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クローズUP

「リモート教育、認めて」2020.10.01

京都警協青年部会、実技訓練の「動画」製作

京都府警備業協会(宇多雅詩会長)の青年部会(市川良部会長=太陽保安警備)は、“オンライン”を活用した模擬の実技訓練の模様を収めた「動画」を製作した。同青年部の提言「法定警備員教育での実技訓練に、遠隔地からの非対面でのリモート教育導入」実現のため、同教育の具体的な方法・内容・効果などの理解促進が目的だ。

模擬訓練は、交通誘導警備業務の実技訓練を、本社と営業所間をインターネット回線でつなぎ遠隔(リモート)で実施。本社の指導者が、営業所の2人の警備員に手旗を用いた交通誘導警備の実技を、双方向でやり取りしながら指導した。

動画は9月16日開催の同協会理事会で紹介。京都警協は青年部会提言実現のため、全国警備業協会に「関係機関へ働き掛けを行うことを求める」を内容とする要望案提出を決定した。

動画を視聴した理事からは次のような意見・感想が寄せられた。

▽実技訓練とは実際に行うものとの認識であり画面を通しての実技訓練など想定外だった。動画を視聴し、個々の警備員に対する具体的指導、双方向の意見交換、検証がそれぞれ可能であり、対面での教育に劣らないことが理解できた。

▽コロナ禍の終息が見通せない中で、安全安心を提供する警備業には、密を避けながら警備員の質的向上を図ることが求められている。教育方法の新たな選択肢は、業界挙げて行うべきものと考える。

▽実技訓練とは「実際に訓練を行う」ことが求められており、他人が行っている実技訓練をテレビで視聴することで「実技訓練を行った」とは言えない。しかし、実際に訓練を行い、個々具体的指導ができるならば、対面か非対面かを区別する必要はない。

動画は、「ユーチューブ」(https://www.youtube.com/watch?v=yT5L-dHv_CA)で視聴できる。

全警協、第2回の基本問題諮問委2020.10.01

作業部会が進捗報告

全国警備業協会(中山泰男会長)は9月16日、第2回の「基本問題諮問委員会(成長戦略を検討する委員会)」をウェブ会議方式で開催した。7月14日の初会合で5つの検討テーマごとに編成された作業部会の進捗状況が発表された。

「経営基盤強化」作業部会の佐々木誠部会長(セシム)は、9月9日の作業部会で部会員から出た意見を報告した。▽経営基盤強化のためには適正料金を得て労働環境を整備し、それが警備料金に還元されるようなサイクル確立▽警備業者を客観的な尺度で判断できるマル適マークや建設業にある経営事項審査のような制度導入▽経営者の高齢化と後継者不在が大きな問題▽適正料金確保には「経営者の意識」が重要、経営者に向けた教育を実施する仕組み作り――などの意見があった。今後は警備料金交渉前に、価格構成や根拠を理解するための資料作成に向けて協議を行う。

ほかの作業部会からは次の進捗報告があった。▽「外国人雇用(折田康徳部会長=にしけい)」と「ICT、テクノロジー(豊島貴子部会長=CGSコーポレーション)」は、アンケート調査を行って実態を把握した上で施策を検討する▽「成長戦略に資する警備業法の見直し(首藤洋一部会長=セコム)」は、法制度の在り方について検討を進めていく▽「災害時の警備業の役割明確化(松尾浩三部会長=近畿警備保障)」は、有償協定の現状の課題を洗い出す。

委員会に先立ち、日本サイバー犯罪対策センターの磯田弘司シニアセキュリティーエキスパートによる「2020年上半期におけるITセキュリティー事案と再点検事項について」と題した講演が行われた。同氏はインターネットバンキングに係る不正送金などサイバー犯罪の被害事例を紹介した。

特集ワイド2020.10.01

「自家警備」を考える

寄稿 元神奈川県警備業協会専務理事・早川正行氏

本紙は8月1日号で静岡県が今秋にも県発注の建設工事で建設会社従業員による交通誘導「自家警備」をスタートさせることを報じた。これを受けて本紙「紙面向上委員会」委員の早川正行氏に寄稿してもらった。自家警備が行われる原因に指定路線の警備に必要な検定合格警備員の不足があり、優秀な警備員を育成して自社の警備業務の質を高める経営者の意欲が問われている、と指摘している。

静岡県がスタートさせる自家警備は、交通誘導警備員の不足で指定路線で業務を行う資格を持った検定合格者の配置困難を理由に警備会社が業務依頼を断り続けたため、入札参加の断念や工期延長を強いられてきた建設業者の危機感が背景にある。発注者側である国や県など自治体からも、公共工事の計画が狂うことへの危機感がうかがわれる。そこで「静岡県建設業協会」が主導し、県の交通基盤部や県警の生活安全部、国の関東地方整備局、県警備業協会などで構成する「交通誘導員対策協議会」を設置し、自家警備の実施要領の策定に着手するというものだった。

