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クローズUP

新1年生に防犯ブザー2021.04.21

熊本・キューネット、18年間、全県の小学校に

キューネット(熊本市、西川尚希代表取締役)は、今春入学した県内全ての小学1年生に防犯ブザー約1万6300個をプレゼントした。ブザーは同社パトロールカーをデザインしたもので1個約1000円。子供や保護者からは「かわいい」と好評だ。

同取り組みは、西川氏の母でもある当時の会長・西川通子氏が2003年、九州地区の経営者賞を受賞し、その副賞を地域のために活用したいとの思いから翌04年にスタート。18年間に寄贈したブザーの累計は30万4386個に上る。 

特に今回は、昨年7月の豪雨災害で被害を受けた球磨郡の渡小学校(全校児童66人)と一勝地小学校(同60人)には、あらためて全児童にプレゼント。4月9日に行われた両校の入学式では、新1年生に同社のマスコット「まもるモン」が防犯ブザーを直接手渡した。

同社への入社を希望し面接に訪れた人の中には、小学生の時の防犯ブザーのお礼を述べる若者もいるなど、「キューネットの防犯ブザー」は地元にすっかり根付いているようだ。

西川社長の話 地域の子供たちの安全と安心に役立つ取り組みの一環で防犯ブザーの寄贈を始めました。

駐車場事故2021.04.21

厚労省、警備業に注意喚起

厚生労働省は4月16日、東京・新宿区で起きた二酸化炭素消火設備の誤作動により工事関係者5人が死傷した事故を受け、建設業団体とともに全国警備業協会(中山泰男会長)にも注意喚起の通達を出した。

事故は15日、同区内のマンション地下駐車場で発生。何らかの原因で消火設備から二酸化炭素が放出、作業していた4人が死亡、1人が搬送された。

同種災害は、昨年12月に愛知、今年1月に東京・港区でも発生、警備員1人を含む計14人が被災し、うち3人が死亡している。1995年には東京・豊島区内の立体駐車場で、ターンテーブル室に閉じ込められた会社員が誤って消火設備の手動起動ボタンを押し、異常警報を受けて駆け付けた警備員2人が死亡、97年の消防法施行規則の改正のきっかけとなるなど、警備員の被災も相次いでいる。

通達は、施設管理者と事業者が適切な安全衛生管理の下、定められた手順で作業をすること、点検作業での連絡方法の確立、事前に緊急時の対応を協議して周知することなどを求めた。

 

関東地区連が総会2021.04.21

コロナで2年ぶりの開催

関東地区警備業協会連合会(会長=島村宏・茨城県警協会長)は4月13日、つくば市内のホテルで10県の警協会長と専務理事による今年度の通常総会を開催した。全警協から中山泰男会長、福島克臣専務理事、小澤祥一朗総務部次長、山本正彦研修センター次長が出席した。

通常総会は昨年度がコロナ禍で中止となり2年ぶりに行われた。島村会長は「新型コロナに屈しないという強い気概を持ち、予防対策に万全を期しながら、事業の継続に努めることが肝要です。人材の確保、適正取引の推進など諸課題に向けて積極的に取り組んでもらいたい」と要望した。

全警協の中山会長は新型コロナについて、変異株の拡がりなど依然として予断を許さない状況にあるとの認識を示したうえで、6月の全警協総会を目途に取り組んでいる基本問題諮問委員会の成長戦略に言及した。「諮問委員会が作る5つのプランはたたき台であって、重要なことは業界一丸となって実行して成果を上げることです」と訴えた。

総会は今年度の事業計画などを承認した後、研修センターの山本次長が「全警協eラーニング」について説明した。

それによると、開始は今秋10月。初年度の内容は基本教育、交通誘導警備業務、施設警備業務の3つの内容で各5時間を行う。受講料金は年間3300円、初年度は来年3月までの半年間となるため半額。山本氏は「詳細については遠慮なく全警協に問い合わせてほしい」と呼び掛けた。

特集ワイド 2021.04.21

熱中症で書類送検

コロナ禍で迎える2度目の「夏」がほぼ確実視される中、改めて熱中症予防に取り掛かるシーズンとなった。5月1日から始まる厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」には、今年も業界団体では唯一、全国警備業協会が主唱者として参加。国と協力して現場に対策を促す。交通誘導警備員を熱中症で死亡させた警備事業者が書類送検された事件が昨年起きており、具体的対策が急がれる。

コロナ禍初、夏場の災害

本紙3月21日号では警備事業者の送検事例を紹介した。仕事中に警備員が熱中症で死亡し、事業者が労働安全衛生法違反の容疑で神戸地検に書類送検された事案だ。

事故は昨年8月、兵庫県加古川市内の建設現場近くで交通誘導警備中に発生した。被災した警備員(男性・50代)は、現場で付近を通行する一般車両の誘導業務を行っていた。炎天下の中、同警備員が突如体調を崩して倒れ、通報で駆け付けた救急車で運ばれたものの搬送途中に意識を喪失。病院到着後に死亡が確認された。

