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クローズUP

2022年度総会始まる2022.05.01

都道府県警備業協会の総会を前に、4月14日に関東地区、25日には中国地区の警備業協会連合会総会が開催された。新型コロナが予断を許さない中、適正警備料金の確保や人手不足など山積する課題解決へ向け、各警協の取り組みが注目される。

関東地区連「青年部会」をテーマに

関東地区警備業協会連合会(会長=島村宏・茨城警協会長)は4月14日、千葉県成田市内で通常総会と会長会を開いた。10県の警協会長と専務理事、全国警備業協会から中山泰男会長、黒木慶英専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。

役員改選があり島村会長の留任(7期目)を決めた。会長会の討議テーマは「青年部会」。すでに青年部会が発足している県からは活動状況の報告と今後の課題。設立に向け準備を進める県からは活動計画、協会としての支援策など、次代を担う青年部会の発展に向けて意見が交わされた。

島村会長は「業界の更なる発展の原動力となるのは若い力です。今後の青年部会の活躍が業界の将来を左右することになると考えています。部会の活動活性化に向けて活発な討議をお願いしたい」と呼び掛けた。

中山会長は「全警協は5月に創立50周年を迎えます。各種事業を成果あるものにするためには青年部会の若い力が是非とも必要です」と期待の言葉を贈った。

関東地区連10県で青年部会が活動しているのは茨城、千葉、山梨、長野の4県(設立順)。活動報告は次のようなものだった。

「青年部会の活動は会社経営、労災、社会貢献が3本柱。自主性と主体性を持ってやってもらっている」(千葉)。「若者を対象にリクルート活動に力を入れている」(山梨)。「新年度も予算措置をとって支援する」(茨城)。「各種の委員会と同等の位置付け。若い感性を協会運営に生かしたい」(長野)。

設立準備状況では、「5月の県総会で発足と資金援助を正式決定する」(静岡)。「理事会で賛同を得ており、今秋の青年部会全国大会までに設立する」(栃木)。埼玉、神奈川、新潟、群馬でも「協会活動のプラスになるよう前向きに考えている」と報告した。

中国地区連、会長「持ち回り」制へ

中国地区警備業協会連合会(会長=村本尚之・広島警協会長)は4月25日、広島市内で2022年度の定時総会を開いた。中国地区5県の会長と専務理事に加え、全国警備業協会の黒木慶英専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。

村本会長は「警備員不足や経営基盤強化、処遇改善・地位向上など課題は多い。新型コロナ対策のため制約が課されるなど二重苦、三重苦の状況にある」と業界の窮状を述べた上で、「これまで以上の緊密な連携・協力が重要」と、中国各県の取り組みを求めた。

3月9日の同地区連会長によるウェブ会議で発議、採択された「会長の(地区連各県)持ち回り」を受け、島根警協会長の吉岡健二郎氏が地区連新会長に選出された。吉岡新会長は村本現会長を新副会長に指名、全会一致で承認された。

今後、年1回開催する地区連総会や役員会などの開催地については、会長県(島根)開催にこだわらず、各県から参集する際の利便性などを考慮しつつ改めて協議する。

長年にわたり地区連事務局を務めてきた広島警協に保管されている会計書類や会議録などの保存簿冊については、順次データベース化・ペーパーレス化し地区連5県で共有化する方向で意見が一致した。

吉岡新会長は「地域の課題は山積している。中国地区連傘下412社、2万2000人の地域警協の声を全警協施策に反映させていくことが今まで以上に必要になる」と決意を述べた。

特集ワイド 進め「ドローン警備」2022.05.01

無人航空機(ドローン)を警備業に活用する期待が高まっている。今年12月に改正航空法が施行され、ドローンが市街地エリアでも操縦者の目が届かない範囲で飛行すること(レベル4飛行)が可能になるためだ。警備各社はドローンの持つ可能性や潜在能力に注目し、実運用に加え新たな警備価値の創出も目指している。

政府は2015年に設置した「小型無人機(ドローン)に関する関係府省庁連絡会議」で、活用の検討を行ってきた。その中で警備もドローンの特性が生かせる分野と位置付け、高齢化が進む地方の市街地での広域巡回、通学中の子供たちの見守り、国立公園や広大な駐車場の上空からの巡回などを具体例として想定している。

今年12月に操縦者の目が届かない市街地エリアで飛行する「レベル4飛行」が解禁される。これに伴い必要な制度整備も進められている。6月20日からは重量100グラム以上のドローンを国土交通省に届け出ることを義務化する「機体認証制度」が始まり、12月までに操縦者の技能を証明する制度も具体化される。

複数のドローンが飛行する状況下でも安全な運航を確保する仕組みも整えられる予定だ。衝突回避のため飛行計画を航空当局に事前申告する「運航管理システム」制度がレベル4飛行解禁までにスタートする。

