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クローズUP

警協総会スタート2019.5.21

「課題克服」「ステータス向上」

人手不足対策と適正取引の推進に加えて働き方改革関連法への対応が課題となる中、都道府県警備業協会の定時総会が新潟警協からスタートした。昭和から平成にかけて大きく成長を遂げてきた警備業界は、令和を迎えて課題克服と一層のステータス向上を図る。

新潟警協

会員の連携深めて

3期目を託された野澤慎吾会長(セコム上信越)は、昨今の警備料金の動向について「会員の努力や各方面の協力もあり、少しずつだが改善の兆しが出ている」との見方を示した。

課題を乗り越える鍵として「経営基盤の強化に向けた経営者の意識改革」を提唱する同会長は「会員相互が連携を更に深め、より良い業界を目指して各種の施策に取り組まなければならない」と呼び掛けるとともに、「『令和』の門出を迎え、さらなる業界発展を目指したい」と述べた。

役員改選では全役員が再任。今年度の協会事業では、昨年5月の新潟市内での小学生殺害事件を受け、会員有志が子供や高齢者の安全確保のために「ながら見守り活動」に力を入れ、ステッカーを貼った社用車などを活用する。

富山警協

一丸となって発展を

木下勲会長(富山県綜合警備保障)は冒頭あいさつで「警備業は生活安全産業として発展し、県民からも信頼されるなど社会的地位を確立している。来年は東京五輪が開かれることで警備業への需要と期待がこれまでに増して高まり、更に発展することが期待される」と話した。

一方で、人材不足や働き方改革への対応などが会員社の経営を厳しいものにしていると指摘。「協会が何かしてくれると期待するのでなく、会員一人ひとりが何をするべきかを考えてほしい。そして策を持ち寄り、協会員一丸となり課題を解決して皆で発展しよう」と呼び掛けた。

今年度の事業活動では、人材確保に向けた対策や研修会開催による警備員の資質向上に力を入れる。

新役員は次の通り(敬称略)。【新理事】仲井孝司(北陸綜合警備保障富山支社)、深井眞人(富山県銀行協会)【専務理事】出分鉄夫(富山警協事務局長)

長野警協

初の女性理事就任

3期目に入った竹花長雅会長(長野県パトロール)は、“競争から共存へ”を念頭に「理事のリーダーシップのもと、協会と会員の努力によって警備業が一層のレベルアップを図り、県民から今まで以上に高い評価を得ることが、業界発展のために最も重要になる」と述べた。

レベルアップに向けた具体的な3つの取り組みとして、(1)警備員の知識・技能を高める教育事業の充実(2)研修や各地区活動などで会員相互の信頼関係を強化(3)県内全域での防犯活動、交通安全活動など積極的な社会貢献――を挙げ、一層の協力を求めた。

役員改選が行われ、協会初となる女性理事・林信子氏(丸三警備保障)が就任した。女性警備員の雇用拡大、警備業のイメージアップ方策などを進める。新役員は次のとおり(敬称略)。

【新理事】 澤口晴彦(綜合警備保障長野支社)、坂本満(日本通運北関東警送支店長野警送事業所)

セコム新社長に尾関氏2019.5.21

中山社長は会長に

セコムは5月14日の同社取締役会で、中山泰男社長を会長、尾関一郎常務取締役を社長とする人事を決議した。共に代表権を持つ。尾関新社長はセコムの創業者で同社取締役最高顧問・飯田亮氏の女婿。6月26日に開催される同社定時株主総会後の取締役会で正式決定する。

同社は今回の人事について「グループ2030年ビジョンの実現に向けた体制強化、グループロードマップ2022の更なる推進、デジタル化推進など先進技術を活用したイノベーションの実現のため」としている。

