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クローズUP

総会 会員一丸の取り組み期待2021.06.11

5月24日から28日、23都道県で総会が開かれた。コロナ、人手不足、適正料金と課題は多いが、会員一丸となった取り組みが期待される。

埼玉警協=5月25日・川越市

社会貢献、積極的に

3期6年務めた山﨑守会長(大東警備保障)が退任、新会長に副会長の炭谷勝氏(トップセキュリティ)が就任した。45歳の炭谷氏は現役会長では最年少。山﨑氏は副会長となり、他の2人の副会長と炭谷新会長を支える。

山﨑会長は「新たな生活様式や働き方改革にも取り組まなければならない」と、会員の協力を求めた。

炭谷新会長は「緊張と不安が交錯していますが、精一杯務めさせていただきます」とあいさつ。支部長時代に取り組んできた社会貢献活動に触れ、「今後は協会としても積極的に取り組みたい」と語った。

石川警協=5月25日・金沢市

ブランド力高める

病気療養中の﨑見太郎会長(日本海警備保障)が退任、副会長の上田紘詩氏(東洋警備保障)が新会長に選任された。

上田新会長は「コロナ禍で2021年がどのような1年間になるのか、誰も答えられない。厳しい状況を踏まえて対応し、コロナ収束後も見据えることが欠かせない」と指摘した。

警備業のイメージアップについて「“エッセンシャルワーカー”と呼ばれるようになった。企業はSDGs活動を行い警備業のブランド力を高める取り組みが業界の課題克服の1歩となる」との見方を示した。

役員改選では、北原泉氏(アクロス警備保障)が協会初の女性副会長に就任した。

福井警協=5月26日・福井市

信頼・実績守り抜く

13年間にわたって協会活動をリードした吉田敏貢会長(アイビックス)が退任し、同警協初の女性新会長・田﨑真弓氏(高草木警備保障)を理事互選で選出した。

吉田会長は、新型コロナについて「未だ予断を許さない情勢にある」と緊張感の継続を求めた。また、厳しい環境下でも経営努力を惜しまない会員各社の日々の努力を労いながら、「協会内が一致協力して業務に当たっていくことが何よりも大切。警備業が生活安全産業の『担い手』であることに誇りと使命感を持って、健全経営に努めてほしい」と訴えた。

田﨑新会長は「前会長が築いた信頼と実績を引き継ぎ、これからもしっかり守り抜いていきたい」と抱負を述べた。田﨑氏の会長就任により、現役女性会長は山口警協の豊島貴子氏との2人になった。

特集ワイド 警備員を大切にする2021.06.11

交通誘導警備業務は、コロナ禍の中でも底堅いニーズがある。一方で、慢性的な警備員不足をはじめ、労災事故の防止、職場環境の改善、検定合格警備員配置路線への対応など複数の課題を抱えている。特別講習によるスキルアップや事故予防を図る社内安全大会、熱中症対策など“交通誘導警備員をより大切にする”警備業の取り組みを取材した。

交通誘導警備業務の人手不足が慢性化した原因として、賃金問題に加え、猛暑や極寒など労働環境の厳しさ、トイレの場所やイメージ面の問題などが挙げられる。

警備員の確保・定着の原資となるのは適正な警備料金だ。公共工事設計労務単価や最低賃金の上昇、「自主行動計画」推進を背景に警備料金はアップしてきた。しかし、公共工事の繁忙期と閑散期の受注量の開き、雨天中止のキャンセル料をめぐる問題などが横たわる。

近年、検定合格警備員の配置が義務付けられる認定路線は、全国的に増加した。コロナ禍による特別講習の中止は、資格者の育成を急ぐ企業に痛手となった。警備員にとって資格取得は、昇給や資格手当に直結する重要なものだ。

交通誘導警備の数々の問題を早期に解決する“特効薬”はないものの、業界・経営側が、警備員のための取り組みを着実に重ねることが課題を乗り越えていく道に通じる。

3か月連続で特別講習

長野県警備業協会(竹花長雅会長)は4月から6月にかけて、交通誘導警備2級の特別講習を毎月開催する。4月10〜11日には70人(再講習含む)、5月22〜23日には63人が受講し、6月19〜20日は71人が受講予定だ。従来は4月と10月の年2回で、3か月連続の開催は初の取り組みとなる。

昨年はコロナ禍により4月の講習が中止され、10月のみ行った。一方、県内の資格者配置路線は4月1日より23路線から28路線に増加し、交通誘導警備を手掛ける会員企業にとって資格者の増員は切実な課題だ。

