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「警備員不足」を集中討議2023.09.21

中部地区連「会長等会議」

中部地区警備業協会連合会(会長=小塚喜城・愛知警協会長)は9月4日、岐阜市内で6県の警協会長と専務理事による秋の会長等会議を開いた。「深刻化する警備員不足の中での人材確保」をメインテーマに集中討議。各警協から事前に報告されたアンケート結果を含む人手不足の現状や解決策を参考にして活発な意見を交わした。全国警備業協会から中山泰男会長、黒木慶英専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。

小塚会長は「人手不足は警備業界のみならず、我が国が直面する喫緊で重要な課題となっています。業界は一丸となって取り組まなければならない」と“待ったなし”の警備員不足への対応を呼び掛けた。

全警協の中山会長は、警備員数の減少、人材募集における警備業への無関心などの事例を挙げ、警備業の現状と前途を憂慮していると述べ、こう訴えた。「早急に実現すべきは、料金の適正な引き上げ、警備員の処遇改善です。全警協は全国の経営者に対し精力的に周知啓蒙を図る所存です」。

各警協がまとめた雇用の現状と対応の取り組み策は次のようなものだった。

【現状】

「業者数は12社増えたが、警備員数は289人減少、求人倍率は7.11と高い水準にある」(愛知)。「業者数は2社増、警備員数は182人の減少」(岐阜)。「警備員の求人数は255人に対し、求職者は35人、求人倍率は7.29倍」(石川)。「社員構成は30歳未満が189人で6.1%、30〜39歳が221人で7%。65歳以上が43.5%を占めた」(富山)。「求人倍率は7〜8倍で推移。交通誘導は年度初めの公共工事が少なく、この時期の離職率が極めて高い」(三重)。「北陸新幹線の工事が終了。8月の2号警備は仕事の発注が激減した」(福井)。

【対応】

「県主催の<中小企業人材確保支援事業>への参加」「青年部会と連携し若者世代に警備業の魅力を具体的に発信」「高齢者の<特定求職者雇用開発助成金制度>の周知を強化」「警察官・自衛隊退職者を対象とした発掘作戦の展開」――などが報告され、具体化に向けて取り組むことを申し合わせた。

業務改善助成金を拡充2023.09.21

厚労省

厚生労働省は、事業場内最低賃金の引き上げに取り組む中小企業などを支援する「業務改善助成金」を8月31日から拡充した。

対象となる事業場を、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が「30円以内」から「50円以内」に拡大。事業場の規模が50人未満の事業者が今年4月1日から12月31日までに賃金引き上げを実施の場合、賃上げ後の申請が可能になった。

特集ワイド 業務のデジタル化2023.09.21

警備業では警備現場や警備員教育、事務作業など多くの業務でデジタル化の取り組みが進められている。MMS(東京都台東区、阿部和弘代表取締役会長)は、エイセル(東京都千代田区、滝沢次郎代表取締役社長)が開発した管制業務を効率的にするシステム「AceConnect(エースコネクト)」を導入した。MMSの鈴木知実取締役社長に導入の経緯と効果を取材した。

警備業界ではデジタル化の推進が叫ばれているが、MMSの鈴木社長は何から着手すればよいか迷っていた。厚生労働省所管の独立行政法人が主催する「生産性向上支援訓練」の企業DX(デジタルトランスフォーメーション)化に関するセミナーを受講して「デジタル化は明確な目的がなければ進まない」ことを学び、「従業員満足度(ES)の向上」を目標に定めた。

MMSは2009年の創立以来、管制業務も事務作業もアナログ方式で行ってきた。経理ソフトは使用していたが、警備員の給与計算、請求書の発行などは別々に入力、警備員の上番・下番報告は電話で受けていた。

創立から10年以上経ち従業員や受注量が増えてきて、時間と手間が掛かる作業に限界を感じていた。管制業務をデジタル化することで時間を捻出し、巡察・指導の頻度を増やして警備員と向き合うことは、帰属意識や定着率の向上につながると考えた。

鈴木社長は2022年夏からどのシステムを導入するか、検討を始めた。数あるシステムの中からエースコネクトに着目したきっかけを、鈴木社長はこう説明した。

「システムの機能や使い方などのプレゼンテーションを4社から受けました。当社の要望を伝えると『それはできないので業務をシステムに合わせてほしい』という会社もありました。その中でエイセルは当社のさまざまな要望に対して『できない』とは言いませんでした。クラウドサービスの機能を活かしながらシステムを自在にカスタマイズ(作り変え)できる柔軟性が決め手になりました。価格の割にできることが多いコストパフォーマンスの高さにも引かれました」と振り返る。

システムは今年9月1日から実験的に稼働し、デジタル方式とこれまでのアナログ方式を並行して運用。警備員はスマートフォンの操作方法を学習し、管制はシステム運用に慣れる期間を設けた。10月1日から本稼働を開始する。

同社のデジタル化実務担当者でSE(システムエンジニア)の職務経験がある安原貴子さんは「インターネットに接続できる環境であれば、どこにいても勤務状況の確認や事務作業を行えることが大きなメリットです。現在(9月中旬)は過渡期でデータの入力やLINEの操作指導など忙しいのですが、クラウド上にデータが蓄積され運用に慣れていけば業務はかなり効率化されます」と話す。

エースコネクトを導入して受注先の基本データを入力して契約業務では見積りから契約書まで一本化することにより、繰り返し入力する手間が省ける。各書類は従来と同じフォーマットのまま電子化できる。

これまで使ってきた経理ソフトとの連携も可能で、給与計算の自動化を実現。10月から始まるインボイス制度や、今後義務化される電子帳簿にも対応している。残業時間や年次有給休暇消化状況を把握できることで労働環境の整備も進みそうだ。

警備員からの出動、上番、下番の報告、管制からの配置指示はLINEとEメールで行うことになる。朝夕の決まった時間に集中する電話対応がなくなり、他の業務に専念できる。

管制業務はこれまで主に管制担当者の記憶を基に警備員の業務経験やスキル、相性なども考慮して配置を決めていた。今後は過去の業務履歴データを確認することで、誰が管制業務を担当しても配置計画を立てられるようになる。交通誘導警備の繁忙期に発注元から電話で警備員の出動依頼があった場合、出動可能人数を即座に確認して返答できることで、営業上の機会損失を防ぐことにもつながる。

鈴木社長は「当社はデジタル化が後発だったことで、システムの導入を済ませた警備会社に効果や問題点を聞くことができました」と笑う。「エースコネクトによる管制業務自動化について知りたい警備会社があれば連絡をいただきたい。当社で実際に画面を見たり操作してもらうことでデジタル化のお役に立ちたいと思います」と話す。

「今後の構想としては、現在警備員から書面でもらっている勤務希望をスマホで入力してもらい、配置計画表の自動作成を実現させたい。営業情報は企業財産として社内共有しデータ保存したい。それらのデジタル化を果たすことで、次の取り組みとしてDXが見えてくるのではないでしょうか」と期待する。