本来なら東京オリンピック・パラリンピックが開催されていた2020年は記録的な猛暑で、事故が発生した8月21日の市内の気温は38度まで上昇。うだるような暑さの中、道を歩く人の大半がマスク姿――そんな異様な光景が広がるコロナ禍初の真夏の災害だった。

事故後に現場を管轄する加古川労働基準監督署が調査したところ、警備員が体温を調節するための措置が現場で取られていなかったことが判明した。安衛法と同規則によると、多量の発汗を伴う作業現場には「塩」と「飲料水」を備えなければならず、同規定に違反した疑いで法人とその代表者の2人が罪に問われたのである。

容疑者となった会社の代表者も同労基署の事情聴取で違反の事実をほぼ認めたという。

検察庁が不起訴処分とすれば刑事責任は問われない。しかし、労働者が死亡する災害は起訴されることが多く、略式命令という手続きを経て、今回で言えば「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」刑となる。

「塩と水を用意しないだけで送検?」と思う読者がいるかもしれない。しかし「労働者が死亡した事実を重く見た」(同労基署)としており、実態に即して判断されている。労働者が死亡しなければ必ずしも司法手続きを踏まない扱いが労働基準分野の監督行政だが、だからといって対策の手を緩めるべきでないのは当然だ。

検察庁が起訴し、刑事責任が確定すればその後の業務に多大な影響が及ぶ。建設業などは公共工事の入札場面で指名停止になる。一般的商取引を行う企業も取引先の信用を失い、以降の仕事確保が困難になる。警備業も例外ではなく、取引先の発注先名簿から自社の名前が外れてしまいかねない。

リスクの大きさ自覚を

現時点の確定値である2019年の熱中症の発生状況を見ると、業種別に見た死亡者数ワースト3(4件)が警備業。また、死には至らない死傷者数もワースト5(73件)といずれも高位にあり、他の業種と比べ警備業が熱中症のリスクにさらされていることが鮮明だ。警備会社はきちんと自覚することが求められる。

炎天下での交通誘導警備は言うに及ばず、施設警備における駐車場での誘導業務や列車見張り業務などでも熱中症が多発しており、それらに携わる警備員には特に十分な教育を施し、会社として必要な物品を購入することが不可欠である。

WBGT値は「実測」で

熱中症は体内の水分と塩分のバランスが崩れて起きる障害の総称で、めまいや失神、大量発汗、意識障害、手足の運動障害、頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠・虚脱感などの症状が現れる。怖いのは徐々に症状が悪化するのではなく、突然意識を失ったりすること。予防と早期発見が対策の要とされるゆえんだ。

交通誘導警備のような炎天下作業はとくに危険で、その日の最高気温ばかりでなく、国が推奨する「WBGT値」を重視しなければならない。人が体内にため込む「熱」に着目した数値で「暑さ指数」とも呼ばれ、環境省の関連サイトでも公表されている。

ただ、この数値は地域を代表する参考値であり、個々の作業の状況は反映しない。厚労省は「現場を実際に測定したWBGT値より低めの値が出ることに留意が必要」と指摘し、警備業のような直射日光の下での作業では現場で「実測」するよう強く求めている。

WBGT値の測定器を購入する際は、日本産業規格の「JISZ8504」または「JISB7922」の適合品の選択が不可欠だ。安価な反面、重要な部品を欠いた製品もネット上などでは散見され、同省が普及を狙う日本保安用品協会や日本電気計測器工業会が推奨する測定器が望ましい。

今年はプレクーリングも

WBGT値が基準値を超え、あるいは超える可能性があるような場合は、氷や冷たいおしぼり、飲料水、スポーツドリンク、塩飴などを備えた休憩場所の設置を同省は求めている。WBGT値の実測に加えて同省が今年のキャンペーンで勧める「プレクーリング」という手法も現場で行うとよい。

事前に体の深部の体温を下げて体温上昇を抑えるもので、体の表面を冷却する方法と、冷たい水や流動性のある氷状の飲料などを摂取して体の内側から冷やす2つの方法がある。作業開始前や休憩時間に試してはどうか。

現場の近くに冷房のある休憩所や日陰のある場所を確保できればいいが、車の中でしか休めないケースもある。そうした場合でも十分な室内換気と横になれるスペースの確保が体調管理の上では重要で、厚手になりがちな警備員の服装もできるだけ透湿性・通気性のよいものを選ぶよう心掛ける必要がある。「空調服」など冷却機能の付いた服や、通気性のよい帽子やヘルメットも用意したい。