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クローズUP

木村昌平さん「偲ぶ会」2018.11.01

100余人が別れ惜しむ

7月末に75歳で亡くなったセコムの社長、会長、全国警備業協会の会長を歴任した木村昌平さんを「偲ぶ会」が10月22日、東京・原宿の東郷記念館であった。警備業界だけでなく、晩年に移り住んだ栃木県益子町の〈益子昌平塾〉の関係者など、ゆかりの深い人たち100余人が参列して別れを惜しんだ。

献花のあと、木村さんにとって昌平塾で最後となった今初夏の講話のビデオ上映と懇親会が催された。

セコムの中山泰男社長が発起人を代表して挨拶した。中山氏は初めに、木村さんが亡くなる2日前、創業者の飯田亮氏(現・最高顧問)と吉田保幸専務が益子町の自宅を見舞いに訪れると、木村さんは言葉を詰まらせながら謝辞を述べたことを報告した。

中山氏は、「先見性、人格、識見、すべてを持ち合わせ、“飯田イズム”を継承して、セコムグループの礎を築かれました。社員には、温情と自愛の心をもって対応されました。私たちは、等しく敬慕の情を抱いたものです」と万感の思いを込めて、木村さんの人柄を偲んだ。

ビデオは、木村さんが自ら編集した40分余にわたる講話の模様が撮影されたもの。木村さんは時折、塾生に背中をさすられながら、はっきりとした口調で語りかけていた。演題は「道」。項目ごとにパワーポイントを操作しながら、造詣の深い老子やアインシュタイン、松下幸之助の言葉を引き、「肩書を捨て人間を磨く」、「相手の魂を揺さぶるのは人間力」、「生きている奇跡を知る」などを分かりやすく解説する内容だった。

参列者は、ビデオ上映に見入った。懇親会では、多くの人が木村さんの人柄と博覧強記ぶりを語り合い、その死を悼んだ。

中国地区連 役員会、ブロック研修会を開く2018.11.01

災害対応で問題提起

中国地区警備業協会連合会(会長=村本直之・広島警協会長)は10月16日、山口県岩国市内で秋の役員会とブロック研修会を開催した。5県の会長、副会長、専務理事が出席した。全警協から福島克臣専務理事、小澤祥一朗総務部次長が会議に加わった。

中国地区連役員会への副会長の参加は、春の役員会で山口警協の豊島貴子会長が「副会長も課題解決のため問題意識を共有したい」と提案し実現した。

主なテーマは「大規模災害対策」と「自主行動計画」。同地区連では今夏、西日本豪雨によって広島、岡山両県で甚大な被害が発生した。広島県の加藤博時専務理事、岡山県の平田政彦専務理事が災害状況、被災地域の防犯パトロール、支援物資の集積所・被災避難所など警備員の派遣内容、警備活動を報告した。

両県ともに県、警察、住民から多くの感謝の声が寄せられたが、課題も浮き彫りになったと問題提起した。今夏を上回る災害の発生を想定したもので、(1)県知事、県警本部長とかわす支援協定契約書の書面化(2)派遣警備員の労務単価と積算方法の統一(3)警備員確保の対応として隣県との連携――などについて取り組みたいと表明した。

「自主行動計画」については、5県が研修会、部会を開催して周知に努めていること、警備業だけでなく建設業にもリーフレットを配布して協力を要請していることを報告した。村本会長は「各県が情報交換して、更に理解の促進と実現に尽力してほしい」と要望した。

山口警協は、9月に設立した「青年部会」、10月に発会した「警備業県議団」(本紙10月11日号と21日号で既報)の説明をした。

役員会に先立ち行われたブロック研修会では、福島専務理事が自主行動計画について「警備員の処遇改善が急務。これまで建設会社など発注者との価格交渉は警備会社が単体で行い立場が弱かった。自主行動計画は“オール警備業界”として足並みそろえ一体となって交渉しようというもの。頑張ってほしい」とエールを送った。小澤次長はパワーポイントを使い内容を簡潔に説明、リーフレット活用を訴えた。

