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クローズUP

各地の総会、さらなる発展めざす2022.06.01

都道府県警備業協会の定時総会が相次いで開催された。コロナ禍による警備業務への影響が懸念される中、課題克服とさらなる発展へ向け、全国で取り組みが進む。

大分警協、安値受注にクギ

但馬英二会長(パシフィックセキュリティ)は「発注先も新型コロナの影響を受けて大幅な値引き要請や同業者同士のダンピング受注が横行するかもしれません。大幅値引きの受諾やダンピング受注はリーマン・ショック後の二の舞になりかねないため、自ら先頭に立ち適正な警備料金の維持に努めます」と協会トップの決意を表明した。

安値受注は慢性的人手不足の改善を阻むとの見方も示した。人手確保に必要なコストを賄えなくなる危険があるためだ。年次有給休暇の5日間の取得義務化や時間外労働規制の適用、同一労働同一賃金など「働き方改革」にもコストがかかるため「安易な値下げは自らを追い込む結果になる」と安値受注にクギを刺した。

新役員は次の通り(敬称略)。【副会長】下田喜文(にしけい大分支社)、【理事】西野誠(ALSOK大分支社)【理事】坂本聡(葵綜合警備保障)

山口警協、先端技術の活用を

豊島貴子会長(CGSコーポレーション)は、「久しぶりに通常の形式で総会を開くことができたが、先行きは不透明だ。我々はどのような事態が起きても、県民に安心安全を届けていかなければならない。常に警戒し、しっかり警備業務を行っていくことが重要だ」と強調した。

青年部活動にも触れ、新しい発想やチャンスが生まれていることも紹介。「知恵を出し工夫していけば光明も見えてくる。未来を信じ前に進んでいこう」と呼び掛け、先端技術の活用で警備業の存在意義を高めていくべきだと訴えた。

今年度は、前年度も取り組んだ「先端技術の活用促進」を一段と強化する。青年部のメンバーを軸に勉強会などを開いて知見を高めながら、実用化に向けた道筋を具体化していく。

新役員は次の通り(敬称略)。【監事】日高清人(宇部興産総合サービス)、岡﨑謙司(岡﨑謙司税理士事務所)

厚労省が男女の賃金差、公表へ2022.06.01

「女性活躍推進法」見直し300人超の企業に義務化

厚生労働省は女性活躍推進法の制度を改正、男女の賃金差の公表を企業に義務付ける。5月20日に首相官邸で開かれた第7回の「新しい資本主義実現会議」で後藤茂之厚生労働相が明らかにした。

現行では企業の選択制となっている女性活躍推進に関する情報公開の仕組みを見直し、従業員数300人超の企業に「男性賃金に対する女性賃金の割合」の開示を義務付ける。施行は7月の予定。

特集ワイド DX警備 情報開示2022.06.01

山口県警備業協会(豊島貴子会長)は5月21日、CGSコーポレーション(山口県岩国市、豊島貴子社長)トレーニングセンター内で「警備業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)社会への対応」をテーマに研修を行った。青年部が研究を重ねてきたDXによる課題解決の取り組みと、AIを活用した交通誘導システムについて警協会員や全国の青年部に情報開示した。

この研修は維新の志士を育てた吉田松陰の座右の銘になぞらえ「至誠研究会」と銘打ったもの。2018年に設立した山口警協青年部(上川高太郎部会長=CGSコーポレーション、以下CGS)は業界のさまざまな課題について研究を重ねた。

8回目となった今回の趣旨は、ICTテクノロジーに関する講義や交通誘導システムの実演を行い、警備業のDX社会への対応について知見を深めることだ。同青年部をはじめ県警協会員、県警察本部、県外からの警備業関係者、全国警備業協会など約50人が参加した。

豊島会長は「業界の課題解決のためには経営基盤強化を図らなくてはなりません。それは経営者の役割であり責務ですが、社員の協力なくてはなしえない。協力を得るためには情報を開示する必要があります。経営環境の変化に対応するために業界が一致協力し英知を集結させることが、未来を切り開く唯一の方法と確信しています」と述べた。

全警協の黒木慶英専務理事は「変化する時代のなかでどのような気付きを持つか、不安と正面から向き合い、いかに切り開いていくか。山口警協青年部の皆さんは真摯に取り組み、よい仕事をされていると感じました」とエールを送った。

青年部の上川部会長は「ともに生きる『共生』から共に作る『共創』へと歩みを進める一歩として本日の研修会を開催します。我ら青年部の気付きのプロセスがどのように経営基盤強化サイクルにつながるのか、管理と現場の両面から検証します」と宣言した。

青年部員の佐々木祐介氏(CGS)は「内なるDX」について自社の取り組みを紹介した。

「当社は40年にわたって社内の基幹業務のシステム化を進めてきた。こだわったことは『自社開発』で、理由はシステムを全て連動させ一元化させたい思いがあったからです。事務職員の残業時間は直近10年間で、月平均45時間から5時間に減少、経営基盤強化に直結しました。当社は開発したシステムについて要望があれば全てを情報開示します」と呼び掛けた。

佐々木氏は青年部の今後の取り組みとして、昨年CGSのグループ会社となった機動警備保障(山口市、廣本信昭社長)の「内なるDX推進」を挙げた。同社のDX化を通じ変化の過程やメリット・デメリットを検証していく。

青年部員の繁友浩司氏(CGS)は「外なるDX」について紹介した。

「建設業者は工事を安全に予定通りに完成させたい。交通誘導について警備業以外の業種から効果的な取り組みの提案があった場合、警備業が必要なくなる可能性もあります。警備業は先進的なテクノロジーを現場に投入していかなければならない。省人化で生産性を上げることで多くの現場に警備士を配置でき、お客さまの要望に応えることができるのです」と訴えた。

繁友氏は「交通誘導警備士は今後オペレーターの能力が必要になる。現場の道路規制図を作成し現場全体の状況を把握、機器の取り扱いやメンテナンス、有事の際の対応などが求められる」と語った。

4月からCGSとAIシステムの共同研究を行っている山口大学大学院・中村秀明博士は、上関大橋(山口県上関町)で2020年に発生した交通事故で、AIを活用し車種によって通行規制を行った事例を報告した。