建設会社は道路工事に伴う交通の安全を自身で確保するため、関係機関と連携し交通誘導のノウハウを学ぶための協議会を立ち上げた。いわば警備会社の「ギブアップ」を理由に道路工事現場の安全を建設会社自らが担う“警備員不要論”である。これに対しては「自家警備で道路工事現場の安全を確保できるか」という問題の根本に立って考えなければならない。同時に警備業界としては、検定合格警備員の育成に向けた対策強化を図る必要がある。

検定受講者・合格者が減少

静岡県建設業協会が加盟社に実施したアンケートによると、検定合格警備員の確保が難しいため指定路線の緩和を求める意見が9割に及んだ。自家警備を議論せざるを得ない原因の一つが検定合格警備員の不足であるなら、警備業としても事態を深刻に受け止める必要がある。

警備員特別講習事業センターの資料によると、2019年度の交通誘導1級・2級は前年度に比べ受講者・合格者が共に減少している。ここ数年、全国的に交通誘導の検定は、受講者・合格者とも減少傾向にある。

一方、検定合格警備員の配置義務がある雑踏警備2級や貴重品運搬2級の合格者数は前年度に比べ増加傾向にあり、交通誘導警備の合格者数の伸び悩みが目立っている。施設警備では配置義務がないにも関わらず、業務の「質」の向上を図るため、検定合格警備員の育成に会社を挙げて取り組んでいる。

検定合格者の配置義務という法規制は、業界としては画期的な「生活安全産業」の位置付けの中で生まれたことを思い起こす必要がある。国は全国的な体感治安の悪化などを背景に03年、全閣僚をメンバーとする犯罪対策閣僚会議を開催し、警備業について国民の自主防犯を補完・代行する役割を果たしているとして「生活安全産業」に位置付け、国の犯罪抑止体系に組み込むことを決定した。

この決定を受けて翌年に警備業法の一部改正が行われ、第18条の検定合格警備員配置義務という法規制が生まれた。この規制は警備業者に義務を課すだけではなくコストアップにもなるため、ユーザーに対しても負担を求める法改正だった。それでも安全・安心という警備業務の質を期待するユーザーからは異論が出なかった。

交通誘導警備が必要な建設工事の入札案件の多くは国道・県道であるため、当然、指定路線であり、検定合格者の配置が義務となる。警備会社が検定合格警備員の育成を怠り建設会社の需要に応えられないなら、これは警備業界の問題だ。

警備会社と警備員は増加

警備業が売上高3兆円を記録したのは03年で、警備業が生活安全産業に位置付けられたのも同年のことだ。警備業は生活安全産業の位置付けとともにユーザーの期待に応え業務を開拓し、3兆円産業に発展した。

警備業が売上高の最高を記録したのは07年の3兆5634億円だ。売上高で見ると19年は07年とほぼ同じだが、警備会社数と警備員数が大きく増加している。警備会社は912社・約10パーセントの増加、警備員は7万6600人・約16パーセントも増加している。

警備会社数と警備員数の増加は新たな業務の開拓に結びつき売上高も増加するはずだが、現実は横這いだった。既存の市場の中で適正利益を無視した警備会社同士の過度な競争が行われた可能性がある。

2号業務の警備会社を見ても、19年は07年に比べ1242社・約20パーセントも増加した。警備会社も警備員も増えているにも関わらず「自家警備」問題が発生するのは、警備員不足が原因ではなく入札の要件となっている「検定合格警備員の不足」が原因と思われる。警備会社は増加しているが、検定合格警備員を育成し、自社の警備業務の「質」を高める意欲に欠ける会社の乱立が懸念される。

これは経営者の経営方針の問題だ。無理をしなくても食えるだけの業務に満足するか、困難だがユーザーが希望する業務を開拓し会社の発展を期すか、経営者としての資質が問われる。もし警備業界が食えるだけの業務で満足する経営者に支えられているとしたら業界の発展は期待できない。

警備員の増加は高齢者

警備業界では常に警備員不足が問題となっている。仕事はあるが警備員が足りなくて困っているという声はよく聞かれる。

しかし警備員数は年々増加しており、19年は57万人超と過去最高となった。警備員は常用警備員と臨時警備員に分類できるが、19年の常用警備員の割合は90パーセント以上を占めていたことから、9割は“プロの警備員”ということができる。それでも警備員が足りないという声が聞かれるのは何故だろう。

警察庁の資料から警備員の年齢を見ると、60歳以上が45パーセントを占め、年金を補完するために働く職場であることが推定される。これは高齢者を雇用する意味において社会に貢献していることは事実だが、産業の活力という視点で見ると大きな問題である。警備員の半数近くが年金を補完するために働く業界に活力が生まれるだろうか。警備業という産業を発展させるためには、若年層の活力と発想力が必要だ。

新型コロナの影響で、飲食業・宿泊業などから警備業へ転職を希望する人が多い。失業という大きな苦難を経験した上で警備業の門をたたくのだから、会社を背負う有為な人材に成長する可能性は高い。警備業の市場はまだまだ開拓の余地が大きい。今こそ有望な人材を採用し、会社の将来を担う幹部候補として育てていきたいものである。