特集ワイド スマホが無線に2019.5.21

ネット回線で情報連携 警備の質・効率をアップ

スマートフォンを無線機の代わりに使用――。持ち運びの負担が少なく「グループ通話」「音声のテキスト化」「位置情報の確認」などの機能を持ち、迅速に情報共有できる。警備業界にとって品質向上と効率アップに貢献するスマホIP無線サービス「Aldio Enterprise(アルディオエンタープライズ、以下Aldio)」を開発、販売するシアンス・アール(東京都新宿区、平岡秀一社長)を取材した。

このサービスは免許申請等の必要はなく、スマホやタブレットにアプリをインストールしてログインすれば、IP無線(携帯電話網を使ってデジタルデータや音声通信を行う業務用無線)として利用できる。「Aldio」の持つ豊富な機能について、アートディレクター・伊藤恵氏と営業本部・加納佐有子氏に解説してもらった。

操作は簡単で、画面中央の大きなボタンを押しながら会話する。警備で使用する場合にはスマホは制服に格納し、オプション販売されているスピーカーマイクやイヤホンマイクを使う。インターネットがつながる環境であれば、国内外を問わずどこでも使用可能で、多くの機能を持つ。

音声は「グループ通話」機能により、何人でも無制限に共有可能だ。「音声テキスト化」機能で即座に文字に変換して画面に表示できる。音声とテキストはどちらもサーバーに保存される。再生して誰がいつどのような指示を出したか確認することができ、報告書や日報作成時に参考になる。音声は、最新の音声圧縮技術によりクリアな音質で聞くことができる。

「パラレル翻訳」は、端末機に設定した言語に変換して音声またはテキストを伝える機能で、国内特許取得済みだ。翻訳は14言語(日本語、英語、中国語、ベトナム語、タイ語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、インドネシア語、フィンランド語)に対応する。例えば施設内で中国人から中国語で質問を受けた場合、その中国人に「Aldio」を介して案内係と話してもらう。中国語は日本語に変換されて案内係に届き、案内係の日本語は中国語に翻訳されて返信される。中国人を案内所まで連れて行く必要がなく、警備の質と効率のアップにつながる。

「位置情報確認」は、ユーザーが画面に表示した地図上のどこにいるか確認できる機能。ユーザーは赤いピンで示され、ピンを触るとユーザー名を表示する。地図上に枠で囲った範囲内に限定して一斉送信できる「MAP通話機能」もある。

「動態管理」機能によりパソコン画面から「点」ではなく「線」によるユーザーの行動確認が可能で、巡回警備のルート記録やより効率的なルートの検討などに活用できる。

災害時につながりやすい

「Aldio」は、緊急時の連絡手段としても有効だ。音声回線より通話制限がかかりにくいインターネット回線を利用していることから災害発生時にもつながりやすく、迅速な情報共有ができる。避難勧告などの警報が発令されているエリア内のユーザーに向けて避難指示をすることが可能で、BCP(事業継続計画)対策に適している。

現在開発中の機能に「動画のライブ発信」がある。スマホで撮影した動画をリアルタイムにグループに一斉配信できる機能で、現場の状況を動画で伝えたり、配置場所周辺の映像を見ながら警備員への的確な指示を行える。来年実用化が予定されている通信規格「5G」により一層鮮明な動画を迅速に配信できるようになる。

「AIアシスタント」も開発中の機能のひとつだ。発注先のデータベースと連携させることで、過去の警備記録などさまざまな情報についての音声案内を受けられる。

「Aldio」の使用料金は、基本機能のみで月額600円〜。30日間グループ10人限定で「Aldio」の基本機能を試すことができるキャンペーンを行っている。

また「Aldio」とスマホをセットで貸し出すレンタルサービスもある。例えばイベント警備などで一定期間だけ使いたい場合、1日から貸し出しを受け付けている。花火大会など大規模な警備で活用できる。

最後に伊藤氏は「機能はお客さまからの要望に一層応えられるように拡張していきたい」と話す。加納氏は「多くの機能で作業効率を上げることで“働き方改革の推進”にも役立ててほしい」と語った。

▽問い合わせ先 シアンス・アール ☎03―5846―9670