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クローズUP

2024「総会」スタート2024.05.21

課題克服へ期待集まる

都道府県警備業協会の定時総会が幕を開けた。6月下旬にかけて開催され、複数の会長、8人の専務理事の交代が予定される。適正な価格転嫁、人材確保、DX対応など諸課題に対し協会の取り組みに期待が集まる。

新潟警協

72社の115人が総会に出席した。あいさつで野澤慎吾会長(セコム上信越)は業界の現状について「警備料金の改善などが少しずつ進んでいるが、慢性的な警備員不足や技術革新への対応など多くの課題がある」との認識を示した。

その上で、課題解決には若い力が必要であることを強調。「今までの固定概念にとらわれず、自由な発想で、活動を進めていただきたい」と、青年部会への期待を語った。

今年度は、ハローワーク新潟との共催による合同企業説明会、県警本部への防犯機能付き電話の寄贈、働く警備員のフォトコンテストなどを引き続き実施する。県などの主催による総合防災訓練に参加する。

総会後は安全衛生大会を行い、労働災害防止作品の優秀賞受賞者を表彰。大会宣言を採択した。また、功労のあった警備員や協会講師、協会役員の表彰を行い、滝澤依子・県警本部長が祝辞を述べた。

新役員は次の通り(敬称略)。【理事】小日山俊哉(県防犯協会)

山形警協

我妻壽一会長(山形警備保障)は日頃の協会活動への協力に謝意を示すとともに、直面する課題のうち警備員の教育について「昨年秋の施設警備業務2級検定の合格率が40%を切り、強い危機感を持っています。教育委員会が今年度から事前講習カリキュラムを見直すとともに模擬試験の導入、警備員指導教育責任者の見学など、改革に取り組んでいます」と説明した。

警備員不足については「人手不足は深刻です。物価上昇分・賃上げ分を価格転嫁して原資を獲得するしかありません」と呼び掛けた。

事業報告では、年1回発行の機関誌のほか「協会だより」を毎月発行し、協会ホームページで一般向けにも公開し、就職説明会で紹介することで、最大1日2000アクセスを達成したことなどが報告された。

役員改選が行われ、新役員は次の通り(敬称略)。【副会長】森幸二(セロン東北)【理事】京郷有一(トスネット南東北)【監事】菊池学(奥羽警備保障)

障害者雇用で意見交わす2024.05.21

広島労働局と警備2社

広島労働局(広島市中区)の釜石英雄局長は4月24日、障害者雇用に積極的に取り組む警備会社2社の経営者と意見を交わした。釜石局長は「ノウハウを警備業界で共有、水平展開してほしい」と、障害者雇用の広がりに期待を寄せた。

出席したのは、広島労働局から今年1月に障害者雇用に積極的に取り組む中小企業の認定制度「もにす認定」を受けたリライアンス・セキュリティー(広島市中区)の田中敏也代表取締役と、同社が障害者雇用に取り組むに当たって参考にしたATUホールディングス(福岡市博多区)の岩﨑龍太郎代表取締役。労働局からは松澤浩二職業安定部長、細木誠職業対策課長、同課で障害者雇用を担当する石田智宏氏が同席した。

田中氏は障害者雇用に取り組むに際し、ATU社を見学。全盲の人が管制業務に就くなど同社の取り組みにカルチャーショックを受けたことを明らかにした。

同氏は約1年間を掛けて障害者雇用のための担当者教育や社内整備を推進し「もにす認定」に至った。現在のリライアンス社の障害者雇用率は5.86%。今年4月に引き上げられた法定雇用率2.5%を大きく上回る(全従業員数は約230人)。今後の目標に雇用率10%を掲げる。

一方、公益社団法人の全国障害者雇用事業所協会の常務理事で九州・沖縄ブロック長も務めるATU社・岩﨑氏は、特例子会社設立など他業種の障害者雇用にも積極的に取り組んでいる。自社でも「特に対応が難しい人から採用している」(岩﨑氏)。同社で警備員として働く人の障害の種類も多様で、身体、精神、知的の「3障害」にわたる。現在の障害者雇用率は56%(全従業員数は約60人)を達成。

田中、岩﨑両氏は、障害者雇用に対する考え方や障害を持つ警備員への教育法などを説明。釜石局長や同局担当者は、警備業の障害者雇用の可能性に理解を深めたようだ。

特集ワイド 警備業 健康づくり2024.05.21

警備員が心身ともに健康であることは、質の高い業務を提供するうえで重要だ。コロナ禍にあっては連日、健康状態の確認が必須となっていた。引き続いて会社が警備員の健康に気を配り、福利厚生として健康増進を図ることによって、職場の魅力をより高めて人材確保や定着促進につながることが期待される。健康づくりを掲げる警備会社の取り組みを取材した。

エム・エス・ディ

経済産業省と日本健康会議による「健康経営優良法人認定制度」で、中小規模法人部門の上位500社「ブライト500」に2022年から3年連続で認定されている。

主な取り組みは「花粉症対策」「食費補助(栄養バランス)」「健康推進手当」などだ。

花粉症対策では、信州大学繊維学部内に拠点を置くベンチャー企業が開発した高性能マスク「AIR(エアー)M1」を今年から導入。先端ナノファイバー素材のフィルターは花粉やウイルス性飛沫の侵入を防ぐとともに、呼吸はしやすい。従来品に比べ厚みは200分の1以下で重さは100分の1以下、長時間快適に着用できるという。

