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クローズUP

紙面向上委員会 第17回会合2019.8.01

「教育時間削減」で議論

本紙は7月1日、第17回の「紙面向上委員会」を開催した。警備業法施行規則の改正による新任・現任教育の時間削減、全国警備業連盟の設立、自主行動計画の改訂などについて議論が行われた。

田中敏也氏(リライアンス・セキュリティー)は、規則改正で教育充実に今まで以上に取り組む企業と、ただ単に教育時間を削減する企業との“二極化”が進むとの見方を示した。各社が独自にプラスアルファの教育を行うことで顧客満足度を高める警備員を育成する重要性を強調した。

早川正行氏(シンコーハイウェイサービス)は、教育に力を注ぐことが企業のセールスポイントになり、警備業界は一層、教育で競い合う時代になると述べた。「eラーニング」による教育については、警備員の均質化を図る上で一定の効果があると語った。

齋藤文夫氏(前全国警備業協会)は、今回の改正の背景に警備業の人材確保対策があることを指摘した。業界が将来的には、教育に関するルールを自主的に定める必要があると述べた。

全国警備業連盟の設立について田中氏は、政治を通じた働き掛けによる業界発展への期待を示した。

不適正取引を是正2019.8.01

京都警協が積極的対応

京都府警備業協会(宇多雅詩会長)は、7月26日に京都市内で開催された近畿地区警備業協会連合会(若林清会長)令和元年度総会で、会員企業から相談を受けた不適正取引に、協会が積極的に対応し、是正した事例を報告した。

会員企業が発注元の建設会社から「他の仕事の入金額から支払うので少し待ってほしい」と言われ、京都警協が相談を受けた3月の時点で支払い予定日から3か月が経過していた。

同警協は相談された企業の了承をとった上で建設会社に連絡し、「警備業界では自主行動計画という取り組みを推進している。当協会は会員に対し、支払いの遅延があった場合は安易に放置せず、遅延金を発注元に請求するよう指導している。そういう事態に発展しないように早急に適正な支払いをお願いしたい」と要請した。約一週間後に建設会社から同社への支払いが確認された。警備業界の“悪しき慣習”を改善するため発注先に働きかける取り組み「自主行動計画」を活用した事案となった。

同警協・小林茂専務理事は「自主行動計画は適正な取引を進める上で、非常に大きな武器となることを実感した。それに加え、協会が先頭に立って推進していく必要があることを、今回の事案で再認識した」と感想を語った。

特集ワイド SDGsと警備業2019.8.01

2015年の国連サミットで採択された「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」。正式名称は「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)。国連加盟193か国に課せられた、2016年から2030年までの15年間で達成するための目標だ。到達点は「“誰一人取り残さない”持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現で、このために17の目標(ゴール)と169ターゲット、232指標を掲げる。SDGsの概要と警備業での取り組み現状を紹介する。

SDGsに示された17の目標(ゴール)は、貧困の撲滅や健康と福祉の確保・推進、地球環境の改善など多岐にわたる。例えばゴール1「貧困をなくそう」が目指すのは「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」。具体的目標や達成内容であるターゲットとして「2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる」など全7項目を示す。

わが国では、2016年に全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」が設置。同本部の下には、行政やNGO、NPO、有識者など広範な関係者が意見交換を行う「SDGs推進円卓会議」が置かれ、国を挙げた取り組みが進められている。

6月に開催された「G20大阪サミット」で、日本がリーダーシップを取りG20首脳が合意した、プラスチックごみによる海洋汚染ゼロを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」も、この取り組みの一つだ。

一方、企業や経済の分野では、これまで貧困や地球環境に対する取り組みは、利益の一部を社会に還元する、慈善事業的な企業の社会的責任(CSR)活動の一環として行われてきた。しかし、SDGsでは、各種取り組みを“企業活動の一環”として位置づけゴール達成を目指すという考え方に変化している。例えば、世界的飲食店チェーンがプラスチックストローを廃止、非プラスチック製品に代替するなどの取り組みだ。

このようにSDGsに取り組む企業は、国際的にも評価されつつあり、世界的な投資会社がSDGs取り組み企業に優先的に投資する動きもみられる。近い将来、わが国でもSDGsに取り組む企業が高く評価され、公共入札などで優遇されることも十分考えられる。

警備業ではセコムやALSOKなど一部大手で、SDGsへの取り組みが始まっている。

ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)は、CSR活動の重要テーマとして(1)社会的課題の解決に貢献する商品・サービスの提供(2)人材育成と働きやすい職場づくり(3)積極的なコミュニケーションによる地域社会への貢献(4)信頼される警備サービス――を掲げ、テーマごとにSDGsの各ゴールを関連付けている。例えば、重要テーマ「信頼される警備サービス」には、ゴール4「質の高い教育をみんなに」、同11「住み続けられるまちづくりを」、同16「平和と公正をすべての人に」の3ゴールを関連付け、その達成へ向けた取り組みを進めている。

セコム(渋谷区、尾関一郎社長)は、同社が策定した「セコムグループ2030年ビジョン」がSDGsと目標年を同じくすることや、社会の持続可能性を目指す同社の事業とSDGsが完全に整合することからSDGsを重視。17ゴールに優先順位を付けた上で深掘りし、具体的なアプローチを検討していく方針を打ち出している。