「全国産業安全衛生大会」開く2018.11.01

労働災害の根絶に向けて

中央労働災害防止協会(会長=中西宏明・日本経済団体連合会会長)は10月17〜19日の3日間、横浜市内で77回目の「全国産業安全衛生大会」を開催した。全国から約1万人の安全衛生担当者などが参加、労働災害の根絶へ向けた各種活動が報告された。警備業からは18日の「中小事業場分科会」で2人が発表した。

幹部を説得、運動進める

綜合タップ 管理部次長 井上進一さん

綜合タップ(新潟市、河村泰幸代表取締役)の井上進一・管理部次長は「労働災害ゼロへ向けた弊社の取り組み」と題して発表した。

2016年10月、同年3月から続く労災発生ゼロを、「何とか継続したい」という河村代表取締役の命を受け、井上氏は取り組みを開始した。

「トップのリーダーシップ」と「従業員が共に進める目標の設定」が労災防止活動には欠かせないと指摘する同氏。代表の指示にも表れたように「トップのリーダーシップ」はクリアしたが、従業員の思いを一つにさせる目標探しに苦慮していた。そんな時、目にしたのが新潟労働局が進める「新潟ゼロ災宣言運動」だった。1月から6月までの半年間、会社自ら名乗りを上げ、その間の労働災害ゼロを目指すというものだ。

運動への参加申し込みを行った井上氏は、各部各営業所を巻き込んだ全社一丸となった取り組み気運の醸成に着手した。

手始めに行ったのが、各営業所幹部の理解と協力の取り付け。書面だけでは上手くいかないことが分かっていたため、県内の各営業所幹部の下に日参、「協力するからもう来るな」と言われるまで通い続けた。

次に取り組んだのが、全従業員への周知だ。啓発文書の発出やポスターの作成・掲示で周知を図るとともに、運動期間中は、あらゆる機会を通じて“呪文”や“合言葉”のように「労災ゼロ」を訴え続けた。従業員の視覚を刺激するために本社と各営業所に「無災害記録表」も設置、労災ゼロ目標時間を「5万時間」に設定して労災ゼロ時間の“見える化”を図った。

これら取り組みが功を奏し、目標のゼロ災は達成できた。しかし、井上氏は「(今回の結果は)通過点に過ぎない。運動で社内に芽生えた労災防止への意識を大切に育てていく」と述べ、更なる取り組みを目指していく考えを示した。

〝会社の中〟から人を守る

神奈川警備保障 代表取締役 平林尚子さん

神奈川警備保障(横浜市)の平林尚子代表取締役は、自身の経験を踏まえて「職場のメンタルヘルス対策」と題して発表した。

2009年に父から会社を継いだ同氏は、当時100人だった社員の中で唯一の女性。「社員の気持ちを汲もう」と頑張っていたが、ムリがたたって自身がうつ病を発症した。

メンタルクリニックを受診、投薬治療を開始したものの、薬が合わずに断念。途方に暮れながらもセラピーやカウンセリングなど、あらゆる治療法を模索した。その後、徐々に症状が回復していった同氏は、病気を機に“脳の仕組み”に興味を抱くようになり渡米。米国でNLP(神経言語プログラミングの略。米国で開発された心理療法)協会認定トレーナーの資格を取得した。

現在は社長業はもとより、外部の専門家(五輪のメンタルコーチや産業カウンセラーなど)とも連携、資格を活かして現任教育などの機会を活用して従業員のメンタルヘルス対策も自ら行っている。一方、幹部社員にはカウンセリング手法を教育し、メンタルヘルス不調者の早期発見に成功。夜間勤務や1人勤務など精神的負荷の多い警備業務にあって、同社ではメンタルヘルスを理由とした離職や休職がなくなったという。

さらに同氏は、「居心地のいい会社を作るお手伝いをしたい」と昨年、中小企業のメンタルヘルス対策を手助けする「メンタルセキュリティ事業」を始めた。中小企業の新たな取り組みとして横浜市長へのプレゼンの機会を得るなど高い評価を得ている。

これまで、警備会社として取り組んできた「人々の生命・身体・財産を守る」をさらに広げ、「(従業員へのメンタルヘルス対策により)会社の中から人を守る」(平林氏)という新たな取り組み。今後の展開が期待される。