屋外の業務で花粉症に悩んでいた警備員からは「業務に集中できて非常に助かる。着けている気がしないほど軽いマスクを会社が用意してくれてうれしい」などの感想が寄せられる。

食事補助では、福利厚生の一貫として「チケットレストラン タッチ」を導入した。チェーンの飲食店やコンビニで利用できるICカード式の食事券で、毎月7000円のうち、給与として課税されない上限の3500円を会社が負担。“栄養バランスの良い食事”を推奨し、食事を通じた社員間のコミュニケーション促進にもつながっている。「日ごろの食事は肉が多いが、チケットレストランを利用して野菜サラダを食べる機会が増えた」などの声がある。

健康推進手当は、禁煙を開始した社員に月2万円の手当を3年間支給して禁煙の成功を後押しするものだ。喫煙しない社員は、毎日のジョギングなど健康づくりの継続的な取り組みを開始することで禁煙の場合と同額の手当が支給される。

従業員一括で医療保険に加入して入院費などをサポート。社員2人が、がんを治療しながら勤務を継続しているという。

工藤社長は「弊社は『私たちと関わる全ての人を何より大切にする』という企業理念のもとに事業を行っています。人はきっかけがなければ、生活習慣を変化させることは難しいものです。私もヘビースモーカーでしたが、やっとの思いで禁煙に成功しました。家族の健康を考えるのと同じように社員の健康に積極的に関わり、生活習慣改善の後押しや健康意識の共有などを進めようと、協会けんぽの『健康づくりチャレンジ宣言』を2018年に行いました。当時すでに人手不足が顕著で、社員の離職率を少しでも下げることを心掛けて健康経営に取り組んできたのです」と述べた。

健康経営がもたらす効果について工藤社長は「徐々に離職率が改善されて、社員数は増加に転じました。毎年少しずつ改善や体制づくりを進め、社員に『入って良かった』と思ってもらえる会社となるための努力は欠かせません。継続することによって一層の成果が表れると信じています」と強調した。

津軽警備保障

経営理念に「社員が心身ともに健康であること」を掲げ、健康経営優良法人の「ブライト500」認定は、今年度で4年連続となった。

主な取り組みは▽全社員(100人)にインフルエンザ予防接種▽定期健康診断で「要再検査」の社員に受診を勧め、受診率100%▽14年にわたり社内に禁煙を推奨し続け「喫煙者ゼロ」を2021年に達成▽フィットネスジムの利用費を補助▽栄養バランスの良い食事をテーマに社内セミナー▽健康情報を発信する「衛生委員会だより」を年6回発行――などだ。

2月27日には弘前市内のトレーニングスタジオ「サクラス」で「健康サポートDAY」を開催した。参加した社員は、体組成計で筋肉量や脂肪量を測定した後、体に負荷をかけることでより高い運動効果が得られる「低酸素ルーム」で、ウォーキングを行って汗を流した。

さらに、社会課題となっている介護離職を防ぐため「介護セミナー」を3月8日と12日に社内で開いた。介護事業者が講師を務め、家族を介護している社員や将来に備え関心がある社員12人が受講。介護の準備、行政の支援窓口、補助金やデイサービスなどに知識を深めるとともに、疑問や不安な点を講師に相談しアドバイスを受けた。

吉田勇太代表取締役社長は「健康づくりの取り組みは、幅が広いものと考えています。心も体も良好な状態で業務に打ち込むことができるように社員をバックアップしていきたい。健康増進は、もちろん強制的でなく自主的に行うものですが、生活習慣病を防ぐために肥満の改善などで社員にアプローチを図ることは大切と思っています。今年度は、トレーナーによるダイエット・プログラムの導入などによって今まで以上に社内の健康意識を高めていければ」と話している。

東洋警備保障

創業40周年を迎えた2020年に社員とその家族が利用できるトレーニングセンターを西部営業所(徳島県美馬市)に建設した。トレーニングジム、体育館、壁を登るボルダリング設備、サウナとシャワールームなども備え、体を鍛えてリフレッシュできる場所を提供してきた。

昨年11月からは、一般の人に向けて有料の24時間営業・会員制フィットネスクラブ「YOLO(ヨロ)Fitness Club」として運営している。社員は引き続き無料で利用できる。

宮本代表は「安全安心を守る警備業務は“ミスが許されない”というプレッシャーが伴うことから、ストレスの解消は大切だと思います。弊社創業40周年の記念として何が必要か役員一同で話し合い、社員に対する感謝を込めて健康増進を目的としてトレーニング施設を建てました。社員は勤務前や勤務後にジムを利用して、新たなコミュニティーも形成され活気が生まれています。SNSなどで広報したところ当社の魅力の一つとなって、警備員の新規雇用にもつながり、建設して良かったと感じます」と述べた。