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クローズUP

熊本・八代市 警備業就職に奨励金2021.11.21

1人5万円、警協要望実る

熊本市に次ぐ熊本県内第2の都市・八代市(中村博生市長)は10月1日、市内の警備業などに就職した人を対象とした「緊急就職促進奨励金制度」の運用を開始した。9月の市議会で可決された補正予算に盛り込まれた。

同制度は、今年4月以降に有効求人倍率が2倍以上の月がある職種に就職した市民に、1人当たり5万円(1回)を交付するもの。ハローワークを通じて就職した、雇用保険の一般被保険者である――ことなども要件。来年2月末までに就職した人が対象で、3か月以内に同じ職種を自己都合で退職した人などは対象外となる。

制度を担当する市商工・港湾振興課によれば、11月15日現在で申請はまだないが、市内の有効求人倍率2倍以上の職種は39職種あり、「現在は申請書類作成中ではないか」としている。警備業などを含む県内の「保安の仕事」の直近9月の有効求人倍率は5.68倍、7月は12.85倍と依然高止まりの状態。市内の警備各社には、同制度を活用した人材確保が求められる。

同様の制度は熊本市が今年3月、国の「コロナ臨時交付金」を原資に制定。対象業種は警備業や建設業など人材不足が顕著な4業種だった。

これを受け熊本県警備業協会(西利英会長)は5月、警備員不足対策として、八代建設業協会と県トラック協会との三者連名で八代市に熊本市と同様の制度制定を要望していた。

西会長の話 今回、八代市において就職奨励金制度を制定してもらい、警備員不足の解消につながるものと感謝している。しかし、市町村単独での同様の制度制定は自治体予算の少ない市町村では難しく、市町村をまたいで就職した人へは適用されないなどの問題もある。これら問題点を踏まえると、同様の制度は最低でも県レベルでの制定が必要であり、今後、県への制度制定も要望していく。

警備の日 全国の取り組み2021.11.21

11月1日の「警備の日」の前後、都道府県警備業協会は警備業をPRする各種取り組みを行った。群馬警協は小・中学生の作品を募集する「書道展覧会」を、千葉警協は労災防止の「セーフティフォーラム」を、それぞれ開催した。

群馬警協「書道展」に応募246点

群馬県警備業協会(山﨑松惠会長)は11月7日、「警備の日」記念行事として4回目となる「書道展覧会」の授賞式を前橋市内で開催した。

前橋市内の小・中学生を対象に作品を募集したところ246点が集まり、審査によって特別賞14人、優秀賞14人が選ばれた。

学年ごとの課題語句は、中学3年生「指差確認」、同2年生「相互扶助」、同1年生「健康管理」。小学6年生「一致団結」、同5年生「災害支援」、同4年生「命を守る」、同3年生「ともだち」。

山﨑会長は「現代は多くの人がパソコンで文章を作成する時代となったが、書道は日本文化の重要な柱であると思う。皆さんが書道に精進して心を育み、地域社会を支えていく社会人になることを期待しています」と受賞者を励まし、賞状を手渡した。

書道展は2017年にスタート。例年は3日間にわたる展覧会を行って家族連れが訪れてにぎわうが、昨年はコロナ禍で中止、今回は授賞式のみを行った。

千葉警協「セーフティフォーラム」開く

千葉県警備業協会(加藤智行会長)は11月11日、千葉市内で「セーフティフォーラム2021in千葉」を開催した。約70人が参加した。同フォーラムは「警備の日」の関連行事として2016年にスタートし、今回が6回目となる。企画・運営は同協会青年部会(岩渕克人部会長=エムサス)を中心に行っている。

加藤会長は「フォーラムは労働災害を1件でも減らしたいとの思いで開催している。10月23日に県内で交通誘導に従事していた警備員が、停止合図に気付かず進行してきたトラックに衝突され死亡する事故が起きた。交通誘導警備は常に交通事故に遭遇するリスクがあることを再認識し、安全教育や現場指導を徹底してほしい」と述べた。

来賓として県警本部風俗保安課の小林淳一課長、千葉市消防局救急課の新濱秀樹課長補佐、千葉労働基準監督署安全衛生課の髙橋幸喜課長が出席した。髙橋課長は「警備業における救急活動について」の演題で講演を行い、警備員の労災原因の中で最も多い転倒を防止する対策が重要だと述べた。

青年部会員による「安全宣言」では、部会員を代表して小山内義人氏(新日東警備保障)が壇上で宣言文を読み上げた。

労災防止をテーマに募集した「論文」「ポスター」「標語」の入選者表彰も行った。最優秀賞は論文が中島智之氏(ALSOK千葉)、ポスターが菅澤将樹氏(エムサス)、標語が田中勝次氏(スワット)の作品が、それぞれ受賞した。

特集ワイド 広がるSDGs2021.11.21

「SDGs」の考えを支援、取り組みを表明する警備業が増えている。地球温暖化阻止に向け警備業にできる貢献には限界があるものの、女性への配慮や労働災害防止、地域貢献などもSDGsの範囲に含まれる。金融機関や公的機関の「認証制度」を使ってイメージ向上に努める企業、本業とは違う角度から新境地開拓を志す企業などがある。取り組みを追った。

