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3年ぶり夏祭り警備2022.07.21

大東警備保障 埼玉「久喜提燈祭り」守る

大東警備保障(埼玉県久喜市、山﨑守代表取締役=埼玉警協副会長)は7月18日、「久喜提燈ちょうちん祭り」を警備した。コロナ禍のため昨年は「山車」の展示のみ。山車が市内を回る本格的な祭りは3年ぶりとなる。

警備には同社の警備員10人と協力会社4社の警備員の総勢35人が出動。車両の進入が規制された祭りメインストリートにつながる道路の交差点などに立ち、車両の迂回指示や見物客の安全な誘導などを行った。

地元警備会社として長年祭りを警備してきた同社。祭り再開に際し山﨑社長は隊員に「コロナ対策と熱中症対策に万全を期すように」と指示。“遊撃隊”の隊長として警備に従事した同社警備部交通課主任の小泉英士さんは「見物に来たお客さんが安全に帰れるのが願い」と、警備開始の正午から午後9時まで祭りの安全に汗した。

久喜提燈祭りは、1783(天明3)年に始まったとされる230余年の歴史と伝統を誇る祭り。群馬・浅間山の大噴火で夏の作物が全滅したことによる生活苦や社会不安を取り除くため、祭礼用の山車を曳き回して豊作を祈願したのが始まり。山車は市内7町から7台が繰り出され、昼間は人形を飾り付けるが、夜は人形に代わり約500個の提灯を飾り付けた「提燈山車」に早変わりする。

熱中症 猛暑到来、搬送者が急増2022.07.21

水分・塩分確実な摂取を

例年にない早い梅雨明けとなった6月下旬から、全国の熱中症による救急搬送者が急増している。総務省消防庁の調べによれば、6月19日までの各週では1000人台で前後していたが、6月20日から26日の週は4551人に急増、翌6月27日から7月3日の週は1万4353人となった。

2021年に全国の職場で発生した熱中症による死傷者(死亡と休業4日以上)は561人と、前年に比べ398人(41%)減少。全体の約4割が建設業と製造業で発生したが、警備業の死傷者数は68人(うち死亡1人)と、これらに次ぐ「ワースト3」。猛暑の時期を迎え、警備業での熱中症予防対策の徹底が求められる。特に警備業では、労働安全衛生法に規定される「水分や塩分の補給」など熱中症予防対策を怠ったとして労働基準監督署から警備事業者が送検されたケースもあり、企業防衛の観点からも対策の実施は欠かせない。

警備員に水分・塩分を確実に摂取させることはもちろんのこと、勤務当日の「朝食の未摂取」「睡眠不足」「前日の多量飲酒」「体調不良」なども熱中症も誘発するだけに、現場責任者や管制担当者は警備員の体調変化などに通常以上に注意してほしい。

特集ワイド 「戦略的」警備員教育2022.07.21

警備業界は、2019年8月に実施された法定教育の教育時間数の削減に大きなインパクトを受けた。元神奈川県警備業協会専務理事で本紙「紙面向上委員会」委員の早川正行氏に警備員教育について寄稿してもらった。早川氏は「警備員教育こそサービスの品質を向上させ商品価値を高める武器である」と指摘した。

元神奈川警協専務理事・早川正行氏

教育たいにより行政処分を受け、結果的に会社を畳まざるを得なかった経営者の存在を見聞しているだけに、教育時間の削減で業界に安堵の声が聞かれた。一方、法定教育時間数の緩和を冷静に受け止め、独自の手法により警備員教育の取り組みを強化する会社が存在するのも事実である。

この違いはどこから来るのか。キーワードとなるのは、警備員教育に対する警備会社の姿勢にある。警備員教育を法律上の義務として受動的に捉える立場がある一方、警備員教育こそサービスの品質を向上させ商品価値を高めるための武器であるとして、戦略的に位置づける会社もある。警備員教育を戦略的に捉える立場に注目したい。

最初に法定教育の性格を確認しておきたい。

警備業法制定以前、当時のガードマンが労働争議に介入して暴力事件を起こしたり、警察官と誤認されたガードマンが拾得物を着服するなど国民の権利を侵害する行為が続発したことが、警備業法制定の大きな動機となった。

