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「警備業追加、慎重に」
コロナ対策の「指定公共機関」2022.03.21

参院予算委 山際担当相が和田氏に答弁

山際大志郎経済再生担当相は3月3日、新型コロナにも適用される新型インフルエンザ等特別措置法(特措法)に規定されている「指定公共機関」への警備業追加に否定的な見解を示した。同日開かれた参議院予算委員会の自民党・和田政宗議員の質問への答弁で明言した。

和田参院議員は、警備業が新型コロナ陽性患者の入院する医療機関やホテルなどの宿泊療養施設、ワクチン接種会場などで警備業務を行うなど重要な役割を担っていることから、「法的な位置づけを明確にするために、特措法に規定される指定公共機関に追加すべき」と政府の対応を求めた。

山際担当相は「指定されると、平時では新型インフルエンザ等に対する業務計画の策定、所管省庁への報告のほか、対策の実施に必要な物資・資材の備蓄・整備・点検などが法律上の義務として課される。感染拡大時には、政府対策本部長(首相)や都道府県知事から各種要請や総合調整の対象となる。これらは事業者にとって負担が大きい。さらに指定に伴う事業者の法律上の権限付与や負担の発生に伴う代償措置が特段定められていない」と説明。「法律上の義務を伴う指定には慎重に対応すべきと考えている」と述べた。

これに対し和田参院議員は「(警備業は)そういった義務を課されるとしても、しっかりやっていきたいとしている」と、警備業の意向を代弁した。

指定公共機関については、感染症対策での警備業の法的な位置づけを明確にする観点から、全国警備業協会(中山泰男会長)や全国警備業連盟(青山幸恭理事長)が、政府に警備業を同機関に追加することを求めている。

特集ワイド 防ごうパワハラ2022.03.21

4月1日からパワーハラスメント(パワハラ)の防止義務が全ての中小企業にも課される。上司から必要以上にミスを責め立てられた部下がうつ病になる、被害感情を持った従業員に訴えられた会社や上司が損害賠償請求の対象になる――などを防ぐためにもパワハラを発生させないことが重要だ。厚生労働省の指針を参考に従業員教育や相談窓口の設置を急いでほしい。

代表的な言動「6類型」

業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導はパワハラには該当せず、パワハラか否かは個々の実態に応じて決まる。さまざまなケースが想定されるが、厚生労働省が指針で示している「代表的な言動」6類型が参考になる。

具体的には(1)身体的な攻撃(2)精神的な攻撃(3)人間関係からの切り離し(4)過大な要求(5)過小な要求(6)個の侵害――の6類型で、それぞれに「パワハラに該当すると考えられる例」「該当しないと考えられる例」が示されている。

「精神的な攻撃」を例に見ると「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う」ことはパワハラに該当すると考えられる一方、「業務の内容や性質等に照らし、重大な問題行動を行った労働者に一定程度強く注意をする」行為はパワハラには当たらないと考えられる、としている。

3要件満たすと認定

パワハラ対策の義務化を盛り込んだ改正労働施策総合推進法は、安倍政権下で成立した女性活躍推進法の改正(ハラスメント部分の強化)に伴うもので、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法など一括改正法案の一つに含まれていた。職場からハラスメント全般をなくそうという機運の高まりの表れであり、先行した大手に続き4月から中小企業でも適用されるため法の要点を改めて押さえておこう。

ポイントは同法30条の2「雇用管理上の措置等」で、そこに明示されたパワハラ要件(1)優越的な関係を背景とした言動(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの(3)労働者の就業環境が害されるもの――を全て満たすと法的にパワハラが認定される。

罰則でなくても影響大

企業に求められているのは、パワハラ防止に向けた経営者による方針の明確化や相談窓口の設置、迅速な実態調査と加害者・被害者への適切な措置、再発防止対策、申告者や調査協力者のプライバシー保護と不利益取り扱いの禁止など幅広い。同省の「指針」によると、例えば事業主による方針の明確化は「就業規則」など職場における服務規律を定めた文書で「パワハラは不可」と示し、行った者には厳正に対処することを従業員に周知すると記された。

相談窓口には担当者を置き、プライバシーを保護する措置を講じることも欠かせない。窓口担当者に対する研修はもとより、相談者が不利益とならないよう窓口の担当者と人事部門が連携することで再発防止効果が期待できるとされている。

パワハラ防止は努力義務で当面罰則はない。ただ、厚生労働大臣が必要と認めるときは事業主に対して助言・指導・勧告することができ、それにも従わなければ企業名が公表される可能性もある。被害感情を持った従業員に「パワハラだ」と訴えられれば加害者本人に加え会社も安全配慮義務違反を問われることとなり、損害賠償請求が行われれば、企業の信用に傷がつくことになる。

3人に1人が「受けた」

厚生労働省が2020年にアンケート方式で実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワハラを受けた経験が「ある」とした人は31.4%。3人に1人がパワハラを受けたことがあると答え、回数は「一度だけ」9.0%、「時々」16.1%、「何度も」6.3%だった。

大企業からパワハラ対策の義務化がスタートした同年6月以降も都道府県労働局に寄せられるパワハラ相談は年間約1万8000件に上り、必ずしもパワハラとは言えないが、いつパワハラに変化してもおかしくない「いじめ・嫌がらせ」の相談も8万2000件を超えている。

従業員、会社を守る

少子高齢化に基づく労働力人口の減少で、業種を問わず「人手確保」が多くの企業で課題となっている。警備業もその代表格で、働きやすい職場環境整備が欠かせない。その実現に向けた政策の一つにパワハラ対策が位置づけられているのだ。

「指導」との線引きが難しいことがパワハラの特徴だが、対策を怠るわけにはいかない。仮に放置すれば被害に遭った従業員だけでなく職場全体の士気や業務効率にも影響し、経営自体が危うくなる。

「従業員を守る」観点で取り組みを進めていくうち「会社を守る」ことにもつながっていると認識できれば、対策もスムーズに進むに違いない。