レベル4飛行解禁で警備業の活用拡大が期待される一方、制度面の調整が必要となってくる部分も残っている。

運航管理システム制度では、警備という業務特性上から詳細な飛行ルートを明らかにすることが難しい面がある。飛行ルートの申告は警備計画を事前開示することと同じで、侵入者に計画が漏えいする危険性がある。

警備業の場合は運航管理システムへの申告義務を免除するか、あるいは大まかな飛行範囲のみ開示し詳細ルートは非開示とするなどの措置が考えられる。不審者を追尾する場合は、計画していたエリアを超えて飛行する可能性があり柔軟な運用が不可欠となる。上空からの巡回についても、有人地帯ではプライバシー保護との兼ね合いがあるため、地域住民の了解を得ることが必要だ。

半面、警備の効率化や付加価値化を図ることもできる。広大なエリアをドローンで巡回することは人手不足対策につながる。異常が発生した時は、警備員が駆け付けるよりも速く現場に到着可能だ。上空からの巡回は、警備員では不可能だった上からのかんの目を持つことになり、警備品質のアップと新たな付加価値を生み出せる。

レベル4飛行解禁は、将来の警備業に多大な恩恵をもたらす可能性を秘めており、警備各社の期待も大きい。技術の進歩も加速し、今後は警備専用の機種が相次ぎ登場してくると予想される。ドローンが警備業の必須アイテムとなる日は遠くはなさそうだ。

セコム・次世代機へ

セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は、2015年に自律飛行型の警備用ドローン「セコムドローン」を実用化した。18年には官民協同の刑務所「美祢社会復帰促進センター」(山口県美祢市)で巡回業務を開始し、警備分野におけるドローンの活用を推進してきた。

セコムは、警備を行う敷地の侵入者に対し迅速・的確に追跡でき、搭載したカメラで撮影できるドローンの特性に着目した。警備への活用拡大を見据え、国の社会実証プロジェクトなどにも積極的に参加した。

レベル4飛行では、市街地エリアでも操縦者の目が届かない範囲で飛行することが可能となるため、地形情報と連動した運航が重要になると判断。グループ会社で航空測量事業を手掛けるパスコと連携し、パスコの持つ3次元地形データとの連動について確認を行っている。

セコムはドローンを新たな警備需要の創出にもつなげる考えだ。上空からの巡回など従来の警備員による警備では不可能だったことを新たな視点から付加価値化する。高速飛行やAI搭載、耐風雨性能など新機能を備えた次世代型警備用ドローンの検討と具体化も進める。

ALSOK・操縦者100人

ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)は、2014年にドローンを事業化し大規模太陽光発電所(メガソーラー)などの設備点検から運用を始めた。18年には有線で電源を供給するタイプで上空からの警備を始め、21年には橋梁など社会インフラの点検業務も開始した。

レベル4飛行の解禁については、現場への迅速な到達や上空からの巡回などで警備の高度化を期待する。大学のキャンパスや工場など敷地の広い場所の警備では、ドローンの優位性が生かせると分析している。一方、警備への活用に関し社会全体の理解がまだ十分ではないとし、提案活動を通じ顧客側の了解を得る必要もあると指摘する。

当面は、先行して実用化が進む設備点検分野での需要拡大を図り有効性などを周知、警備利用も行いながら先行事例をモデルケースとして活用していく。

警備への利用と合わせ操縦者の育成にも力を入れていく。警備への展開を本格化する前提条件として、22年度内に操縦者を100人体制とし全国の拠点・関係会社などに配置、実務経験を積ませながらグループ全体で操縦ノウハウを蓄積する。

CSP・狭い空間で

セントラル警備保障(CSP・東京都新宿区、澤本尚志社長)は、警備以外の分野でもドローンの活用を模索していく姿勢を示している。特徴を生かせる用途であれば積極的に実用化し、経験則を積み重ねて警備への活用に弾みをつける。

現在先行して進めているのは設備の屋内点検だ。昨年から、GPS(全地球測位システム)が利用できない天井裏や大型配管内部の点検用として、ドローンの利用を始めた。サイズが191×179×54ミリで極めて狭い空間の飛行に適している小型ドローンを使い、内部の損傷などを確認し画像撮影する。

同社では狭い空間を操縦することで操縦者の技量も高まると期待する。設備点検で磨いた操縦テクニックは警備分野でも活用していける。

レベル4飛行解禁による警備業への展開については慎重に状況を見極めながら、資本参加したドローンメーカーのリベラウェア(千葉市中央区)と連携し、警備用の機種開発などにも取り組む。操縦者の育成も強化する考えで、自社の教育基盤を固めるためドローンスクールの開校も視野に入れていく。