元来、警備業務は、業としての制約はあるものの人の生命・身体・財産の保護という特殊性がある。この特殊な業務を遂行するため、警備業法は警備員に対する法定教育を厳しく規定している。加えて警備員指導教育責任者制度を設け、指導者を育成するなど法定教育を確実に実施するための強化も図った。

警備員教育は、不適切な警備業務により国民生活に不安と混乱を生じさせないよう、警備員の資質向上を目的としている。警備会社の義務として徹底が図られ、法定教育は警備会社にとって最高レベルのモラルとされてきた。

「勘違い」はいけない

公安委員会による行政処分の多くは教育懈怠であることをみても、警備業法上の重要条項として位置づけられ履行されてきたのである。法定教育の教育時間数が大幅に緩和された点について、教育の必要性が薄らいだと勘違いすることは大きな問題である。

警察庁の通達によると、改正の主旨は「警備員への指導教育体制の充実及び警備員の質の向上が図られ、より短期間の教育で教育目的を達成することができる状況にある」としている。事実、個人の権利・自由を侵害するような警備業務は大きく減少している。これは、長年にわたる業界関係者の努力の成果といえよう。

しかし、法定教育だけで良質なサービスを提供できるものではないということを、改めて確認する必要がある。法定教育は、警備業法の目的である適正な警備業務を行うための義務ではあるものの、そこには当然ながら商品価値(サービス価値)を高めるという実業の視点はない。法は適正な警備業務という背骨を形成することが本務であり、各社が受注した個々の警備案件に対応する警備員教育は、ユーザーの要望に応じて各社の責任で実施しなければならない。

警備業は安全・安心を提供するサービス業である。そして、現場の最前線でサービスを提供するのが警備員である。サービスの質向上を図るためには、警備員教育の改革が求められる所以である。

業界では、「警備業は教育産業」といわれてきた。これは、他の業界にはみられない。警備員に対する法定教育の義務だけでなく、検定合格警備員の育成など警備業務の質を高めるため、各社が独自の手法で行う警備員教育も熱心に取り組まれてきたことを包括する。

根底にあるのは、警備員教育こそ警備業務の質を高めユーザーの信頼確保に通じることを経験していることがある。自社の商品価値を高めるために、警備員教育を中心とする戦略が成功することを見聞し、かつ体験しているのである。

要望は多様化

近年、高度に発達した市民生活や経済活動を安全・安心という側面で支える警備業務に対しては、ユーザーからの要望も高度かつ多様化している。だからこそ、法定教育に加えサービス業の精神を踏まえた警備員教育が重要なのである。

2008年ごろの業界は、特に2号業務においてダンピングが横行し、業界の将来を悲観する声が蔓延した。低価格競争は、裏を返すと「セールスポイントは低価格しかない」ことを意味する。サービス業の誇りを捨て、教育も十分ではない乱れた服装の警備員を配置するなど、業界の中でもひんしゅくを買う会社が少なからず存在した。

そのような中にあっても、ユーザーは困難な警備現場に優秀な警備員の配置を求めた。会社の教育制度の中で優秀な警備員を育て配置するのであるから、当然、警備料金にも反映される。質を営業戦略とする誇りある会社はダンピング時代にも存在したのである。

人の権利・自由に係る法定教育をベースに、業務の実情に応じた知識・実技の習得などサービス業の視点に立った警備員教育は、業界全体に根付かせる必要がある。そのためには、独自の研修センターの設置や安全パトロールの実施など、教育にコストをかけ商品価値やサービスの質を高める努力が大切である。

警備員教育は、確実に商品価値やサービスの質を高める方向に作用するはずだ。

コロナ禍の中で、医療従事者の活躍が注目を集めた。社会基盤を支えるために必要不可欠な仕事として、医療従事者をはじめ警察官、消防官、鉄道マンなど、多くの職業があげられた。

警備員も市民生活や経済活動の安全を支えるエッセンシャルワーカーである。その産業としての守備範囲は広く、家庭をはじめ、会社、工場、金融機関、空港、発電所、更には有名人の身辺警護など、市民生活や経済活動の隅々にわたっている。

それ故、ユーザーの要望に応じた警備員教育の重要性がある。会社の成長は、戦略的な警備員教育にあると断言できる。