が2014年から導入したメンター制度の一環で、昨年春に入社した男女社員10人が、それぞれ入社3〜5年目の先輩社員10人と、業務のことなどをノートに書いてやりとりしている。

ノートの活用について、後輩社員は▽仕事の疑問点からプライベートなことまで、職場では言いづらいこと、聞きづらいことも書くことができる▽仕事の進め方や心構え、不安に思うことなどを書いて先輩と共有し、的確なアドバイスをもらって役立っている――と話す。

一方、先輩社員は▽兄弟姉妹のような信頼関係が生まれて、他の人には相談しにくいことも話し合えるようになった▽物事をノートに記述することは、業務についての知識の再確認につながり、聞き間違いなどを防ぐことができる――と感想を話した。

出雲空港で保安検査業務に従事する女性隊員のノートでは「検査員同士で練習している時はスムーズにできるのに、お客さまを前にすると緊張して声が小さくなってしまう」との相談に対して、先輩の女性隊員は自分の体験を振り返りながら“緊張しないコツ”についてアドバイスした。

同社の新卒社員の定着率は、制度の導入前は5〜6割だったが、現在は7割以上に向上している。

人事担当者は「メールやLINEは便利な一面、“すぐに返信しなければ”という気持ちになりがち。ノートならその日の出来事を振り返って、じっくり書くことができる。文章を読んで相手の気持ちをよく考える中で、互いの理解や親密さがより増すと思います」と手書きの利点を述べた。

会社全体で育てよう

津軽警備保障(青森県弘前市、山口道子社長)は、一昨年から初めて高校生の新卒採用の準備を開始し、昨年4月に高校新卒の男性5人が入社した。今春には男性7人が入社するが、うち6人は昨年入社した社員の高校の後輩にあたる。

同社は、新卒採用を始めるにあたって新卒者の育成と離職を防ぐためメンター制度を導入。新入社員に年の近い先輩社員が“ブラザー”として付いて指導などを行っている。

“ブラザー”に選ばれた社員は、事前に社内研修を受けて新卒者への適切な接し方や育成の心構えなどを身に付けた。

業務部の吉田勇太部長は「制度を取り入れたことで、教育担当者だけでなく会社全体で『新人をケアして育てよう』という機運が高まったと実感しています」と話した。

入社後の新人には、定期的にアンケートを行う。「職場で大変なことは何か」「教育は自分に合っていると感じるか」などとヒアリングして対話を深める。

昨年の新卒採用活動で同社は、新入社員の母校である青森県内の高校3校を訪れて「先輩が警備員になった」とのキャッチコピーで“先輩メッセージ”入りのチラシを就職担当の教師に手渡して説明した。

その後、「卒業生がいきいきと活躍している会社だと分かり、警備の仕事に興味を持ちました」と生徒が会社見学会に参加、入社に結びついた。