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クローズUP

五輪からパラへ2021.08.21

24日開幕、9月5日まで

新型コロナ感染拡大による開幕1年延期、公道での聖火リレーの中止や競技会場の無観客など、前代未聞の開催となった五輪が8月8日閉幕した。

警備は全国から動員された警察官に加え、五輪史上初めて民間警備会社553社による共同企業体「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会共同企業体」(警備JV・共同代表=セコム、ALSOK)が担当、大会運営を支えた。

警備JVは今後、8月24日に開幕、9月5日まで22競技が21会場で行われるパラリンピック競技大会の警備を行う。

警備規模11%縮小

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は8月7日、「東京2020」の民間警備が開幕前の予定から約11%規模を縮小したことを明らかにした。準備期間を含め1月5日から10月31日まで従事する警備員数は延べ53万5000人。開幕前に見込んでいた60万1200人から6万6200人減少した。

規模縮小は、大半の競技会場が無観客となり観客向け手荷物検査や交通誘導がなくなったため。オリンピック期間(7月23日〜8月8日)は19万9600人で7万2900人減、パラリンピック期間(8月24日〜9月5日)は10万8800人で4100人減となる。警備員が最多だったのは7月30日の1万4000人。開幕前は7月27日の1万8100人を予定していた。

1都3県を中心とする首都圏会場の警備に当たるJV所属企業の延べ警備員数は48万4500人。当初見込みよりも6万2100人減。オリンピック期間は17万4700人で6万5200人減、パラリンピック期間中は10万6600人で4000人減。参加社数は553社で変更はない。

「警備員はフレンドリー」2021.08.21

東京2020警備、海外メディアが称賛

海外メディアが日本の警備員を称賛――東京五輪には、世界各国から多くのメディアが取材に訪れた。

本紙は、取材拠点の「メインプレスセンター」で複数のメディア関係者に警備員について感想を聞いた。

通信社の女性記者は「さまざまな場所にいてくれて、何でも教えてくれるフレンドリーな人たち。着ている警備ウェアも明るくていい。仕事もとても効率的だわ」と笑顔で応じた。

ネットメディアの男性は「連日の猛暑の中、彼らは仕事に忠実で、本当に驚いた。真のヒーローは彼らだ」と絶賛した。

カメラマンの男性は、「こんなに暑い中で働けるとは一体どのような訓練をしたのだ?」と驚きの表情をみせ、両腕を上げ、降参のポーズをとりながら足早に仕事場へと向かって行った。 

五輪期間中、警備員や警備の様子を発信したインターネットニュースやSNSもあった。

スポーツ関係の総合ニュースサイト「THE ANSWER」は、フェンシングのスイス代表選手がインスタグラムに警備員の動画を公開したことを紹介し、「『礼儀正しさと敬意を知った』『言葉のバリアを超えた』とつづっている」と発信した。

また同サイトは、ドイツの五輪専門ウェブメディアの運営者がカメラに向かって敬礼する警備員の写真をアップしたとも述べ、写真の脇に「他に例がないほどフレンドリーなセキュリティーチェックを日々、何度も見るというのは経験したことがない」とする文章が添えられたことなども紹介。「日の当たらない警備員に海外記者たちが感銘を受けている様子だ」と記した。

特集ワイド 動く監視カメラ2021.08.21

東京2020警備、海外メディアが称賛

警備業界に“動く監視カメラ”「ウェアラブルカメラ」の活用が広がっている。開催中の「東京2020」では、警備JV(共同企業体)が民間警備として初めてウェアラブルカメラを導入。警備員が現場映像を各競技会場の警備指揮所(VSCC)と共有し、警備の質向上と効率化を図っている。今回の特集は、警備業での最新の活用事例と、高度な機能を持つ新製品を取材した。

ウェアラブルカメラは、警備員が胸や頭に装着して警備現場を巡回することで、固定式監視カメラの死角をカバーし警備の精度を向上させることができる。撮影した映像はリアルタイムで警備本部に送信され、報告や情報共有に役立つ。各警備会社では、国際的な行事やイベントなどの安全確保に向けて積極的に活用している。

「東京2020」では、警備JVの一部の警備員がウェアラブルカメラを使用している。五輪では、全43競技会場のほかマラソン、自転車競技(ロード)では沿道の警備員が装着。24日開幕のパラリンピックでも引き続き活用される。

警備JVは、パナソニック製ウェアラブルカメラ約200台を会場警備に活用している。カメラはヘッドマウントを使って警備員の頭部に装着するタイプでカメラ位置は顔の左横、視線の高さとなる。映像を確認しながら双方向の音声通信も可能だ。

警備JV各社の取り組みもある。セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は、自社開発のウェアラブルカメラ約400台を東京2020の24競技会場の巡回警備に使用している。同社は東京2020を見据え、16年から「東京マラソン」「箱根駅伝」などの大規模イベントの巡回警備にウェアラブルカメラを採用。コース沿道の警備員と大会本部、統合監視センターが情報共有することで事件・事故の早期把握、混乱などの未然防止に備えた。同ウェアラブルカメラは警備員の位置情報も把握でき、事件・事故発生時に現場から最短距離にいる警備員への指示が可能だ。

ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)は、ICT機器と警備員が連携して警備の効率化を図る「ALSOKゾーンセキュリティーマネジメント」の取り組みを16年から開始した。スマートフォンやPCなどICT機器を連携させたアプリケーション「ALSOKスタッフ等連携システム」を開発し、19年のラグビーワールドカップから会場警備で採用した。アプリはGPSによる屋外位置測位、電波を使って位置情報を伝える「ビーコン」を設置すれば屋内位置測位も可能で、警備員と警備本部で情報共有や緊急通報などを行うことができる。スマホは専用ケースを使用して胸に固定させ、ウェアラブルカメラとして使用できる。システムは現在、同社商品として販売され、他の警備会社も大規模なイベントの警備で活用している。

セントラル警備保障(CSP・東京都新宿区、澤本尚志社長)は東京2020の大会期間中、JR東日本と連携して新幹線や在来線の主要駅で、乗客からの情報や監視カメラで不審人物を特定した際に荷物検査を実施している。新幹線車内を巡回する警備員にはウェアラブルカメラを導入し、異常発生時にライブ映像を確認しながら遠隔で後方支援を行う。20年11月にはJR東日本と共同で新幹線の車内警備でウェアラブルカメラを活用する実証実験を行い、通信状況などを確認した。

同社は、今年7月1日から機械警備の駆け付けを行う警備員(現場パトロール隊)にウェアラブルカメラを導入した。火災や侵入、設備障害などが発生した際に指令センター・技術員と映像で情報共有することができ、より正確で迅速な対応が可能になる。まず首都圏5支社(東京システム事業部、埼玉支社、多摩支社、横浜支社、千葉支社)に約130台を導入。今後は関西事業部に導入予定で、来年度は全国のその他の支社の現場パトロール隊に、約200台の導入を検討している。