例年の受講希望者は100人ほどだが、協会が昨年末に調べたところ新年度は200人以上にのぼると判明した。

協会は「会長が打ち出す“会員ファースト”を実践し、より多くの警備員のスキルを高めたい。それは会員の経営基盤強化につながる」(丸山斉専務理事)として、交通誘導警備の閑散期にあたる4月から3か月続けて特別講習を行うことを講師陣とともに検討した。

特別講習の主任講師を務める山路英之氏(長野県交通警備)は「社業と併行して特別講習と事前講習に力を注ぐ講師陣に、負担がかかる懸念はあった。しかし、資格者育成は1企業のためでなく警備業界全体のレベルアップのために必要であると考えて28人の講師陣が結束した」と話す。

交通誘導警備の講師とともに他の種別の講師も協力、会場で資機材の消毒などを行った。

山路主任講師は受講者について「例年に比べて20〜30代が増え、年齢の裾野は広がっている。受講者は皆、一層の向上心を持って取り組んでいると実感します」と述べた。

定期的に「安全大会」開く

シンコーハイウェイサービス(東京都八王子市、坂本健造社長)は、全国8支社の26営業所ごとに「安全大会」を定期的に開催する。各営業所の幹部が毎回テーマを選び、高速道路で交通規制などを行う隊員の安全意識をより高めるための講義、訓練を重ねている。

諏訪営業所(長野県諏訪市、村上巨樹所長)は、月に1度の安全大会に隊員30人が原則全員参加する。5月7日に開いた大会では「水平思考〜ひらめきの訓練」と題し、村上所長が講義を行った。

“水平思考”は、問題の解決に向けて発想する際に制約を設けないことで、既成概念にとらわれることなく多様なアイデアを生み出す方法だ。推理クイズの形式で、隊員は活発にディスカッションした。

次いで、最近起きた労災事故の事例をもとに、隊員は事故の原因を分析し「防ぐためにどう行動すべきか」など水平思考を取り入れて多角的に対策を考察、発表を行った。

参加した隊員は「思考のトレーニングによって、物事は表面だけでなく本質や背景まで把握することが重要と感じた。業務の中で、単に指示に従って行動するだけでなく、その指示の意味について十分理解し、主体的に考えて取り組みたい」と感想を話している。

さらにパワハラ、セクハラなどの予防策についても説明を受け、隊員は“職場の良好な人間関係づくり”に一層の理解を深めた。

空調ベスト必需品

日本綜合警備(東京都立川市、対馬一社長)は、熱中症予防のため小型ファン付き作業着(空調ベスト)を交通誘導警備に従事する警備員400人に導入し1年になる。空調ベストはファンで空気を取り込み、汗を蒸発させ体温を下げる仕組みだ。

2019年に警備員50人に試験導入したところ「夏場になくてはならない必需品と思う」などの感想が多く、昨夏から全員に配布した。

空調ベストの導入費用は、人手不足対策で増加が続いていた求人広告費を見直して捻出した。広告の量は減らしたが「空調ベストを全員に無償で貸与します」とのキャッチコピーを入れた求人広告を新たに作成。働く人を大切にする企業とアピールし、それが応募に結び付いた。

対馬社長は「警備員あっての会社。働く人が幸せを感じ健康であることは、質の高い業務に反映されると考えています」と語った。

4人に1人が20代

ゴリラガードギャランティ(仙台市、千葉英明社長)は、熱中症予防のため“早期ギブアップ制度”を取り入れている。これは、業務中に少しでも体調が悪いと感じたら早めに申告するよう警備員に促すものだ。事務所から交代要員が駆け付けてフォローし、交代による給与の減額はない。警備員に“我慢を強いない”ことで体調悪化を防ぎ、安心して働くことのできる環境をつくる。

同社では交通誘導警備に従事する警備員80人のうち半数が40歳未満で、4人に1人が20代だ。若年層をより多く雇用する方策として、採用は60歳未満とし、若者向けにツイッターを活用、自社の取り組みなどを柔らかな言葉と写真でアピールする。

営業所の所長には、現場出身の若手社員を起用。警備員と管理職との距離感を縮めて円滑なコミュニケーションを図って定着につなげる。

また、長期的な視野で幹部社員の育成を図るため、2年前から高校生を対象に新卒採用を開始。昨年は1人、今年は2人が入社した。

夏原潤代表取締役専務は「学校訪問や合同企業説明会では、猛暑時の厳しさなども話したうえで、安全対策や福利厚生の充実に取り組んでいることを説明しています。新卒採用は、18歳の若者が70歳を迎えるまでの長い人生を預かる覚悟が必要。給与が確実に上がる仕組みを整えるなどの会社づくりが前提になる」と述べた。