リライアンス・セキュリティー

社員を守る、労働条件向上

リライアンス・セキュリティー(広島市、田中敏也代表取締役)は10月11日、「SDGs宣言」を行った。

「本業を通じた平和で安全な社会維持への取り組み」「継続的な啓発によるコンプライアンス徹底」「多様な人材の採用・登用への取り組み」「ひろしま企業健康宣言、働き方改革実践企業認定取得」「地域パトロール活動による治安維持活動」などをはじめとする同社の取り組みがSDGsの目標に沿っていることを表明したものだ。

広島銀行の「SDGs取り組み支援サービス」を活用し、同行がデータでまとめた「宣言文」をホームページで公開。会社のPRにつなげている。

田中社長は「宣言は後付けで、以前から取り組んでいるものばかりです。社員を守ることが第一。労働条件向上に取り組んでおり、コロナ禍でも仕事は増え、社員も辞めるどころかむしろ増えました」などと話している。

福山パトロール

地元人材を積極的に採用

福山パトロール(広島市、下岡育巳代表取締役)も広島銀行の取り組み支援サービスを使って「SDGs宣言」を行った。下岡代表は当時、「SDGsの考え方は企業の活動にとって非常に重要。何が何でも取り組まなければなりません」と話していた。

「24時間365日体制による巡回警備、施設警備、雑踏警備、交通警備の実施」「育児・介護など両立支援に向けた諸制度整備」「地元人材の積極採用、地元企業への発注」などがSDGsの基準に当てはまった。

セキュリティ庄内

防犯パト、熱心な地域貢献

セキュリティ庄内(酒田市、阿部充代表取締役)は昨年から、SDGsの取り組みにかじを切った。ホームページに専用のタブ「SDGsへの取り組み」を設定し、それを開くと同社で行われているSDGsの取り組みが分かるようにした。外部のサービスに頼らず独自に発信している。

毎年行っている赤い羽根共同募金への寄付や地元商工会議所などへの積極的な参加、車いすの寄贈、青色防犯パトロールなどを通じた地域貢献に従来から熱心で、年次有給休暇の積極的取得や、社員の健康に配慮した取り組みにも力を入れている。

山形県警備業協会青年部会の清掃活動を通じた「環境への意識づけ」「高効率設備などの計画的採用」でCO2削減にも努める。

システムガードサービス

警備服を捨てない

システムガードサービス(さいたま市)の長谷川功一代表取締役社長は、別法人(警備ログ)を立ち上げ警備服のリサイクル事業に取り組んでいる。警備服廃棄時に発生する業界全体のCO2排出量55%削減を狙う。

事業の性格上、警備服の劣化は早く、会社の「顔」でもあるため定期的な交換が必要になる。使えなくなった警備服は廃棄する――そんな常識を覆すため、衣料メーカーや運送業者の協力を得て活動している。全国の警備員数は60万人近く、警備服廃棄時の環境負荷は大きい。

さいたま市も同社の取り組みに注目しており、同市初のSDGs認証企業32社の1社にこのほど選ばれた。

北陽警備保障

リユース・リサイクル推進

北陽警備保障(松江市、幡好明代表取締役)は10月22日、山陰合同銀行が10月1日から取り扱いを開始した「ごうぎんSDGs経営応援サービス」を活用して「SDGs宣言」を発表した。

取り組みの柱は「安全衛生」「シニア人材の活用」「ゴミ・廃棄物削減」「災害・事故・事業リスクの未然防止」の4本で、「ゴミ・廃棄物削減」の具体的取り組み事項には「廃棄物排出量の削減、リユース・リサイクルの推進」「ペーパーレス化の推進」などが並んでいる。

同行のサービスは「課題解決提案」もセット。広島銀行も同様だ。

RECTO

機器の廃棄を減らす

防犯防災機器の販売や各種警備事業を手掛けるRECTO(金沢市、濱芳男代表取締役社長)は今年5月、「持続可能な社会の構築に貢献する」と自社のホームページで表明した。

同社が設置した屋外設置型カメラなどの定期的状態確認やメンテナンスを正確に行うと述べたうえで「機器の廃棄を減らすことを目指す」と強調。また、パソコンを使ったデータ管理の徹底を通じた「ペーパーレス」にも力を注いでおり、オンライン上で情報を共有できる仕組みを構築したと報告されている。

愛知警協

自治体による初の認定

愛知県警備業協会(小塚喜城会長)は、都道府県警協としては初の自治体によるSDGs認定を受けた。愛知県が今年10月1日から取り組みを開始した「SDGs登録制度」の初回認定81団体のうちの1団体として名を連ねたもので、認定の証として県から「登録証」を受け取っている。

今年4月時点でSDGsに積極的に参画する「宣言」を果たしていた同協会は、県からの認定を機に取り組みを加速させる。「経済」「社会」「環境」の3分野で掲げた具体的達成目標について、実現に向けた活動を展開する。

同警協の会長、小塚喜城氏が率いる企業「コアズ」もSDGsの取り組みを加速させる。協会が受けた県の認定を会長自身の企業としても受け、トップの姿勢を示した。

従来から街の清掃や通学路の安全確保活動など社会貢献に積極的な同社は、日本赤十字病院や障がい者への支援にも努めてきた。社内では、女性の幹部登用を今後積極的に行っていく考えだ。

県に提出した目標によると、経済面では「全労働者に占める女性管理職割合を、現時点の4.7%から今後5年で11.8%にする」ことを、環境面では「特別の遠隔地を除き、一般交通機関による通勤を2024年3月末までに100%にする」ことなどが掲げられている。